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配偶者へすべての財産を相続させる場合の遺言内容及び遺言執行手続きについて

永吉先生、

いつもお世話になっております。

以下の事実関係、遺言の内容及び推定相続人の状況に基づく質問事項についてご回答いただければ幸いです。

事実関係

1.推定被相続人Aの推定相続人(合計7名)

(1)配偶者B

(2)実兄C

(3)異母兄D(消息は不明)

(4)姪及び甥E~H(合計4名:Aの既に亡くなっている実姉Iの子(代襲相続人))

2.遺言の内容

配偶者にAの財産をすべて相続させる

3.推定相続人の状況

(1)配偶者B:老人ホームでAと同居しており、良好な関係

(2)実兄C:良好な関係

(3)異母兄D:Aも会ったことはなく、消息は不明

(4)姪及び甥E~H:Iが結婚した外国人との間の子であり、国外に居住していることはわかっているが、正確な住所は不明

質問事項

1.自筆証書遺言保管制度を利用する場合における遺言内容について

Aの希望により、自筆証書遺言保管制度を利用する予定ですが、遺言の内容を

「Aはすべての財産をBに相続させる」としようと考えております。

財産の内容(預金口座情報や不動産情報)を個別に細かく記載する方法もありますが、単に「すべての財産」と記載する場合との違いはありますか?

なお、Aの財産内容は本人から聞き取りを行っており、すべて確認済です。

公正証書遺言を作成する場合においても同じ疑問がありますが、公正証書遺言においては公証人へ支払う手数料を算定するために、財産の内容を個別に記載する必要があるということでしょうか?

2.遺言執行における所属不明の法定相続人への就任通知等について

私が遺言執行者となる予定ですが、所在不明の法定相続人(D~H)への就任通知、財産目録の交付等はどうすれば義務を果たすことになりますか?

3.遺言執行における配偶者B以外の法定相続人への対応について

配偶者B以外の法定相続人は遺留分もないため、配偶者B以外の法定相続人は最終的にAの財産を相続することはできないはずですが、遺言執行において配偶者B以外の法定相続人には単に民法で規定された就任通知、財産目録の交付、手続きの完了報告を行うという事務的な手続きを行えば、遺言執行者としての義務を果たすことになると考えればいいのでしょうか?

どうぞ宜しくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜遺言の意味

>1.自筆証書遺言保管制度を利用する場合における遺言内容について
>Aの希望により、自筆証書遺言保管制度を利用する予定ですが、
>遺言の内容を「Aはすべての財産をBに相続させる」としようと考えてお
>ります。
>財産の内容(預金口座情報や不動産情報)を個別に細かく記載する方法も
>ありますが、単に「すべての財産」と記載する場合との違いはありますか?
>なお、Aの財産内容は本人から聞き取りを行っており、すべて確認済です。
>公正証書遺言を作成する場合においても同じ疑問がありますが、
>公正証書遺言においては公証人へ支払う手数料を算定するために、
>財産の内容を個別に記載する必要があるということでしょうか?

法的には、全ての財産を特定の相続人に
相続させる場合、詳細な記載がある場合と
>「Aはすべての財産をBに相続させる」
との記載に法的に違いはありません。

先生のご指摘の対応で問題ないものと存じます。

>公正証書遺言を作成する場合においても同じ疑問がありますが、
>公正証書遺言においては公証人へ支払う手数料を算定するために、
>財産の内容を個別に記載する必要があるということでしょうか?

確かに事実上はそのような意味合いもあると思いますが、

基本的には、遺言には詳細に財産を明示することで、
財産を発見させやすくすることが望ましいという
公証実務の理解があり、公証人が遺言書作成する
場合には、できる限り財産を明示する方針であることや
公証人も責任を持って遺言書を作成するため、
不動産や預貯金の所在を確認するということがあり、
その経緯で、記載されているという意味合いが
強いように思います。

2 ご質問②〜遺言執行者の就任通知等について

>私が遺言執行者となる予定ですが、
>所在不明の法定相続人(D~H)への就任通知、
>財産目録の交付等はどうすれば義務を果たすことになりますか?

遺言執行者の権限で、法定相続人の戸籍謄本から
「戸籍の附票」を請求しまたは住民票などを
取得して、住所を割り出した上で、行う通知等を行う必要があります。

この方法でも、所在不明の場合、
厳密には、不在者財産管理人を選任することに
もなりそうですが、本件ではこれらの相続人が
財産を取得する事案ではないため、
遺言執行者の善管注意義務の程度から考えると、
そこまでする必要は実務上はないでしょう。

3 ご質問③〜遺言執行者の対応について

>配偶者B以外の法定相続人は遺留分もないため、
>配偶者B以外の法定相続人は最終的にAの財産を相続することはできない
>はずですが、
>遺言執行において配偶者B以外の法定相続人には単に民法で規定された就
>任通知、財産目録の交付、手続きの完了報告を行うという事務的な手続きを>行えば、遺言執行者としての義務を果たすことになると考えればいいのでし>ょうか?

はい。本件では、B以外の相続人に
取得できる財産はないので、遺言執行者として
眈々と事務的に対応すれば問題ないでしょう。

よろしくお願い申し上げます。