●●と申します。
貸倒損失計上の可否についてお伺いいたします。
【税目】
法人税
【対象顧客】
法人
【前提条件】
顧問先の2月決算法人A社は、B社に2021年2月まで継続取引の売掛債権3,000万円を保
有。
入金が滞り始めていたため2021年4月にA社とB社は売掛債権について公正証書を作
成。
2021年6月にB社の代表取締役社長Xが行方不明。
A社は2021年7月に地方裁判所に債権の差押えを申し立てる。
B社の代表取締役社長Xは行方不明のため裁判所は公示送達の方法によりB社に債権差
押命令書を送達。
2021年10月に第三債務者のB社売掛債権1,000万円の保有が判明。
2021年10月にA社は第三債務者からB社売掛債権1,000万円を回収。
【質問】
A社は裁判所が公示送達の方法によりB社に債権差押命令書を送達した事実により
法律上は残りの売掛債権2,000万円の貸倒れが確定したと考えています。
またA社は(回収不能の金銭債権の貸倒れ)法人税基本通達9-6-2の適用によりB社に
対する
売掛債権2,000万円を貸倒損失として損金経理を検討。
「債務者の資産状況、支払能力等からみて金銭債権の全額が回収できないことが明ら
かになった」
かどうかの事実認定については裁判所が公示送達の方法によりB社に債権差押命令書
を送達した
事実により「B社及び代表取締役社長Xの行方不明」に該当すると考えられるため
A社は再度B社及び代表取締役社長Xに内容証明郵便を送付する予定です。
この場合A社が売掛債権2,000万円を法人税法の貸倒れとして損金経理をすることに問
題は
あるでしょうか。
よろしくお願いします。
【参考資料】
(回収不能の金銭債権の貸倒れ)
法人税基本通達9-6-2
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>A社は裁判所が公示送達の方法によりB社に債権差押命令書を送達した事実により
>法律上は残りの売掛債権2,000万円の貸倒れが確定したと考えています。
>またA社は(回収不能の金銭債権の貸倒れ)法人税基本通達9-6-2の適用によりB社に
>対する
>売掛債権2,000万円を貸倒損失として損金経理を検討。
>「債務者の資産状況、支払能力等からみて金銭債権の全額が回収できないことが明ら
>かになった」
>かどうかの事実認定については裁判所が公示送達の方法によりB社に債権差押命令書
>を送達した
>事実により「B社及び代表取締役社長Xの行方不明」に該当すると考えられるため
>A社は再度B社及び代表取締役社長Xに内容証明郵便を送付する予定です。
>この場合A社が売掛債権2,000万円を法人税法の貸倒れとして損金経理をすること
>に問題はあるでしょうか。
2 回答
>A社は裁判所が公示送達の方法によりB社に債権差押命令書を送達した事実により
>法律上は残りの売掛債権2,000万円の貸倒れが確定したと考えています。
公示送達により、
債権差押命令書を送達したからといって、
法律上は、A社のB社への債権(売掛債権)が消滅する
わけではありません。行方不明であっても、債権が消滅
するわけではないからです。
ですので、先生のご指摘のとおり、
現状では、法律上の貸倒れではなく、
法基通9-6-2の事実上の貸倒れの問題となります。
>またA社は(回収不能の金銭債権の貸倒れ)法人税基本通達9-6-2の適用によりB社に
>対する
>売掛債権2,000万円を貸倒損失として損金経理を検討。
>「債務者の資産状況、支払能力等からみて金銭債権の全額が回収できないことが明ら
>かになった」かどうかの事実認定については裁判所が公示送達の方法によりB社に
>債権差押命令書を送達した
>事実により「B社及び代表取締役社長Xの行方不明」に該当すると考えられるため
>A社は再度B社及び代表取締役社長Xに内容証明郵便を送付する予定です。
いただいた経緯からすると、回収行為もしっかり
行っており、B社及び代表者も行方不明ですので、
事実上の貸倒れとしての損金経理も、
認められる可能性が高いように思いますが、
税務署が事実上の貸倒れを厳しく見る理由は、
A社からB社に対する売掛債権(2000万円)が
法律上残存しているため、今後回収する可能性が残って
いる状態だからという点があります。
よりリスクをヘッジするとすると、
A社からB社に対する債務免除を行い
法律上の貸倒れ(法基通9-6-1(4))にすると
いう対応となるでしょう。
その場合、免除の時期(免除の意思表示は
「到達」の時点で効力が発生するため)
を明確にするため、意思表示の公示送達をするという対応が
考えられます。
(債権差押えを弁護士に依頼されているかとも
思いましたので、その弁護士に言ってみても良いかもしれません。)
https://www.courts.go.jp/tokyo-s/saiban/l3/Vcms3_00000347.html
よろしくお願い申し上げます。