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相続における前受家賃の債務控除の可否

永吉先生

いつも大変お世話になっております。
税理士の●●です。

下記につきアドバイスお願いします。

(質問)
週刊税務通信(No.3665 令和3年8月9日号)の税務相談資産税において、
藤田良一税理士が、前受家賃を役務提供債務として債務控除の対象になると
解説されていますが、各種HPや文献を見ても前受家賃の債務性を否定して
いるものしか見当たりません。

先生の見解をお聞かせ願います。

(参考HP)

相続税申告での前受家賃の取扱い。債務控除できる場合・できない場合

前受家賃は相続税の債務控除の対象とはならない


https://www.zeiken.co.jp/souzoku/jirei-01.html

(参考文献)
『専門家のための資産税実例回答集』(佐藤清勝、小林栢弘他・税務研究会)149頁 1-1-5(1)「前受地代と相続税の債務控除」
相続税の計算上、賃貸中の不動産については貸家や貸家建付地として評価し、自用の不動産に比べて低く評価されます。
相続人が相続により取得した賃貸不動産につき、被相続人が締結した賃貸借契約に基づいて賃貸借を継続しないといけない
(=藤田良一税理士が言う「役務提供債務」)という制約は、相続税の計算上、貸家や貸家建付地の評価により既に考慮されています。
これに加えて前受家賃を債務として控除すると、貸家や貸家建付地の評価減との二重の減額となり、不相当な処理になると考えます。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>週刊税務通信(No.3665 令和3年8月9日号)の税務相談資産税において、
>前受家賃を役務提供債務として債務控除の対象になると
>解説されていますが、各種HPや文献を見ても前受家賃の債務性を否定して
>いるものしか見当たりません。
>先生の見解をお聞かせ願います。

2 回答

私見としては、ご質問でいただいている
『専門家のための資産税実例回答集』と同様です。

仮に「役務提供債務」としての債務控除を認めるのであれば、
そもそも、前受家賃単体の債務控除性ではなく、
今後、貸し続けけなければならない債務の現在価値を評価し、
債務控除の対象とするという方法でなくては、
辻褄が合わないように思います。
(なぜ、前受家賃の対象の役務提供のみ、「役務提供債務」
として評価するのかという点の根拠がわかりませんでした。)

これの裏返しとして、現在の実務では、
積極財産の評価として不動産の価額の評価を低くする
という方法をとっているわけですが。

1つの考え方として、財産評価通達とは異なりますが、
不動産の価額の評価で減価せずに、
継続的な役務提供債務の現在価値を控除するというのは
あり得るかと思いますが、

不動産の価額を減価した上で、前受家賃対象の
役務提供債務のみ控除するという解釈は、基本的に難しいのでは
ないかと考えます。

よろしくお願い申し上げます。