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金銭の借用書に関して

永吉先生

お世話になっております。
●●です。

以下のことについてお教え願います。

(前提)
1. A氏はその配偶者及び子らと金銭の借用書を交わすこととなりましたが、複数回

わたってお金を借りるため、その都度ごとの借用書を作成するということです。そ
のため交わす借用書の数が多くなります。

(質問等)
1.それらの借用書に記載するA氏の住所及び氏名についてですが、数が多くなるの

なるべく手間を省きたいということで住所は手書きでなくはなく印字という形にし

いというということですが、そのような形でもよろしいでしょうか。
2. これは上記1の形でも可能ということが前提の場合ということでしょうが、氏名

ついても出来れば印字、すなわち記名という形にしたいということですがいかかで
しょうか。
(ちなみに私は署名とすべきと考えますが)
3.印鑑は実印を押すべきと考えますがいかかでしょうか。
4.印紙についてですが、割印はその印紙代の負担者が押印すると書いてあるのを目に

ましたが、そういうことですともしA氏が全額負担した場合はA氏のみ割印を押せ

よいということとなりますが、そういうことでよろしいでしょうか。
5.それぞれ複数回にわたり借り入れた額の全額をもって一つの契約とするという形

することはできないかということなのですが、その全額というのは複数回にわたっ

借り入れた額を合計した結果の額ということで、契約としてはその時ごとに結ばれ
たと
いうのが現実あり、よって、そのようなことは現実の取引にそぐわないため不可能

あると考えますがいかがでしょうか。

上記のことに関してご教示いただきたきたく思います。
よろしくお願い致します。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜住所の印字

>1.それらの借用書に記載するA氏の住所及び氏名についてですが、数が多くなるの
>でなるべく手間を省きたいということで住所は手書きでなくはなく印字という形にし
>たいというということですが、そのような形でもよろしいでしょうか。

以下のご質問にも関連しますが、法律上は、
当事者の合意があれば、金銭の消費貸借契約が成立します。
あくまでも、借用書や契約書というのは、その証拠に過ぎません。
ですので、借用書の形式に決まりがあるわけではなく、
その形式は個別事案において、単に証明力にどれだけ
影響を及ぼすのかということになります。

現在の法律では、2段の推定といって、
印鑑に強い証明力が与えられてますので、
住所を印字にするというのはよくあることです。

もちろん、非常に細かいことをいえば、
Aが配偶者等の印鑑を利用できる環境にあり、
勝手に捺印したものだと主張された場合に
手書の方が「筆跡鑑定→配偶者等が書いたもの」であるという
反証はしやすくなります。
なお、勝手に利用されてものであることは、
その契約の効力を否定するものが立証しなくては
なりません。

個人的には、住所印字は特に問題はないかと思います。

2 ご質問②〜氏名の印字

>氏名についても出来れば印字、すなわち記名という形に
>したいということですがいかかでしょうか。
> (ちなみに私は署名とすべきと考えますが)

こちらも話としては、「1」と同様になります。

もちろん、上記のとおり、
署名にした方がリスク自体は低くはなりますので、
先生のおっしゃるとおり、
住所は印字、氏名は署名という形でも良いかと思います。

3 ご質問③〜印鑑について

>印鑑は実印を押すべきと考えますがいかかでしょうか。

そうですね。
勝手にAが借主の印鑑として利用した等と言われない
ためには、実印の方がベターです。

4 ご質問④〜印紙について

>4.印紙についてですが、割印はその印紙代の負担者が押印すると書いてあるのを目に
>しましたが、そういうことですともしA氏が全額負担した場合はA氏のみ割印を押せ
>ばよいということとなりますが、そういうことでよろしいでしょうか。

印紙の割印については、
基本的に再利用の防止という
印紙税法の要請でなされるため、
そのようなルールは特にありません。
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/06/03.htm

当事者間で、印紙をどちらが負担したかを
明確にしたいということであれば、
借用書内に記載しておけば良いと思います。

5 ご質問⑤〜複数回の借入金

>5.それぞれ複数回にわたり借り入れた額の全額をもって一つの契約とするという形
>にすることはできないかということなのですが、その全額というのは複数回にわたっ
>て借り入れた額を合計した結果の額ということで、契約としてはその時ごとに結ばれ
>たというのが現実あり、よって、そのようなことは現実の取引にそぐわないため不可能
>であると考えますがいかがでしょうか。

契約時点で、その貸付金額が決定している
のであれば、最初に総額を記載し、貸付時期を特定する
という形にしないと、貸付前に借用書を作るというのは
なかなか難しいですよね。

もちろん、何回か貸付けした後に、
まとめて準消費貸借契約書や貸付であることの
確認書を作成するという方法もありますが、

貸付時から後の書面作成までの間に、
贈与を受けたものだと言われてしまうと証拠が
ない状態なってしまいます。

特に借用書作成の目的が税務上贈与認定を受けたくない
という意味でしたら、貸付時からそのような認識で
あったことが証明できた方が良いので、
先生のご指摘のとおり、都度作成がベターだと思います。

よろしくお願い申し上げます。