お世話になります。
●●です。
標題について教えてください
【前提】
ビジネスホテル経営の法人の社長
(女、以下甲)が亡くなりました(2/5に相続開始)
①甲の配偶者はH23年に死亡
②相続人は1人娘のみ(以下乙)
③甲の財産が自宅土地建物(評価大体500万程)
死亡保険金(500万程)会社株式(1,000万弱)
小規模共済100万程
④甲の負債はBK借入(510万程)
会社からの借入(役員貸付約1,000万程)
⑤何かの連帯保証になってるかは不明です。
⑥法人は年間売上6,000万程、借入4,900万程
リース債務1200万程年間利益約400万程
法人に入る死亡保険金が5,300万ほど
役員は甲のみ
⑦法人の運営はホテルの運営会社に
丸投げで売上金額と振込のみを社長が
されていた(金の管理を社長が行ってた)
⑧⑦の為現在は事業は継続されている。
また地域柄業界、将来の見込みは悪くない。
⑨乙は公務員(夫もサラリーマン)で事業を
したことが無く、相続放棄を前提に考えてます。
ただ業界が悪くない等M&Aの道も提案してます。
⑩2/5から相続放棄の期限である3か月は
M&Aを模索しながら運営の予定でお金
の管理に困ってるところがあります。
売上は委託会社が夜間金庫を利用して
管理、支払は現金支払いは管理会社が
支払(従前どおり)、BK振込は当面乙が
する予定ですがまだしてません
【質問】
①甲個人の預金は手付けずの予定で
会社の金を乙が動かして相続証人の
問題は生じないか??
②そもそも代表者が居ない状態で
振込はできない認識ですがその場合
乙が代表になったら相続放棄可能か?
又は放棄不可になる場合他に案はあるか??
③何かの連帯保証人になってるかを
確認する方法はあるか??
④このような状況で限定承認可能か??
⑤理想はM&Aができて限定承認するのが
理想と考えてるんですが他にいい案が
あるか??
以上よろしくお願いします。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の●●です。
1 ご質問①〜会社の入出金について
>①甲個人の預金は手付けずの予定で
>会社の金を乙が動かして相続証人の
>問題は生じないか??
こちらは、会社のお金を管理することが
相続の法定単純承認事由にあたらないか
どうかということかと思います。
法定単純承認にあたるか否かは、
「財産の現状または性質を変更したり、
財産権の法律上の変動を生じさせたりする行為」
に該当するか否かによります。
相続財産はあくまでも会社の株式
であり、出入金の手続のみを乙が
行っただけであれば法定単純承認には
ならないとされるケースが多いかと思います。
ただし、裁判例等でもこのあたりは、
程度問題な部分が大きいので、
相続放棄等との兼ね合いでは、できればしない方が良いのですが、
会社の義務の履行としての銀行振込をするだけであれば、
問題視されることはあまりないでしょう。
(もちろん、乙に金銭を支払う等はしない前提です。)
ご質問②と関係しますが、
法的には本来会社の委託を受けて乙が
行う必要がある行為ですが、事実上行うということになります。
2 ご質問②〜代表就任等について
>②そもそも代表者が居ない状態で
>振込はできない認識ですがその場合
>乙が代表になったら相続放棄可能か?
>又は放棄不可になる場合他に案はあるか??
乙が代表者になる場合には、乙が取締役となるために
株主総会決議を行うにあたり、乙が株主として
議決権を行使することとなるかと思いますが、
そのような議決権行使は裁判例上、法定単純承認
となるとされています(東京地判平成10年4月24日)。
3 ご質問③〜連帯保証人になっているかを確認する方法
一旦は、法人の債務となっている
債務の連帯保証の有無は連帯保証人の相続人の地位として、
各債権者に連絡をして確認することとなるかと思います。
なお、その他については、
以前の回答で同様のものがありますで、当メールの
最後につけますので、ご確認ください。
4 ご質問④、⑤〜限定承認の可否
>④このような状況で限定承認可能か??
>⑤理想はM&Aができて限定承認するのが
>理想と考えてるんですが他にいい案が
>あるか??
(1)限定承認の制度概要
今回のケースで限定承認をすること自体は可能です。
(単純承認事由がすでに発生していないことが前提)
限定承認は、大まかにいえば以下のような制度です。
・限定承認の申立て
・限定承認をしたことと債権者は申出を行うよう官報に公告
+すでに分かっている債権者には個別の通知
・限定承認した人(相続人)が相続財産を換価する
・換価した財産をもって債権者に弁済
・弁済後に余った財産があれば限定承認者がそれを取得する
・債務の方が多く相続財産により返済しきれなくても、
限定承認者はその返済義務は負わない
(相続財産の範囲でのみ、債務の弁済義務あり。
これが限定承認の法的な効果・メリットです)
(2)換価の方法について
上記の手続のうち、相続人が相続財産を換価する場合、
以下の2つの方法しかとれません。
①裁判所を通じた競売手続による換価
②裁判所により選任された鑑定人が算出した評価額により、相続人が買い取る(先買権といわれます)
限定承認手続内で、競売手続を経ずに、
第三者に売却するということはできないため、
株式をMAにより第三者に売却することはできません。
やるとすれば、②により、鑑定人の評価額にて、
乙がいったん株式を買い取り、乙がMAの買主に売却する
という流れになります。
当然ですが、乙が買い取る際に、相続財産は使えませんので、
乙の自己資金で用意する必要があります。
(3)限定承認の手続を利用すべきか
限定承認を利用したいという目的が、
>⑤何かの連帯保証になってるかは不明です。
ということで、多額の明らかになっていない債務が
存在する可能性が高く、これを避けたいということに
あるのであれば、限定承認をすることにより、
相続財産の範囲でのみ債務を弁済すれば、
それ以上の返済義務はなくなりますので、
限定承認をする意味があります。
一方、限定承認をした上で、株式をMAにより売却したい、
というのであれば、上記のとおり、
乙が鑑定人による株式の評価額を準備して買い取る必要がある
という点は考慮に入れなければなりません。
限定承認は、申立てを行えば終わりではなく、
その後の手続を進めるには、専門的な知識も必要ですし、
一般の方が行うのはなかなか難しいため、
弁護士に依頼するなどの必要が出てくると思います。
今回のケースで、限定承認を行うこと自体は可能ですが、
このような手間や費用的なコストも発生するでしょうから、
限定承認によりどのようなメリットを得たいのか、
ということとの兼ね合いで、限定承認をすべきなのかは、
お考えいただいた方がよいと思います。
(4)他のとり得る方法
乙のご意向が、
会社株式を、評価額の1000万円程度で買い取ってくれる方がいる
(もしくは他のMAの手法で換価可能)のであれば、
相続財産は全体としてプラスになるので相続したい
一方、そのような売却先がないのであれば、
乙自身が株主となり、事業を行っていくつもりはないため、
会社株式を除けば全体としてマイナスとなる相続財産はいらない
ということだとすると、
株式の売却先を見つける(今後見つけられるのかどうかを見極める)
時間を稼ぐということが重要かと思いますので、
相続から3ヶ月で売却先が
見つからないのであれば、3か月経過前に、家庭裁判所に
申述期間の延長の申出をするという方法が考えられます。
延長の可否及び延長期間は、家庭裁判所の裁量により決定されます。
期間の延長が認められるためには、
延長の必要性があることが必要であり、
この延長の必要性は、相続財産の売却先を
探すのに時間が必要であるという理由では認められず、
相続財産が多数あり構成が複雑である場合や、
債務の存否の調査に期間を要する場合などに、
必要性が認められます。
今回は、被相続人甲は会社の株主かつ代表者であり、
事業を行う上での債務があることが想定されるなど、
一般の方よりは調査に期間を要する類型といえるでしょうから、
最終的には裁判所の判断ですが、
延長が認められる可能性も比較的あると思います。
したがって、3か月で目途が立たないということであれば、
3か月経過前に、期限延長の申立てを行うことも一案かと思います。
申立てに必要な書類や申立書の記載例などは、
以下をご参照ください。
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_25/
よろしくお願い申し上げます。
~~~~~~~~~以下、引用メールのURL~~~~~~~~~~~