お世話になっております。
質問①
相続人等に対する株式売渡請求の対象になるかどうかは
取得の形態によって、下記の理解で間違っていないでしょうか?
遺言なし、遺産分割協議で取得…制度の対象(この制度で買い取れる)
相続させる旨の遺言で取得…制度の対象(この制度で買い取れる)
特定遺贈で取得…制度の対象ではない(この制度では買い取れない)
質問②
特定遺贈で取得の場合は、
譲渡承認請求の制度によって買い取ることができる
という理解で間違っていないでしょうか?
質問②
会社は、上記のどの形態で取得したのか
実務上どのように確認するものなのでしょうか?
(普通に文書で確認するだけ?変な質問だったらすみません)
よろしくお願いいたします。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①
>相続人等に対する株式売渡請求の対象になるかどうかは
>取得の形態によって、下記の理解で間違っていないでしょうか?
>遺言なし、遺産分割協議で取得…制度の対象(この制度で買い取れる)
>相続させる旨の遺言で取得…制度の対象(この制度で買い取れる)
>特定遺贈で取得…制度の対象ではない(この制度では買い取れない)
はい。この制度の対象は「相続」(一般承継)により
取得した株式となりますので、ご理解の通りです。
2 ご質問②
>特定遺贈で取得の場合は、
>譲渡承認請求の制度によって買い取ることができる
>という理解で間違っていないでしょうか?
はい。
特定遺贈は、特定承継になりますので、
譲渡制限株式であれば、譲渡承認請求を拒否することにより
会社または指定買取人が買取りをすることができます。
3 ご質問③
>会社は、上記のどの形態で取得したのか
>実務上どのように確認するものなのでしょうか?
>(普通に文書で確認するだけ?変な質問だったらすみません)
相続人等に対する株式売渡請求や株式譲渡の不承認による
買取りは、会社法で手続とその順序が決まっており、履践が
なければその効力は発生しません。
両者いずれかの方法で買取りをしたと判断するためには、
このような手続きが履践されているのかを確認する必要があります。
例えば、株式譲渡の不承認であれば、
株主から譲渡承認請求及び不承認の場合の買取請求があり、
取締役会または株主総会(原則)の不承認決議があり、
それに基づき会社からの不承認通知があり、
買取通知及び暫定的買取代金の供託証明があるか等の場合です。
相続人等に対する株式売渡請求により買取りであれば、
株主総会の特別決議があるか、
相続等のあったと知った日から1年以内に売渡請求が
なされているかなどになります。
どちらもされていないという場合には、
特定株主からの合意による自己株式の取得
として評価される場合が多いでしょう。
ただし、特定株主からの合意による自己株式のの
取得も、手続要件があります。
当時の会社の株主構成などにもよりますが、
会社法上は、手続きの履践がなく、
取得したと思っているだけというのが
実務上は非常に多いですね。
(拙著「非公開会社における少数株主対策の実務〜会社法から税務上の留意点まで」
等参照)
何もなければ顕在化しないことが多いですが、
特にMAなどをする際には、問題が顕在化します。
よろしくお願い申し上げます。
お世話になっております。
ご回答ありがとうございます。
追加で質問させていただきます。
買取時の裁判での株価決定の考え方について
下記の理解で間違っていないでしょうか?
株式を買い取られる株主が少数株主だとして
下記のような会社都合の買取の場合
裁判での株価は支配株主にとっての価値とされる
・全部取得条項付種類株式
・株式併合
・株式等売渡請求
・相続人に対する売渡請求
これに対して、
株主側から譲渡承認請求がされた場合には
裁判での株価は少数株主にとっての価値も加味される
そうすると、
相続によって株式買取がされる場合
一般承継の方が特定承継よりも株式の買取価格が高くなる
相続によって株式を買い取られてしまう株主からすると
遺言なしで遺産分割協議で相続人を決めるか
遺言を「相続させる旨の遺言」にしておいた方が
遺言で特定遺贈にするよりも
株式の買取価格が高くなって有利になる
よろしくお願いいたします。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>買取時の裁判での株価決定の考え方について
>下記の理解で間違っていないでしょうか?
>株式を買い取られる株主が少数株主だとして
>下記のような会社都合の買取の場合
>裁判での株価は支配株主にとっての価値とされる
>・全部取得条項付種類株式
>・株式併合
>・株式等売渡請求
>・相続人に対する売渡請求
>相続によって株式買取がされる場合
>一般承継の方が特定承継よりも株式の買取価格が高くなる
>相続によって株式を買い取られてしまう株主からすると
>遺言なしで遺産分割協議で相続人を決めるか
>遺言を「相続させる旨の遺言」にしておいた方が
>遺言で特定遺贈にするよりも
>株式の買取価格が高くなって有利になる
2 回答
裁判例の分析や裁判所の傾向からすると
基本的なご理解は先生のご指摘の通りです。
ただ、
>・相続人に対する売渡請求
に関しては、譲渡承認制度では
相続を補完できないため、同趣旨で、
創設された制度ですので、譲渡承認と同様と考えるという
見解も有力です。
私見としては、
先生のご理解と同様、裁判所のこれまでの
考え方と整合するのは、強制的な(会社都合)
取得である以上、その他スクイーズアウト的な
手法と同様と解されるべきではないか
とは考えています。
ただ、私の場合、会社側に立つことが
多いので、譲渡承認制度と同様という
前提の主張(当然の前提として流す)をして、
相手方の弁護士がその点について反論して
こずに、少数株主の立場も考慮された
という経験はございます。
この辺りは、最終的に裁判官
が決定するとはいえ、弁護士の争い方
などで、結論が変わってくるのが実務の現状かと
思います(明確な考え方が確立されているとまでは
いえない)。
よろしくお願い申し上げます。