いつもお世話になっております。
標題の件につき、ご教示ください。
≪概要≫
土地の評価について、税務調査で指摘を受けております。
銀行の店舗に貸している土地: 673番2と673番3
賃貸借契約書が筆ごとに分かれており、
〇 2は堅固な建物の建築を認めことを条件*昭和52年12月1日契約日*坪単価600円
〇 3は駐車場及び車両管理に必要な物件および構築物を建設使用する目的の契約書
昭和55年12月1日契約
となっております。3は路線側ではなく、店舗の脇の駐車場だけでは不足であり借
りたようです。
物理的には区切られておらず、銀行の店舗の敷地として一体となっており、
かつ、駐車場は銀行のお客様のみの利用となっております。
また、3の筆上には、シャッター付きの立派な車庫が立っております。
この場合、3の契約書が上記のような目的となっているため、借地権が及ば
ないというのが税務署の主張です。
このような事例で、借地権の範囲は3の筆の駐車場に及ぶと考えるのは難しいで
しょうか?
3の契約書上の、車庫管理に必要な物件では、建物を建ててよく、借地権が及ぶと
考えるのは難しいでしょうか?
以上、よろしくお願い致します。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>このような事例で、借地権の範囲は3の筆の駐車場に及ぶと考えるのは難しいで
>しょうか?
>3の契約書上の、車庫管理に必要な物件では、建物を建ててよく、借地権が及ぶと
>考えるのは難しいでしょうか?
2 回答
本件で、「3」の土地に借地権が及ぶという
主張としては
①銀行の店舗利用と不可分一体として利用
されている土地であり、「2」の借地権が、
「3」の土地にも及ぶという主張
②「3」には、建物(車庫)が建設されており、
建物所有目的の土地賃貸借であり、単独で借地権が成立
しているという主張
の2つかと思われます。
(1)①の主張について
>3は路線側ではなく、店舗の脇の駐車場だけでは不足であり借
>りたようです。
>物理的には区切られておらず、銀行の店舗の敷地として一体となっており、
>かつ、駐車場は銀行のお客様のみの利用となっております。
とのことですので、一体のものとして
利用されていることは認定できるかと思います。
ただ、
幼稚園の園舎敷地に隣接する土地をその運動場として使用するために
賃貸借がされた場合において、園舎敷地と不可分一体の関係にあるとしても、
これを幼稚園の運動場として使用する旨の合意が存在した事案で、
最高裁平成7年6月29判決は、借地権は及ばないという
判断をしています。
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=76106
上記最高裁も、当該事案の個別事情も含めた
判断をしていますが、本件でも「3」の土地については
別途の賃貸借の合意対象となっていることから、
少々厳しい面はあるかと思います。
ただし、上記最高裁も最後は個別事情を
考慮するような判断をしていますし、
税務署に対する主張の1つとして利用するのは
ありだと考えます。
(2)②の主張
>3の筆上には、シャッター付きの立派な車庫が立っております。
>この場合、3の契約書が上記のような目的となっているため、借地権が及ば
>ないというのが税務署の主張です。
ということから、確かに契約書上の文言から
判断すれば、税務署の言っていることにも一理あるのですが、
少々形式的に過ぎるかと思います。
契約書の文言は、契約締結の経緯やその後の状況などから
どのような意味を表しているのかが解釈されます。
つまり、車庫が「建物」と評価できる状態であれば、
賃貸人も当然それ(建物所有)を許容していたという認定もあり得る
ところです。
法的には、
「建物」とは、土地に定着し、壁、屋根を有し、
住居、営業などの用に供することのできる建造物で、
独立の不動産として登記できるものをいいます。
シャッター付きの立派な車庫ということで、
実際の構造などが分かりませんが、
税務署に対して、車庫の現況を伝えた上で、
「建物」に該当するという主張をするというのは
ありだとは思います。
最終的な判断は、事実認定の評価の問題
とはなるものの、契約書の文言がご質問事項に
あるというのみから、必ずしも借地権が
成立していないとまでは言えませんので、
争うのあれば、
この辺りを主張していくこととなるでしょう。
よろしくお願い申し上げます。
下記、ご回答ありがとうございました。
≪状況≫
➀ 登記簿謄本を確認してみたら、車庫は附属建物として記載有りました。
鉄骨造カラー鉄板葺平家建 40.29㎡
➁ 契約書には覚書があり、現在では、賃料は店舗側、坪単価と駐車場側の坪単価は、店舗側(路線側)が68円高い。
(契約当初は、駐車場側の方が坪48円高かった。契約時期は駐車場が3年遅い)
➂ 契約書上、店舗の契約は30年更新、駐車場は1年更新
➃ 税務署からは、最高裁S42年12月5日の判決を例に、契約書上の主たる目的
があくまで駐車場用地のために使用なのと、車両管理に必要な物件及び構築物
となっていること、また契約期間が1年更新となっており、借地借家法に守られ
た建物ではないとのことで借地権の控除は認められないと言われています。
先生からいただいた論点含めて、下記➀~➂の論点で、税務署には主張してみたのですが、
上記➃の回答でした。
もう、覆す手段はなさそうでしょうか?
➀ 車庫は附属建物として登記できる独立した建物であり、実体が建物所有目的の土地の賃貸借になっている。第三者対抗要件を満たしている。
➁ 契約書の文言は、契約締結時の経緯やその後の状況などからどのような意味を表しているのかが解釈され、現状からすれば、賃貸人も当然建物所有を許容していたという認定になる。
➂ 附属建物としての登記をしていること自体、母屋と別建物ながら両者が一体となって機能を果たす建物のことであり、一体に借地権が及ぶとするのが妥当。
主である建物が売却されれば、附属建物も一緒に売却されるし、主である建物に抵当権が設定されれば、その効力は附属建物にも及ぶ。
追加でのご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>➃ 税務署からは、最高裁S42年12月5日の判決を例に、
>契約書上の主たる目的があくまで駐車場用地のために使用なのと、
>車両管理に必要な物件及び構築物
>となっていること、また契約期間が1年更新となっており、借地借家法に守ら>れた建物ではないとのことで借地権の控除は認められないと言われてい
>ます。
>先生からいただいた論点含めて、下記➀~➂の論点で、税務署には主張して
>みたのですが、
>上記➃の回答でした。
>もう、覆す手段はなさそうでしょうか?
2 回答
税務署が例に出している最判昭和42年12月5日も、
結局のところ、社会通念にしたがって、主たる目的を
認定するとするものです。
(契約書上の文言で決めるということは
いっているわけではありません。)
確かに、今回のご質問で新しくご教示いただいた
契約期間が1年間であることの評価は、
1年間としたのは、主たる目的が単なる駐車場としての
利用であったためということを基礎付ける事情には
なると思います。
ただし、
「契約期間が1年更新となっており、借地借家法に守られた建物ではない」
という論理の運びは不明です(借地借家法に守られる建物であれば、
1年とされているのは無効になるだけだからです。)
結局のところ、最終的には事実認定と評価の
問題となりますので、どこまで争うか
という点は、依頼者様のご意向によるかと思います。
(更正されても、不服申立てまでする等含む)
いただいた情報の範囲でしか評価できないのですが、
1年となっている点は、確かに不利に働く事情で、
税務訴訟でも厳しい事案かとは思われます。
よろしくお願い申し上げます。