お世話になっております。●●です。
遺産分割協議書準備中に、相続人が亡くなった場合
について教えてください。
【前提】
被相続人 母(H29.12.26亡)
相続人 父(H31.4.29亡)*被成年後見人あり
子(アメリカ在住)
父の成年後見人である司法書士先生からのご紹介で
依頼受けました。(ただし、父が亡くなった時点で成年後見は終了)
現在、無申告。
分割内容は、子が全て取得という内容です。
【ご質問】
母に関する相続税申告のための、子が全て取得の遺産分割協議書
を作成途中で父が亡くなってしまい、遺産分割協議書が現在ない
という状況です。
この場合において、子と父の相続人である子(同一人物)の間で
遺産分割協議書を作成しなければならないでしょうか?
その場合、日付をいつにするのがよいでしょうか?
すでに亡くなってから時間が経過しているため
可能な限り早く申告納付したいという希望です。
よろしくお願いいたします。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>父の成年後見人である司法書士先生からのご紹介で
>依頼受けました。(ただし、父が亡くなった時点で成年後見は終了)
>現在、無申告。
>分割内容は、子が全て取得という内容です。
>母に関する相続税申告のための、子が全て取得の遺産分割協議書
>を作成途中で父が亡くなってしまい、遺産分割協議書が現在ない
>という状況です。
>この場合において、子と父の相続人である子(同一人物)の間で
>遺産分割協議書を作成しなければならないでしょうか?
>その場合、日付をいつにするのがよいでしょうか?
2 回答
口頭での遺産分割合意の存在を証明
できるか否かにより、回答が分かれますので、
分けて解説したのち、両者の違いを説明します。
(1)遺産分割合意の存在を証明できない場合
まず、母の相続に関する
父の法定相続分については、
父の相続により子に承継されることになります。
そして、遺産分割は、あくまでも相続により
発生した共有の解消のための制度ですので、
現状、母の相続財産については、父の相続の
発生により、すべて子に承継されており、
遺産分割の対象となる共有財産がないため
法律上は、
1人で遺産分割をすることができないと
されています(東京高判平成26年9月30日)。
ですので、
>遺産分割協議書を作成しなければならないでしょうか?
これに関しては遺産分割協議書を作成する
必要はありませんし、現状で作成することも
できないものと思われます。
>分割内容は、子が全て取得
という合意内容が確定していたと
なると実務上は、協議書の日付を
バックデートするということは
あり得るのかもしれませんが、
後見人が付かれていたという
ことですので、司法書士の方が
これに捺印をすることはないと思います。
(2)遺産分割合意の存在を証明できる場合
遺産分割は、本来口頭での合意によっても、
成立します。
このため、遺産分割協議書の作成は、
遺産分割協議の内容を証明する証拠にすぎません。
父の生前に、父の成年後見人と子との間において、
>分割内容は、子が全て取得
とすることは、決まっていたとすると
この時点で、遺産分割の合意があり、
母から子に対して、直接が相続があったものとして
評価するという方法もあるかと思います。
ただし、後見人が付いてる事例で、
遺産分割協議書なしにこの内容で、
遺産分割合意が成立していたと言えるか
否かというと難しい認定のように思います。
もちろん、事情によって、
合意があったことが確定的なメール等の証拠がある場合や
司法書士の先生から遺産分割の合意が既にあったという
供述が得られる等の状況があれば、母の相続について
遺産分割協議書は(1)と同様作成できないですが、
以下の登記に関する通達に準じて、
遺産分割協議証明書を子が作成して、
提出するという方法もあるかと思います。
数次相続が発生した場合の登記に関する通達
(平成28年3月2日民二第154号)
http://www.toki-joho.com/2016/03/h280302min2-154.html
(現在、ネット上では公になっていないため、
他人のリンクとなります。)
概要を申し上げると、
「遺産分割は書面性が要求されていないので、
二次相続発生前に、口頭で遺産分割協議がされている場合、
遺産分割協議書がなくても、分割は有効であり、
二次相続における相続人は、その内容を証明できる
唯一の相続人であるから、当該協議の内容を明記して
二次相続人が作成した証明書は、登記原因証明情報足りうる」
というものを作成するという方法もあるかと思います。
(3) (1)と(2)の違い
(1)の場合には、父の相続財産に
母の相続における父の法定相続分が
含まれることになります。
一方で、(2)の場合には、
母の相続財産は、父の法定相続分を含めて、
直接、子に移転していることになりますので、
父の相続財産に含まれないこととなります。
母と父の相続財産額等に応じて、
どちらの対応をすることが良いかの違いが
生じるところかと思います。
遺産分割協議書がないということですので、
固い方法は(1)にはなりますが、
事情により(2)もあり得るかとは思います。
必要があれば、無料相談等をご利用いただき、
証拠や具体的な状況に応じて、アドバイス等することも
可能ですので、お申し付けください。
なお、以下の2つのご質問への回答も
関連するものとして、ご参考になるかと存じます。
【数次相続における相続財産】
【遺産分割前に死亡した母の税額軽減の適用について】
よろしくお願い申し上げます。