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清算手続について

永吉先生

いつもお世話になっております。●●と申します。

下記の法人A社の解散・清算についてご教授いただけますでしょうか。

【決算概要】

〇資産

預金20万

〇負債

個人借入金(長男)40万

個人借入金(次男)1,500万

〇純資産

資本金1,000万

利益剰余金△2,500万

【株主・役員構成】

総株数200株

長男140株・・代表取締役

次男40株・・・過去に取締役であったが退任している

三男10株・・・取締役

四男10株・・・取締役

他に、長男の子どもが取締役に入っています。
役員は計4名です。

長男と次男が父親の相続をきっかけに仲違いしており、
現在は互いに弁護士を通してしかやり取りはしていない、という状態です。

長男としては、この会社を清算したい、という希望を持っているのですが、
次男からの借入金1,500万について気になっております。

通常清算であれば、債務免除益を計上して、
期限経過欠損金と相殺して終わりになると思うのですが、
現状、次男が債権放棄に同意してもらえる状況になく、
書面を取り交わすのは難しい状態です。

議決権上は長男の保有割合から解散決議は可能と考えているのですが、
この場合、長男が決議した解散・清算に対して、
次男の立場から何か訴えを起こす、というのは可能なのでしょうか。
可能な場合、次男としてはどのような訴えを起こす可能性があるのでしょうか。

ちなみに法人A社はすでに事業を廃業し、現在は休眠状態となっており、
何ら事業活動は行っておりません。

次男としても、この会社から1,500万の返済が見込める訳がないことは
承知はしているようですが、仮に次男が返済を要求してきた場合は、
返済が完了しない限り清算はできないのでしょうか。

お手数お掛けしますが、ご教授のほどよろしくお願い申し上げます。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>議決権上は長男の保有割合から解散決議は可能と考えているのですが、
>この場合、長男が決議した解散・清算に対して、
>次男の立場から何か訴えを起こす、というのは可能なのでしょうか。
>可能な場合、次男としてはどのような訴えを起こす可能性があるのでしょうか。
>ちなみに法人A社はすでに事業を廃業し、現在は休眠状態となっており、
>何ら事業活動は行っておりません。
>次男としても、この会社から1,500万の返済が見込める訳がないことは
>承知はしているようですが、仮に次男が返済を要求してきた場合は、
>返済が完了しない限り清算はできないのでしょうか。

2 回答

まず、ご指摘のとおり、解散決議は可能ですが、
清算を結了する(法人格を消滅させる)には、
債務超過の状態(債務がない状態)を脱する必要があります。

法人格を消滅させる法的な整理としては、
○債務超過ではない場合→清算手続きでの結了可能
○債務超過の場合→破産手続によることが必要

ということとなります。

したがって、法的に清算手続きにより法人格を
消滅させるには、ご指摘のとおり、次男が債権放棄をする
必要があります。
(休眠会社の場合、解散決議だけして放置されているという
状況もありますが、清算中の会社となっているのみで、
法人格は消滅していません。)

仮に、勝手に債権放棄があったこととして、
清算結了登記を入れたとしても
(犯罪行為ですので専門家としてお勧めは控え
られた方が良いです)、法的には、不実登記であり、
A社の法人格は消滅していないので、
弟が訴えを起こしてくることすれば、A社に対する
1500万円の返還請求ということになります。

現実論としては、
破産手続きといっても、
いただいた資産構成と
休眠状態ということからすると
ご自身で行うのであれば、最低予納金(20万円)で、
行えるのではないかと思います。

一方で、
>長男と次男が父親の相続をきっかけに仲違いしており、
>現在は互いに弁護士を通してしかやり取りはしていない、という状態です。

とのことで、破産手続きを行うと
費用が発生することから次男には金銭が
支払われないことや次男としても、
債権だけ残していると将来の相続税等の関係も
あると思いますので、

弟の弁護士に、
現預金20万円を渡すから清算手続きに
協力してもらい債権放棄してもらうという
こともあり得るところかと思います。

弁護士であれば、A社が破産手続きを行った場合、
弟に何もメリットがないことは明らかとわかる
と思いますので、弟の弁護士から弟を説得してもらう
ような交渉をするのも1つあり得るところかと思います。

なお、最終的には、長男のA法人の法人格を
消滅させたいという希望とそれにかかるコスト
(今の長男さんの弁護士が申立て手続きを
するということもあり得るので、その場合はその費用も含む)

勘案の上、現時点で法人格を消滅させるかを
含めて、決定することになるかと思います。

よろしくお願い申し上げます。