税理士の●●です。
昨日ご回答いただきました件につきまして再度確認させてください。
遺留分の除外合意はすでに効力が発生しているものについてのみ
適用があることについては理解いたしました。
そうなると
遺言書で推定相続人以外の兄弟に株を遺贈する場合、相続発生時他の相続人から
遺留分侵害額請求が出たときは承継が困難になる可能性が出てくるということに
なりますでしょうか。
だからこそ贈与で始めた方がスムーズに行くという理解でよろしいでしょうか。
再度で申し訳ありませんがよろしくご教示ください。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>そうなると遺言書で推定相続人以外の兄弟に株を遺贈する場合、
>相続発生時他の相続人から
>遺留分侵害額請求が出たときは承継が困難になる可能性が出てくるということに
>なりますでしょうか。
>だからこそ贈与で始めた方がスムーズに行くという理解でよろしいでしょうか。
>再度で申し訳ありませんがよろしくご教示ください。
2 回答
こちらこそ、最初の段階でもう少し踏み込んで
回答しておくべきでした。失礼しました。
そうですね。遺留分の関係では、
生前贈与の方がスムーズです。
特に今回の贈与は、推定相続人以外の者への
贈与となりますので、
仮に除外合意をしなくとも、
原則として、相続開始1年前になされた贈与以外は、
遺留分の算定基礎財産の価額に加算されません(民法1044条1項前段)。
(遺贈ですと確実に加算されます。)
ただし、
「当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたとき」
とされる場合には、無制限に加算されます(民法1044条1項後段)。
この例外規定の解釈ですが、
かなり古い判例でありますが、現状でも、
大審院昭和判決11年6月17日が実務の基準
となっています。
この判例は、
==========================
①当事者双方(贈与者及び受贈者)が贈与当時、
贈与財産の価額が残存財産の価額を超えることを知り、
かつ、
②将来相続開始までに被相続人の財産に何らの変動も
ないであろうこと、少なくともその増加がないであろ
うことを予見していた
==========================
といえる場合とされています。
上記①及び②に該当する具体的な事実としては、
「贈与財産の全財産に対する割合だけではなく、
贈与の時期、贈与者の年齢、健康状態、職業などから
将来財産が増加する可能性が少ないことを認識してなされた
贈与であるか否かによるものと解すべき」とされています。
上記判例からすると、実務上、この例外に
該当する場合は、
例えば、病気の場合、かなりの高齢の場合、年金生活で、
将来財産が増加する見込みがない
ような状況ですとこれに該当することになります。
一方で、年齢等にもよりますが、
収益不動産があり収入がある等の事情があれば、
上記例外に該当する可能性はかなり低くくなります。
もちろん、この例外にあたるかは
事実認定と評価の問題になりますので、
除外合意ができるのであれば、
しておくべきかと思います。
よろしくお願い申し上げます。