前提事項
・株式の譲渡制限が付されている
・創業社長(現社長)が全株式保有
・上記株式すべてを役員や従業員へ贈与したい(全て親族外の方)
・現社長退任後、現社長の思いは株式を役員・従業員だけで今後も引き継いでいって
ほしい
やろうとしていること案
・役員・従業員が死亡又は退職後は、会社で株式を買い取り(金庫株)、新入社員が
入社したら金庫株を譲渡する
・役員・従業員が死亡又は退職後は、その時点の社長が株式の贈与を受け、新入社員
が入社したら、社長から新入社員へ贈与する
質問
・役員・従業員が退職時に、役員等が保有する株式を会社で買い取り(金庫株)、新
入社員が入ったら会社が保有する金庫株を新入社員へ渡すことを会社のルールにする
場合、どのようにしておけばいいのでしょうか(定款に記載?)
・また、会社で買い取る、新入社員へ譲渡する決議をする場合、取締役会のみでの決
議は可能でしょうか。
・役員・従業員が退職時に、役員等が保有する株式をその時点の社長個人に株式を贈
与するといった仕組みを作ることは可能でしょうか?(例えば新入社員入社の際、そ
の方が退職した場合は社長へ株式を贈与する等の条件付き贈与契約?のようなものを
書いてもらうなど)
・また、社長が贈与を受ける時、社長が新入社員へ贈与する場合の決議について、取
締役会のみでの決議は可能でしょうか。
よろしくお願い致します。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①
>・役員・従業員が退職時に、役員等が保有する株式を会社で買い取り(金庫株)、新
>入社員が入ったら会社が保有する金庫株を新入社員へ渡すことを会社のルールにする
>場合、どのようにしておけばいいのでしょうか(定款に記載?)
この場合、役員・従業員の退職を取得事由とする
取得条項付株式(会社が取得を請求できる株式)
に現状の株式に変更・組成することで可能にはなります。
(ただし、株主が社長以外の者になりますので、
これを組成したとしても、変更をされてしまう
可能性はあります。)
>・また、会社で買い取る、新入社員へ譲渡する決議をする場合、取締役会のみでの決
>議は可能でしょうか。
会社で買い取るという行為自体は、上記の取得条項付株式の
内容として、取締役会決議によることにする組成自体は可能です。
(ただし、取締役は株主総会で解任できるので、どこまで
意味があるのかはわかりません。)
自己株式(金庫株)の処分(新入社員への譲渡?)は、会社法上は新株発行と同様に
整理されますので、株主総会の特別決議が必要です。
2 ご質問②
>・役員・従業員が退職時に、役員等が保有する株式をその時点の社長個人に株式を贈
>与するといった仕組みを作ることは可能でしょうか?(例えば新入社員入社の際、そ
>の方が退職した場合は社長へ株式を贈与する等の条件付き贈与契約?のようなものを
>書いてもらうなど)
法的には停止条件付贈与契約等で可能ではあります。
ただし、例えば、社長に相続が発生した場合にも契約も
相続され、その社長の親族が取得することに
なるため、目的の達成ができるかというと
難しいと思います。
>・また、社長が贈与を受ける時、社長が新入社員へ贈与する場合の決議について、取
>締役会のみでの決議は可能でしょうか。
そうですね。取締役会で譲渡承認決議は可能です。
なお、株式が分散されている以上、取締役は入れ替え
られる可能性は当然あります。
3 ご指摘のスキームの全体について
もちろん、誰に何株を与えるのか等、
状況にも依存するかと思いますが、
上記の方法で、会社がうまく回っていくのか
という難しいかと思われます。
株主が分散するということは、
その分、意見が別れた場合に会社としては
何もできない状態になってしまうということです。
非公開会社において、
特に支配株主となる者がいない状態で、
株式を分散させると各株主の利害
(特に従業員同士等の利害関係が
ある者ですので)に
より意思決定が異なってくるため、
会社の安定的な継続性ということから
すると望ましいことではないように思います。
仮に私がコンサルティングをする
場合には、上記の方法はおすすめは
しないと思います。
会社の後継者を選定し、その者に
議決権(支配権)を集約させつつ、
一部を従業員持株会などを利用して、
従業員さんに保有させる等の方法論は
あると思います。
よろしくお願い申し上げます。