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被相続人が無償で貸していた土地の返還等

弁護士法人ピクト法律事務所
代表弁護士 永吉 啓一郎様

いつもお世話になっております。
ご質問がありますので、ご回答をお願い致します。

相続人からの相談です。

1.被相続人(令和3年11月17日死亡)所有の土地(約30坪)を家庭菜園として2019年10月頃から知人に無償で貸していた。
なお、無償賃貸の契約書も交わしておらず、口約束していただけの状況です。

上記1の状態である土地について
①相続人が使用するために、無償で貸している状態から自己利用するための取り戻し方及び対応の仕方をご教示頂きたく存じます。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>1.被相続人(令和3年11月17日死亡)所有の土地(約30坪)を家庭菜園として
>2019年10月頃から知人に無償で貸していた。
>なお、無償賃貸の契約書も交わしておらず、口約束していただけの状況です。
>上記1の状態である土地について
> ①相続人が使用するために、無償で貸している状態から自己利用するための取り戻し方及>び対応の仕方をご教示頂きたく存じます。

2 回答

(1)法的な話
対価の支払いなしに、知人が土地を利用している
ことですので、知人との間に土地の使用貸借契約が
成立しているものと考えられます。

使用貸借は、契約期間の定めがあれば、
それで終了しますが、今回は口約束だけという
状況かと思われますので、契約期間の定めは
ないものと思われます。
その場合、使用貸借の解除のルールは以下となります。

①目的に従い借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過した場合
に解除可能(民法598条1項)
または
②使用貸借の使用及び収益の目的を定めなかったときは、いつでも解除可能(民法598条2項)

まずは、②で解除できれば良いのですが、
この「使用及び収益の目的を定めなかったとき」とは
契約書で定めた場合のみならず、黙示の合意なども
含まれます。裁判例などを見る限り、
裁判所は「土地」の使用貸借の場合、何かしらの目的が
あったと評価し、②による解除を認めるケースは稀ですが、
「家庭菜園」等で知人の生活に影響が小さいものの事例で
あれば、認められる可能性もあると思われます。

一方で、使用貸借の使用及び収益の目的を定めて
いたとされた場合、
①で「目的に従い借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過した」
といえるかが問題となります。

この点については、最判昭和45年10月26日の判例は、
「その期間が相当であるか否かは、単に経過した年月のみ
にとらわれて判断することなく、これと合わせて、
本件土地が無償で貸借されるに至った特殊な事情、その後の
当事者間の繋がり、本件土地の使用の目的、方法、程度、
使用する必要とする緊要度など双方の諸事情をも比較衡量して
判断すべきものといわなければならない」としています。

土地の使用貸借の場合、長期になることが多いですが、
居住建物を所有する目的と異なり、今回の家庭菜園が趣味的な
利用をされているのであれば比較的短期で認められる可能性が
高いものと考えられます。さらに地域柄他に同様の規模の
家庭菜園用の土地を借りやすい環境ですとなおさらです。

もちろん、被相続人と知人の合意の
経緯によることや土地が比較的広いことなども考慮されますので、
一概に何年とは言えず、2年だと難しい場合もあるようにも思いますが、

現時点から、土地を明け渡すように請求していっても良いものと
思います。

(2)対応

相続人としては、
一旦は、被相続人が死亡したため、
手紙などで返還を求めた方が良いと思われます。

知人としても、無償で他人の土地を利用している
わけですから、すぐに明渡すというかは分かりませんが、
1年後までには明け渡す等の具体的な提示を得られる
可能性も比較的あるかと思います。

それでも、明渡しに応じない場合または
反応がない場合には、
上記①及び②の解除できる根拠を指摘して
内容証明郵便等を送ってみましょう。

その後、それでも調整がつかない場合には
弁護士等を通じて、交渉をし、最終的には
裁判により土地の明渡を求めることとなると
存じます。

よろしくお願い申し上げます。