いつもご教授いただきまして誠にありがとうございます。
下記、ご指導の程よろしくお願い申し上げます。
(内容)
法人甲社は法人乙社(外国法人で代表者丁)に45百万円の貸付金(返済期限:平成30年12月一括返済、当初貸付金50百万円)を有しています。
貸付金は平成29年に発生しており、平成30年と令和1年に一部返済をしています。金銭消費貸借契約書では、主たる債務者の乙社以外に第一連帯保証人丙法人(日本法人で代表者は丁)、第二連帯保証人丁、第三連帯保証人戊が連帯保証人として署名押印し、また連帯保証の優先順位は、第一連帯保証人が最優先で連帯保証し、次に第二連帯保証人、最後に第三連帯保証人が連帯保証すると記載されています。
戊は甲社の前代表取締役で、平成30年に他界しており、配偶者Aと子B,Cが相続人として戊の財産を相続しています。
戊の相続税申告では、連帯保証は顕在化していないとして債務控除はしておりません。また、戊の遺言書には、「他の一切の財産をAに相続させる。Aはその他戊が負担すべき債務を継承する」と記載があります。
今般、甲社は乙社の貸付金の返済が滞っていることもあり、丙丁とも探し出すことは困難であるとのことから、Aに対して連帯保証の履行を請求します。
Aは財産もあることから、貸付金の残額を返済する予定です。
(ご質問)
①債務は相続人が法定相続分で承継するのが原則だと思うのですが、遺言書のとおりAが全額負担しようと考えています。
この場合、AはB,Cに対して求償権の発生し、それを放棄した場合はB,CがAから贈与を受けたということになるのでしょうか?
②銀行借入を1人の相続人が承継した時の免責的債務引受のような手段で、B,Cに求償権や贈与が発生しないようにすることが可能でしょうか。
以上、ご教授のほど何卒よろしくお願い致します。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①
>①債務は相続人が法定相続分で承継するのが原則だと思うのですが、
>遺言書のとおりAが全額負担しようと考えています。
>この場合、AはB,Cに対して求償権の発生し、それを放棄した場合はB,
>CがAから贈与を受けたということになるのでしょうか?
まず、相続債務については、債権者との関係においては、
債権者の同意なき限り、法定相続分によりますが、
その内部負担割合については、別の問題となります。
求償権は、その内部負担割合に応じて発生するものとなります。
>戊の遺言書には、「他の一切の財産をAに相続させる。Aはその他戊が
>負担すべき債務を継承する」
となっておりますが、原則として、遺言により
特定の債務の負担割合の指定はできません。
ただし、以下の2つの場合には、遺言による実質的な
内部負担割合の調整が可能す。
① 遺言内容に相続分の指定が伴うと解釈できる場合(その場合、相続分の指定割合により
各相続人が債務を内部負担することになります。)
②負担付き相続させる旨(特定財産承継遺言)の遺言であると解釈できる場合(民法1002条準用)
①は、いただいた遺言全体や相続財産の価額と誰が何を取得したのか
がわかりませんのでなんとも言えませんが、
②では、本件で、遺言によってAが取得した財産が、相続債務(連帯保証債務含む)
よりも大きい場合には、有効となっているものと考えられます。
その場合、そもそも相続人間の内部負担割合
として、Aが100%となりますので、
Aから他の相続人に対する求償権は発生しないこととなります。
ですので、贈与を観念することはありません。
まずはこの点をご確認いただければと思います。
(相続債務がAが取得した財産の価額を超える場合には、
再度ご質問ください。)
2 ご質問②
>②銀行借入を1人の相続人が承継した時の免責的債務引受のような手段で、
>B,Cに求償権や贈与が発生しないようにすることが可能でしょうか。
通常の免責的債務引受の場合は、
債務の引受をした時点で、相続税法8条のみなし贈与の問題が生じます。
しかし、相続における遺産分割や遺言により
そもそもの内部負担割合が、1人の相続人にあると
された場合には、相続の問題として処理され
贈与税の問題は生じません。
一方で、仮に形式上、相続における遺産分割により
内部負担割合を設定したとしても、
当該1人の相続人が相続により取得する財産額を超える債務の負担は、
相続の枠を出ている(単なる免責的債務引受)ので、
その超えた部分に関しては、贈与税の問題が生じます。
よろしくお願い申し上げます。
ご教示いただきましてありがとうございます。
下記、遺言書の内容は、3500万円を娘さんにそれ以外は全てAに相続させるという内容なのですが、
これは、Aに対する包括遺贈と考えて、指定割合100%でAが債務を承継するという考え方になりますで
しょうか?
債務が財産の額を超えることはありません。
以上、よろしくお願い致します。
再度のご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>遺言書の内容は、3500万円を娘さんにそれ以外は全てAに相続させるという内容なのですが、
>これは、Aに対する包括遺贈と考えて、指定割合100%でAが債務を承継するという考え方にな
>りますでしょうか?
>債務が財産の額を超えることはありません。
2 回答
包括遺贈とはならないですが、
>債務が財産の額を超えることはありません。
ということですので、債務がAが取得した財産
を超えないのであれば、
負担付特定財産承継遺言として有効ですので、
Aが単独返済しても、求償権は発生せず、
贈与税の問題は生じないでしょう。
よろしくお願い申し上げます。