お世話になります。
税理士の●●です。
相続人が海外在住の未成年者である場合の遺産分割協議書必要書類について教えてく
ださい。
令和3年8月に亡くなられた被相続人の遺産分割協議書作成中です。
下記状況の相続人2名が海外在住で未成年者に該当します。
その際、書類としてなにが必要になるのか教えてください。
不動産登記もあるので法務局等いろいろ尋ねましたが、現在のところ必要書類がわか
りません。
また、何から順に手続きすべきなのかもわかりません。
<状況>
被相続人A
相続人 B、C,D(平成31年死去)
Dの子供 E、F、G、H(平成26年死去)
Hの子供 I、J
Hはアメリカの方と結婚し、2児(I、J)がいます。
I、Jは日本国籍を取得しています。
I(平成20年5月生)、J(平成21年11月生)ともに未成年者です。
<質問>
①.未成年者の相続人なので法定代理人をつけなくてはならないとおもうのですが、
日本在住の相続人E,Fの配偶者がそれぞれの代理人になるのは可能でしょうか?
それともI、Jのアメリカ在住の父親と再婚した母親がそれぞれの代理人にならなく
てはいけないのでしょうか?
またどの機関でその手続きをするのでしょうか?
②.海外在住のかたは印鑑証明書の代わりにサイン証明をとることとあります。
海外在住の未成年者については、どなたのサイン証明を受け取ったら良いのですか?
③.相続人Fが語学堪能なので作成した遺産分割協議書を、I・Jとその両親には説
明しますが、日本語で作成の遺産分割協議書の署名はI・Jについてはどなたからい
ただくのでしょうか?
まとまらない質問になり、大変申し訳ありません。
よろしくお願いします。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①
>①.未成年者の相続人なので法定代理人をつけなくてはならないとおもう
>のですが、
>日本在住の相続人E,Fの配偶者がそれぞれの代理人になるのは可能でし
>ょうか?
>それともI、Jのアメリカ在住の父親と再婚した母親がそれぞれの代理人
>にならなく
>てはいけないのでしょうか?
>またどの機関でその手続きをするのでしょうか?
まず、相続自体の準拠法は、
被相続人の本国法(日本法)の適用があります(法の適用に関する通則法36条)
がありますが、
親子間の法律関係(親の代理権等)については、
「子の本国法が父又は母の本国法(父母の一方が死亡し、
又は知れない場合にあっては、他の一方の本国法)と同一である場合
には子の本国法により、その他の場合には子の常居所地法による。」(同法32条)
とされています。
(1)親子間の法律関係に日本法が適用される場合
今回はおそらく違うかとも思いましたが、
I及びJの父が日本国籍または母(再婚相手が法律上の母と
なっている場合)が日本国籍の場合には、
親子間の法律関係にも日本法が適用されます。
>日本在住の相続人E,Fの配偶者がそれぞれの代理人になるのは可能でしょうか?
この場合、本来は親権者が代理しなくてはならいのですが、
いただいた事案では、親権者の代理はI及びJが2名いる関係で、
利益相反行為にあたるので、家庭裁判所に特別代理人の選任の申立てを
し、相続人E,Fの配偶者を推薦すれば、家庭裁判所が
認めてくれる可能性があります(民法826条)。
ただし、他の相続人の配偶者ということで、
中立ではないという理由で、家庭裁判所が弁護士等が選任
されることもあります。
この手続きを行う場合、実務上は選任の申立てと合わせて、
遺産分割協議書案を裁判所に提出することになりますので、
その内容次第では、認めてくれることもあります。
なお、この遺産分割協議書の内容は、I及びJの
取得分が法定相続分を下回るようなものですと、
裁判所は基本的に認めてくれません。
いずれにしても、親子間の法律関係に
日本法の適用があるケースでは、その他の
相続人が利害関係人として家庭裁判所に
特別代理人選任の申立て手続きをすることで、
遺産分割を進めることができます。
(2)親子間の法律関係に日本法が適用されない場合
I及びJの父親が外国籍かつ母(再婚相手が法律上の母と
なっている場合)が外国籍の場合には、
親子関係の法律関係については、
子の「常居所地法」によることになります。
そうすると、上記の日本の民法826条の
適用がなく、この「常居所地法」によって
処理されることになります。
つまり、I及びJが海外在中ということですと、
その国の親子間の代理に関する規定がどのように
なっているのかで、誰が代理人となることが
できるのか、その手続き等はどうなるのかという点が
異なってきます(アメリカ在中であれば州法及び判例法などによります)。
この場合、
実務上、(特に日本の)行政機関担当者等もあまり詳しいわけでは
ない上、必要資料も必ずしも法令で明確に「この資料」
なっているわけではなく、スムーズに手続きを進めるためには、
行政機関の判断に依存する部分が点があるため、
法務局等を説得や調整しつつ必要書類の確定と手続きを
行う必要があるでしょう。
(法務局と書面でのやりとりを通じて証拠を残す形で、
正式回答をもらっておくことが多いです。)
2 ご質問②
>②.海外在住のかたは印鑑証明書の代わりにサイン証明をとることと
>あります。
>海外在住の未成年者については、どなたのサイン証明を
>受け取ったら良いのですか?
親子の親族関係に日本法が適用される場合には、
利害関係人として裁判所に申立てを行うことに
なるので、申立て時点では証明書が必要となるわけでは
ありません。
一方で、日本法が適用がない場合には、
ご質問①の通りです。
3 ご質問③
>③.相続人Fが語学堪能なので作成した遺産分割協議書を、I・Jとその両>親には説明しますが、
>日本語で作成の遺産分割協議書の署名はI・Jについてはどなたからい
>ただくのでしょうか?
ご質問①の回答に依存することになります。
4 その他
事案としては、
(特に親族間の法律関係に日本法が適用されない場合)国際相続等の
専門家の関与なしに手続きを進めていくことはなかなか難しいものと
考えられます。
ご依頼者様の自身の属性にもよりますが、
裁判所への申立てや法務局との交渉などの窓口となる
権限がある司法書士や弁護士などの関与が必要な事案なのでは
ないかと存じます。
よろしくお願い申し上げます。