未分類

無対価合併で増加したその他資本剰余金の減少方法

永吉先生

●●です。
よろしくおねがいします。

(概要)
A社とB社は甲代表一族が100%持っている会社でした。
A社とB社はともに債務超過で資本金もともに1,000万円で資本準備金はありませんでした。
B社はA社に吸収合併で税制適格で無対価合併されました。
無対価合併の場合、資本の部はその他資本剰余金で受けるようです。(https://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/ota-tatsuya-point-of-view/2019-11-01.html)
均等割の計算で用いる資本金等の額にはこのその他資本剰余金が含まれていて欠損填補をすれば計算から除外できます。
しかし、この除外できるその他資本剰余金は資本金又は資本準備金を減少させたことによって生じたものが対象で今回のように無対価合併により生じたその他資本剰余金を欠損填補しても対象にならないようです。
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shitsumon/tozei/index_a1.html#q04d

(質問)
1)その他資本剰余金を資本金等の額から減らすには有償減資をしないといけませんが、債務超過の場合は配当規制にひっかかって出来ないでしょうか?それは自己株式取得でも同じでしょうか?
2)その他資本剰余金を株主総会決議で資本準備金に組み入れて、債権者保護手続きを行って再度その他資本剰余金へ取り崩してから無償減資による欠損填補をする、という回りくどい方法しかないでしょうか?
3)そもそも無対価合併の場合でもその他資本剰余金で受けるのが正しいでしょうか?
4)他によい方法はありそうでしょうか?

よろしくおねがいいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

回答の便宜のため、各ご質問への回答の
順番が前後しますが、ご了承ください。

1 ご質問①〜無対価合併と合併法人その他資本剰余金

>そもそも無対価合併の場合でもその他資本剰余金で受けるのが正しいでしょうか?

無対価かつ適格合併の効力が生じている場合、
会社計算規則36条2項及び会計基準適用指針437-2頁により、
被合併会社のその他資本剰余金で受けることとなります。

なお、合併法人(A社)の法人税法上の「資本金等の額」(法人税法2条16号)
にも、適格合併の場合には、被合併会社(B社)の資本金等の額に
相当する金額が含まれることとなります(同法施行令8条5号ハ)ので、

地方税法上の「資本金等の額」にも当然含まれることとなります。

2 ご質問②〜均等割との関係

>1)その他資本剰余金を資本金等の額から減らすには有償減資をしないと
>いけませんが、債務超過の場合は配当規制にひっかかって出来ないでしょうか?
>それは自己株式取得でも同じでしょうか?

そうですね。有償減資の配当も(有償の)自己株式取得も、
分配可能額の範囲内で行う必要があります(いわゆる財源規制)。

債務超過会社の場合、いずれにしても、
分配可能額はないでしょうから、財源規制に引っかかってしまうこととなります。

財源規制違反の配当や自己株式の取得においても、
会社法の下ではそれ自体は有効であるとの見解(立法担当者等)
もありますが、

会社法制定前と同様に無効であるというのが
支配的な見解です。

この支配的な見解に依拠すると、配当や自己株式の取得を
しても、法的には無効であり、
財源規制違反の配当や自己株式の取得をしても、
税法上の「資本金等の額」から減算することはできない
ということになるでしょう。

なお、
実務上は、税務との関係では分配可能額規制違反については、

あまり調査職員等も詳しくないのか、一応の見解の
対立もあるからなのか、何も指摘を受けていない
という例もあるのではないかと思料しますが、
厳密な法解釈では上記のようになるでしょう。

3 ご質問③
>2)その他資本剰余金を株主総会決議で資本準備金に組み入れて、
>債権者保護手続きを行って再度その他資本剰余金へ取り崩してから
>無償減資による欠損填補をする、という回りくどい方法しかないでしょうか?

既に合併の効力が発生してしまっているとすると、

均等割との関係で、
法人税法上の「資本金等の金額」からの減算(実質的な株主への払戻し)が
難しい以上、

地方税法上の「資本金等の金額」からの減算で調整
するしかないと考えられます(地方税法23条1項4号の5等参照)
が、その場合、先生のご指摘の方法になるものと考えらます。

進行期中に行うということですと先生のご指摘の
とおり、会社法上債権者保護手続きを行う必要があります
(会社法449条1項本文)。

なお、「定時」株主総会において、損失塡補のための
資本準備金を減少させる場合には、債権者保護手続きは
不要となります(449条1項但書)。

その他、先生からいただいた情報を前提に、
法人税法、地方税法、地方税法施行規則、会社法、会社計算規則
等の条文操作から色々と検討してみましたが、
債務超過が継続するという状況下では、地方税法上の「資本金等の金額」
から減算するにはご指摘の方法となるように思います。

よろしくお願い申し上げます。