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遺言の執行について

永吉先生

税理士の●●と申します。
いつもありがとうございます。

公正証書遺言で遺言者より「法定相続人以外の親族1人に便宜的にに土地建物を
遺贈する。但し当該親族は執行人をして速やかに売却換価し得た資金を
3人(相続人1人、その他の親族2人)に均等に分配する」と書かれています。
この場合遺贈を受けた者が登記権利者、義務者は執行人で登記ができると思いますが
如何でしょうか。
また、「執行人をして」と書かれていますので執行人が受遺者(登記名義人)の代理
として
売買契約の契約者となれると考えますがこちらはいかがでしょうか。
よろしくご教授ください。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>「法定相続人以外の親族1人に便宜的にに土地建物を
>遺贈する。但し当該親族は執行人をして速やかに売却換価し得た資金を
>3人(相続人1人、その他の親族2人)に均等に分配する」と書かれています。

>この場合遺贈を受けた者が登記権利者、義務者は執行人で登記ができると思いますが
>如何でしょうか。
>また、「執行人をして」と書かれていますので執行人が受遺者(登記名義人)の代理
>として売買契約の契約者となれると考えますがこちらはいかがでしょうか。

2 回答

公証人としては、かなり疑義が残る
遺言書を作成してしまっていますね。
おそらく、公証人が通常の相続人に対する
換価分割の遺言(一種の遺産分割方法の指定)のケースで、
売却の便宜上、一人の名義登記をする場合と同様に考えて作成して
しまったように思います。

少々長くなりますがご了承ください。

(1)遺言の解釈について

>「法定相続人以外の親族1人に便宜的にに土地建物を
>遺贈する。但し当該親族は執行人をして速やかに売却換価し得た資金を
>3人(相続人1人、その他の親族2人)に均等に分配する」と書かれています。

こちらですが、解釈としては、以下の2つのパターンが
あり得るかと思います。

①相続財産である土地建物を売却した上で、その金銭を3人に
特定遺贈するという遺言

②便宜的に遺贈するとされている親族1人に対する負担(土地建物を売却して、
3人に資金を均等分配する負担)付特定遺贈

「遺贈する」という文言の位置を重視すると①となりますし、

「便宜的に」及び「執行人をして」という表現を重視すると、②となります。

(2)登記義務者等について

>この場合遺贈を受けた者が登記権利者、義務者は執行人で登記ができると思いますが
>如何でしょうか。

こちらについてはご理解の通りです。

(3)契約者が誰になるのかについて

>また、「執行人をして」と書かれていますので
>執行人が受遺者(登記名義人)の
>代理として売買契約の契約者となれると考えますが
>こちらはいかがでしょうか。

まず、執行人が法律上の代理人となるのは、
相続人(包括受遺者含む)に対してということになります。

>①相続財産である土地建物を売却した上で、その金銭を3人に
>特定遺贈するという遺言

と解釈する場合、各相続人(被相続人の地位を相続する者)
が遺言を執行するための代理人としての契約者となることは
理論上は可能です。

一方で、
>②便宜的に遺贈するとされている者1名に対する負担(土地建物を売却して、
>3人に資金を均等分配する負担)付特定遺贈

と解する場合、執行人はこの者に対して、負担を履行するように
請求することはできますが、実際の履行の当事者になることは
できません。つまり、履行するように請求はできますが、契約者は
あくまでも「親族1人」となります。

ここで矛盾が生じているのが、
仮に①と解したとしても、買手からすれば、
登記が相続人ではない「親族1人」であるにも
関わらず、なぜ遺言執行者が売買の当事者となる
法的根拠が不明な点です。
つまり、単独登記をすることと遺言執行者が売買の
当事者となる行為が矛盾する形になってしまうからです。

遺言書を見せて納得を得られれば良いのですが、
買手側に一定の法律知識があれば、リスクが高すぎて、
遺言執行者と契約はしないのではないかと思います。