いつも大変お世話になります。
税理士の●●です。
宜しくお願い致します。
不動産の賃貸契約の更新をしなかった場合の立退料
についてご質問をさせて頂きます。
(前提)
○ 法人Aが所有する建物の一階を店舗販売している法人Bに
賃貸している
現在、法人Bより家賃を下げて欲しいとの打診がきている。
現時点では家賃を下げていないが、状況により期間を設け
家賃を下げること検討している。
次回の更新時期まで1年位である。
(質問)
① 法人Aが次回の賃貸契約の更新を拒んだ場合は、
立退きの扱いになり立退料が発生するとの理解で良いでしょうか。
② 立退料が発生した場合、店舗での物販販売の場合は
立退料はいくら位が目安になるのでしょうか。
一般的に言われている基準や目安があれば教えて下さい。
ご回答、宜しくお願い致します。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①〜立退料の性質について
>① 法人Aが次回の賃貸契約の更新を拒んだ場合は、
>立退きの扱いになり立退料が発生するとの理解で良いでしょうか。
まず、前提として、法人Aが更新を拒んだ場合に、
法人Bから立退料の請求する権利が生じるわけではありません。
法人Aが更新拒絶をする場合には、正当事由が必要であり
(借地借家法28条)、
この正当事由を基礎付けるために、立退料の支払いが
必要となるということです。
裏を返せば、個別事情から正当事由があれば、
立退料の支払いが不要なこともありますし、
支払いがなければ正当事由が認められず、
更新拒絶は無効であり、更新されてしまうということとなります。
とはいえ、現実論としては、オーナーからの
立ち退きを求める場合、立退料の負担が
ない限りは、更新拒絶は認められないでしょう。
2 ご質問②〜金額について
>② 立退料が発生した場合、店舗での物販販売の場合は
>立退料はいくら位が目安になるのでしょうか。
>一般的に言われている基準や目安があれば教えて下さい。
立退料の適正については、最終的に裁判所が
その裁量によって自由に決定しうるものとされています
(東京高判昭和50年4月22日)。
特に居住用ではなく事業用のものは、個別事情に
依存することが多く一般的な目安という判断は
なかなか難しいものです。
(賃料の何か月分や建物価値の何%等の基準はありません。)
裁判所の傾向ですが、ある程度の正当事由がある場合には、
立ち退きによって賃借人に発生する経済的損失をベースにして、
それを調整して立退料を決めています。
実際の金額は、
地域や法人Bの業態や利用方法などに大きく依存しますが、
どのような費用が含まれてくるのかについて、以下見ていきます。
(1)移転先を確保するための費用
想定される不動産仲介手数料や権利金などですが、
これはまず含まれます。
(2)移転費用と移転先の内装工事費
こちらも想定される金額が立退料には含まれます。
(3)休業補償
移転のために休業が必要になれば
それも含まれます。
(4)賃料差額補償や営業補償
基本的に、法人Bが現状の物件にいる必要性がどの程度
高いかによってその金額が異なってきます。
例えば、店舗周辺の人が得意客等となっている場合、
同一条件の物件を借りるために差額が生じるようであれば、
その分も立退料に含まれてきますし、
一方で、現状の物件から移転すると将来の売上を維持
できないというように想定されるケースでは、
営業補償なども含まれてきます。
特に本件で、通常のオフィス賃貸等に比べて、
法人Bは、
>一階を店舗販売
しているということなので、この辺りが
高額になってくる傾向にあります。
例えば、比較的最近の飲食店の事案ですが、
老朽化しているという事情があったとしても、
ビルの居酒屋(賃料8万8457円)で、
立退料を1156万1000円と算定した事例
(東京地裁平成30年7月20日)があります。
また、老朽化した木造建物に入居するラーメン店
(賃料約14万円)で、
立退料を約1556万円とする事例(平成30年3月7日)
があります。
老朽化しているという点は、正当事由を
肯定する側に働く事情で、立退料を減額する
事情になりますので、老朽化等がなかった場合、
より高額となっていたものと考えられるものです。
飲食店ではないにせよ、「1階で店舗」をしている
ということですと、この部分が大きく影響してきます。
この辺りは、法人Bの売上や個別状況によってかなり
変動がある部分になります。
3 減額に応じるかについて
>現在、法人Bより家賃を下げて欲しいとの打診がきている。
>現時点では家賃を下げていないが、状況により期間を設け
>家賃を下げること検討している。
比較的短期間のうちに、法人Bに退去をしてもらいたい
ということであれば、基本的には家賃を
下げることはせず、法人Bからでていってもらう
というのが、対応としては無難です。