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会計監査人と監査契約

永吉先生

いつもお世話になっております。
公認会計士の●●と申します。

以下の場合にどのように対応すべきか、ご教示宜しくお願いします。

(前提)
①会社法の法定監査を受けている甲社の会計監査人に、
A氏とB氏は共同監査人として従来から選任され、
現在まで至っております。

②3月決算の会社であるため、今年の令和3年6月の定時株主総会では
別段の決議がなされなかったため、当該定時株主総会においては
再任されたものとみなされ(会社法第338条第2項)、両氏の選任登記
がなされてました。

③しかしながら、その後新年度の監査報酬の件でB氏と甲社は合意できなかったた
め、
やむを得ず従来からのA氏が会社の意向を受け入れ、単独で法定監査契約を締結しま
した。

④A氏と甲社の監査契約締結後も、甲社は再度のお願いをしていますが、
B氏から会計監査人の辞任届出を受領できない状態がつづいています。

⑤B氏は会計監査人の選任が無効であることと会計監査人の就任を拒否する旨の
通知を行う予定です。

(質問と相談事項)
1.登記上は、A氏とK氏が会計監査人として登記されているが、監査契約上は
A氏のみで契約を締結している状態になっています。
今回の定時総会の有効性、監査契約の有効性は問題ありませんでしょうか?
また、この場合、法律上の不利益(B氏が甲社又はA氏に対する賠償責任を求めるな
ど)
が発生することはないでしょうか?

2.会計監査人の任期は1年であるため、来期の定時総会で別段の決議(A氏のみ選任

B氏は選任しない決議)まで、登記と契約の相違状態を放置しておいてよいでしょう
か?
よい改善策はありますか?

3.上記の⑤の会社の対応策はありますでしょうか?

以上です。少し長くなりましたが宜しくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①

>登記上は、A氏とK氏が会計監査人として登記されているが、監査契約上は
>A氏のみで契約を締結している状態になっています。
>今回の定時総会の有効性、監査契約の有効性は問題ありませんでしょうか?
>また、この場合、法律上の不利益(B氏が甲社又はA氏に対する賠償責任を求めるな
>ど)が発生することはないでしょうか?

会計監査人の場合には、
ご指摘のとおり、会社法338条2項で、
株主総会で敢えて「再任しない」決議をしない
限り、再任されたものとみなすとされているため、
登記についても、B氏の就任承諾書などがなく、
重任登記が通っているということかと思います。
その前提で回答します。

(1)定時総会の有効性

定時総会の決議事項自体は、B氏が
再任するか否かは関係がないと考えられますので、
定時総会が無効になったり等はありません。

なお、役員等の就任における
総会の有無等は、あくまでも、会社の
意思決定として、再任するか否かであって、
それに対して、B氏が承諾し、
会計監査人になるかというのは、別の問題です。

つまり、B氏の承諾の有無が決議自体の有効性に
影響を及ぼすわけではありません。

(2)監査契約について

まず、A氏との監査契約は今期の就任について、
承認しているということですので、有効です。

一方で、B氏ですが、B氏が監査契約を締結せず、
就任を承諾していなかったということですと、
監査役の就任の意思表示がなされていないというこ
ととなりますので、有効ではないでしょう。

なお、従前の監査契約でB氏は、再任しない決議が
ない限り、継続して会計監査人となる等の合意が
あれば、従前の監査契約が生きているという状態とはなります。

>法律上の不利益(B氏が甲社又はA氏に対する賠償責任を求めるな
>ど)が発生することはないでしょうか?

上記の通りですが、
いただいた事情からすると、損害賠償等の
特段不利益などが発生することはないと思われます。

2 ご質問②

>会計監査人の任期は1年であるため、来期の定時総会で別段の決議(A氏のみ選任
>し
>B氏は選任しない決議)まで、登記と契約の相違状態を放置しておいてよいで
>しょうか?よい改善策はありますか?

登記の相違状態を放置すること自体で、
明確に問題が生じることはあまりないかと思いますが、
望ましい状態ではないとは思います。

ただ、登記実務上、任期満了での退任登記のための
典型的な添付資料は、定時総会の再任しない旨の議事録
とされているかと思います。

ご質問③と関連しますが、登記が残っている状態は、
甲社にとっても、B氏にとっても、良い状態ではない
ため(特にB氏については責任だけ生じている)、

B氏に辞任届等をもらって簡単に退任登記を済ませるか、

>⑤B氏は会計監査人の選任が無効であることと会計監査人の就任を拒否する旨の
>通知を行う予定です。

ということで、辞任ではないというところを
B氏が譲らないということであれば、
一般的な登記資料などでは
ないですが、法務局と交渉し、上申書や確認書等を
提出することで、任期満了でも退任登記を入れることが
できる可能性は高いかとは思います。
この方法の場合は、法務局と個別交渉で
どのような登記資料が必要かを詰める必要があります。

3 ご質問③

>⑤B氏は会計監査人の選任が無効であることと会計監査人の就任を拒否する旨の
>通知を行う予定です。

>3.上記の⑤の会社の対応策はありますでしょうか?

対応策が何を求めるのかという点がわかっていませんが、
甲社として、B氏に監査させるという意味ですと、
再任が有効であれ、B氏は辞任することが可能だと
思いますので、むりやり従前の金額で監査を行わせる
というは、従前の契約が相当特殊なものでない限り、
難しいものと考えられます。

>④A氏と甲社の監査契約締結後も、甲社は再度のお願いをしていますが、
>B氏から会計監査人の辞任届出を受領できない状態がつづいています。

とのことで、辞任なのか、就任の承諾をしてないのか
という点についてですが、B氏からすると、いずれの方法で
あっても、登記を外す必要性が高いと思います。
(決議が無効等の話は上述のとおり、ありません)

どうしても、辞任届出は嫌だということであれば、
法務局と交渉の上、どのような資料が期間満了のために
必要かを詰めた上で、その書面にBの確認書等が必要であれば
それをもらうという形になるかと思います。

よろしくお願い申し上げます。