いつもお世話になっております。
税理士の●●です。
マンション共用部から生じる収入(携帯基地局収入)の帰属について
教えてください。
(前提)
①マンション共用部(屋上)に携帯基地局を設置
②管理組合あり
上記の場合において、
1.携帯電話会社と管理組合が契約 かつ 管理組合が申告
が通常だと思うのですが、
2.携帯電話会社と区分所有者(全員)との間で直接契約⇒個人がそれぞれ申告
は法律上、可能でしょうか?
※共用部から生じる収益は誰に帰属するのでしょうか?
(契約によって変わるモノなのでしょうか?)
過去の事例等では、
契約を管理組合と行っている⇒管理組合に帰属
を見つけることが出来たのですが、それ以外の
事例を見つけることが出来ませんでした。
以上よろしくお願いいたします。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
非常に難しい問題であり、調査含めて、
少々お時間をいただいてしまいました。
1 ご質問
>マンション共用部から生じる収入(携帯基地局収入)の帰属について
>教えてください。
>(前提)
>①マンション共用部(屋上)に携帯基地局を設置
>②管理組合あり
>上記の場合において、
>1.携帯電話会社と管理組合が契約 かつ 管理組合が申告
>が通常だと思うのですが、
>2.携帯電話会社と区分所有者(全員)との間で直接契約⇒個人がそれぞれ申告
>は法律上、可能でしょうか?
>※共用部から生じる収益は誰に帰属するのでしょうか?
>(契約によって変わるモノなのでしょうか?)
2 回答
(1)区分所有法の規定と管理組合に帰属する場合の整理
区分所有法によれば、
共用部分は、規約などで別段の定めがない限り、
区分所有者全員の共有となり(同法11条1項及び2項)、
共有割合はその専有部分の床面積の割合によるものと
されています(同法14条1項)。
そして、共用部分から生じた収益は、
持分割合にしたがって各共有に収取するものと
されています(同法19条)。
一方で、先生のご指摘の通り、
人格のない社団等に該当する管理組合が
契約者となったケースにおいて、
一旦は管理組合の収益となるとされています。
代表的な例がご存知の通り、
平成25年10月15日裁決の事案です。
https://www.kfs.go.jp/service/JP/93/08/index.html
つまり、人格のない社団等に該当する管理組合
であれば、管理組合が契約主体となる以上、
収益が管理組合に帰属するとされているものです。
(2)各区分所有者が契約者となることができるか
まず、共用部分について携帯会社と賃貸借契約をする
ということかと思いますが、共用部分の賃貸借については、
区分所有法18条1項で、集会の決議で決することとされています。
つまり、各区分所有者の集会の決議で、賃貸借をすることを
決定した上で、各区分所有者全員が契約をすること自体は
可能かと思います。
少々わかりづらいのですが、
上記の人格のない社団等に該当する管理組合と別の、
一種の各区分所有者による任意団体で決議をして、
区分所有者全員で契約をすれば、
その収益は、各個人にそれぞれ帰属するということは、
理論上可能であるとは考えられます。
(3)法務的な問題点
一方で、現実的なところをいうと、
上記の人格のない社団等に該当する管理組合が契約者となる
意味は、規約などで、各区分所有者の意見対立等があった場合にも、
契約者自体の意思決定は1つに統一されており、
どのように管理していくのかが決定するルールがある点です。
仮に人格のない社団等に該当する管理組合の契約ではない場合、
例えば、一部の者が区分所有権を譲渡したり、一部の者だけ
契約の更新をしないと主張した場合などについて
どうするのかという点などが統一されず、法務的には
問題が生じた場合の法律関係が非常に煩雑になります。
(直接の契約者が各区分所有者であるため、賃借人との
トラブルは、各所有者が直接賠償責任を負ったり
各所有者間の負担関係をどうするのかという問題も生じます。)
一方で、ここの部分を厳密に定めてしまうと、
この一種の任意団体が人格なき社団等に該当する
とされてしまうおそれがあります。
また、既存の人格のない社団等に該当する管理組合
の規約と矛盾がないか等も確認した上で、
矛盾が生じるようであれば、既存の人格ない社団等に
該当する管理組合規約なども調整しておかないと後々、
その適用関係について、どちらが優先されるのか等の
問題も生じさせるでしょう。
法務面等を考えると、小規模な建物等でない場合、
必ずしも良い方法ではないようには思います。
よろしくお願い申し上げます。