メーリングリスト、いつも拝見させております。
既出の質問内容かもしれませんが、よろしくお願いいたします。
<前提>
・父母娘の3名。父死亡後(一次)、分割確定する前に母死亡(二次)。
・父の相続税申告について、母は法定相続分取得の上、申告したい。
・その際、小規模宅地及び配偶者軽減の特例を母に適用したい。
(相続登記は協議書作成必要ないため問題なしとのこと)
<質問>
①過去メールなどを参照しますと、一人分割不可は理解できます。
ということは、相続税の特例(配偶者税額軽減・小規模宅地)の通達
「分割前に死亡している場合」にある“分割による取得”には該当しないこ
ととなるのでしょうか?
②また上記のような数次相続により最終的に1人しか存在しない場合、
一次相続申告において、税務上の特例適用及びその際添付する書類など
はどう考えればよいのでしょうか?
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①〜一人分割となった場合の特例の適用〜
>①過去メール1225などを参照しますと、一人分割不可は理解できます。
>ということは、相続税の特例(配偶者税額軽減・小規模宅地)の通達
>「分割前に死亡している場合」にある“分割による取得”には該当しないこ
>ととなるのでしょうか?
そうですね。通達形式上はそのようになります。
ただ、そもそも相続税法基本通達19の2-5等の
取り扱いは、なぜ、父の相続(一次相続)について、
既に死亡している母に財産帰属するような遺産分割が
可能なのかという点について理論的な根拠はないように
思います(法的にはそのように考えるのはそもそも難しいと思います。)。
つまり、二次相続の発生という偶然の事情で、
特例の適用できないことはあまりにも不平等であるため、
通達により、国が納税者に有利に取り扱いましょうと
しているものに過ぎないと考えられます。
通達も「当該配偶者が取得したものとして取り扱うことが【できる】。」
としているに過ぎません。
そのように考えると、そもそも、「相基通19の2-5」自体に
法的な根拠がなくとも、納税者に有利な取り扱いを認めた趣旨のもの
で、
一人分割になったからといって、その通達の趣旨は変わりませんので、
それと違う取り扱いをするというのは、不当なように思います。
ただ、法的な根拠という意味では、一人分割による
母の財産取得というのは根拠がありませんし、
通達の直接的な場面からは外れているため、
更正などされた場合に、法的に戦うことができる
かというと、平等原則違反などの一般論的な戦いと
なるため、税務訴訟などで勝訴するハードルは比較的高いかと思います。
私個人としては、申告や調査レベルであれば、
国も認めてくれるのではないかとは思うものの、
法的な根拠自体はないため、通達の趣旨まで理解して、
わかっている調査官がどこまでいるのかというと、
かなり判断が難しいところだとは思います。
税理士の先生のお立場としては、その点について
ご依頼者さまにご説明した上で、ご判断いただくしかないようにも
思います。
繰り返しになりますが、
個人的には、特例適用を認めないのは不当だとは思います。
なお、実務上、更正の請求が認められた事案について、
以下もご参考にされてください。
2 ご質問②〜添付書類について〜
>上記のような数次相続により最終的に1人しか存在しない場合、
>一次相続申告において、税務上の特例適用及びその際添付する書類など
>はどう考えればよいのでしょうか?
タイトルは、何でも(遺産分割決定書等)構いませんが、
その1人により、財産の帰属を決める(遺産分割協議書と同内容)
ものを作成して提出することとなるでしょう。
なお、1人の遺産分割が否定された裁判例で出てから、
登記実務において、以下のような取り扱いも認められています。
○数次相続が発生した場合の通達
(平成28年3月2日民二第154号)
http://www.toki-joho.com/2016/03/h280302min2-154.html
(現在、ネット上では公になっていないため、
他人のリンクとなります。)
概要を申し上げると、
「遺産分割は書面性が要求されていないので、
二次相続発生前に、口頭で遺産分割協議がされている場合、
遺産分割協議書がなくても、分割は有効であり、
二次相続における相続人は、その内容を証明できる
唯一の相続人であるから、当該協議の内容を明記して
二次相続人が作成した証明書は、登記原因証明情報足りうる」
ということです。
もちろん、母が死亡前に口頭での遺産分割が
ある前提ですが、これまでの実務をあまり変えずに
登記できるようにするという意図は感じられます・・・
よろしくお願い申し上げます。
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