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従業員社宅評価と借地借家法

永吉先生
いつも拝見させて頂いております。税理士の●●と申します。

従業員社宅評価と借地借家法との関係について教えて頂きたいと思います。

<前提>
被相続人A所有の土地・建物を、同族会社Bに相当の対価(世間相場)で貸
付けており、使用目的は同族会社Bの従業員社宅と契約書にも記載。
(従業員からの社宅徴収金額は給与加算されない程度)
(同族会社は、特定同族会社事業宅地等の80%適用要件すべて満たす)

<質問>
(イ)この場合、被相続人Aが世間相場の家賃で同族会社Bへ賃貸借している
ことのみで判断すれば、借家権の目的となっている家屋の敷地として「貸家
建付地評価」となると考まえす。

(ロ)一方で、使用目的が同族会社Bの従業員社宅に限定している点から、借
地借家違法の適用は及ばないという過去の判例等により、国税庁の質疑応答
等にもある「従業員社宅の敷地は自用地評価」となるとの見方もできます。

(ハ)また、基本的な質問となり恐縮なのですが、こういった場合の借家権と
は契約書上の賃借人Bをさすのでしょうか?それとも実際住んでいる従業員
のことを指すのでしょうか?

(ニ)同類として、土地を適正地代で借りて建物を同族会社が所有し(無償返還
届出有)、従業員社宅として利用している場合の借地借家法の適用判断は
上記と同じ流れとなるのでしょうか?

よろしくお願い致します。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜賃借人である法人が社宅として利用している場合

>(イ)この場合、被相続人Aが世間相場の家賃で同族会社Bへ賃貸借している
>ことのみで判断すれば、借家権の目的となっている家屋の敷地として「貸家
>建付地評価」となると考まえす。
>(ロ)一方で、使用目的が同族会社Bの従業員社宅に限定している点から、借
>地借家違法の適用は及ばないという過去の判例等により、国税庁の質疑応答
>等にもある「従業員社宅の敷地は自用地評価」となるとの見方もできます。
>(ハ)また、基本的な質問となり恐縮なのですが、こういった場合の借家権と
>は契約書上の賃借人Bをさすのでしょうか?それとも実際住んでいる従業員
>のことを指すのでしょうか?

まず、今回は、A所有の建物をBに賃貸し、
それをBが社宅として利用しているという
ことかと存じます。

この場合、借地借家法の適用がないとされているのは、
Bと社宅従業員との間の、建物利用に関する契約について
になります。

つまり、所有者Aと賃貸借契約を締結しているのはBですので、
このAとBの契約については、Bを賃借人として、
借地借家法の適用がありますので、ご指摘の(イ)の考え
方となるものと考えられます。

余談ですが、
>使用目的は同族会社Bの従業員社宅と契約書にも記載。

というのは、本来は、賃貸借契約の場合、
転貸が禁止されますが、あくまでも、Bが従業員に
社宅として建物を利用させるのは、
転貸でなく、Bの利用として利用させているものに
過ぎないことを明確にする趣旨で記載されることが
多いものです。

明確にしておかないと社宅としての利用が転借として
解除事由になり得ますので、その点を明確にするためです。

つまり、この記載があるからといって、
AとBの賃貸借契約について、借地借家法の適用が
なくなるわけではありません。

2 ご質問②〜土地の場合

>同類として、土地を適正地代で借りて建物を同族会社が所有し(無償返還
>届出有)、従業員社宅として利用している場合の借地借家法の適用判断は
>上記と同じ流れとなるのでしょうか?

AからBに対する「土地」の賃貸借契約について、
借地借家法の適用があるか(借地権が成立しているか)
というのがご質問のご趣旨であれば、適用があります。

なお、無償返還の届出は、
借地権設定の税務上の運用として
権利金の認定課税を行わないための取扱いとして
認められているのですが、

借地借家法との関係でいえば、
本来、土地の適正地代が支払われ、
土地の賃貸借契約が成立している以上、
借地権が生じ、正当事由がない限り、
土地所有者は更新拒絶できないので、
民事の法律関係とは実は整合性のない税務上の取り扱いとなります。

よろしくお願い申し上げます。