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公益財団に対する寄付及び遺贈と遺留分

永吉先生

いつも大変お世話になっております。
税理士の●●です。

下記についてアドバイスをお願いします。

お子様のいらっしゃらないご夫婦(ともに80代、意思能力あり)が昨年姪を養子にしました。

夫が姪に全財産(ほとんど金融資産、約6億)を相続させるために公正証書遺言を作成しましたが、
最近になって、公益財団法人に生前に2億寄付、残りすべて(約4億円)を同公益財団法人に遺贈
(公正証書遺言の書換)することを検討しています。

上記ケースの場合(一次相続と仮定)、養子になった姪の遺留分(1/4)の対象財産はいくら(6億、4億、無し)
となりますでしょうか。

お手数をお掛けしますが、よろしくお願いします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>お子様のいらっしゃらないご夫婦(ともに80代、意思能力あり)が昨年姪を養子に
>しました。
>夫が姪に全財産(ほとんど金融資産、約6億)を相続させるために公正証書遺言を
>作成しましたが、最近になって、公益財団法人に生前に2億寄付、残りすべて(約4
>億円)を同公益財団法人に遺贈(公正証書遺言の書換)することを検討しています。

>上記ケースの場合(一次相続と仮定)、養子になった姪の遺留分(1/4)の対象財産
>はいくら(6億、4億、無し)となりますでしょうか。

2 回答

(1)法人に遺贈する4億円について

まず、法人へ遺贈する4億円は、
遺留分の算定基礎財産に加算されます。

(2)生前2億円の寄付

ア 公益財団法人への2億円の寄付から、1年以内に夫の相続が開始した場合

公益財産法人は、相続人以外の者となりますので、
原則として、2億円の寄付から1年以内に夫の相続が開始した場合に限り、
この遺留分の算定基礎財産の価額に加算されます(民法1044条1項)。
したがって、この場合には、6億円となります。

イ 当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたとき

ただし、
「当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたとき」
と評価される場合には、1年より前のものであっても、
遺留分の算定基礎財産に加算されます(民法1044条1項但書)。

本件の場合、法人に対する寄付を行う際に、
公益財団法人が、残りの財産をすべて遺贈を受けるという
ことを知っているという状況でなければ、
「双方が〜知って」とは評価できないと思いますので、
基本的にはこの例外には当たらないでしょう。

(3)まとめ

以上より、基本的には

①姪の遺留分は、4億円(遺留分の算定基礎財産)×1/2×1/2=1億円

②公益財団法人への2億円の寄付から、1年以内に夫の相続が開始した
という例外的な場合
姪の遺留分は、6億円(遺留分の算定基礎財産)×1/2×1/2=1億5000万円

となると考えていただければと良いと存じます。

よろしくお願い申し上げます。