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出向負担金について

永吉先生

いつもお世話になります。

顧問先の属する業界では、しばしば会社同士で従業員の「貸し・借り」が行われます。
会社同士は関係会社ではなく、お互いに赤の他人の会社で、契約形態は出向契約です。
ある場合には出向社員の出向元での賃金と社会保険料に基づき出向料が定められますが、
ある場合には出向元での賃金額は明かされず、1日2万円と旅費その他の実費というような決め方で出向料がやり取りされます。

出向の定義として、出向について定めた法律はなく、「従業員が自己の雇用先の企業に在籍のまま、他の企業の事業所において相当長期間にわたって当該企業の業務に従事すること」といわれています。

(質問)

当社は出向者を受け入れる側の会社で、出向者が当社の現場で働くことに対して1日2万円と旅費その他の実費の出向負担金を出向元法人へ支払います。
受け入れる人の年齢、業界での賃金水準からみて1日2万円は出向元法人が当該従業員へ支払う賃金と社会保険料の合計額より多いと思われます。
ところで、建設業で作業料を1日2万円×作業日数で外注費として支払う取引はしばしばみられるところですので、
出向か外注かという問題もあると思うのですが、当事者同士が出向で合意していますので、出向として検討することとします。

出向負担金は出向者の給料等の全部または一部を負担するものであり、出向者の給与等を上回り出向元法人に利益がでることは想定されてないかのように思われますが、
出向元の賃金額と社会保険料相当額よりも高額であろう対価(実際の賃金等は不明であるが)を支払う形態であっても出向と考えてよいのかどうか、ご教示くださいますようお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>出向負担金は出向者の給料等の全部または一部を負担するものであり、
>出向者の給与等を上回り出向元法人に利益がでることは想定されてないかのように
>思われますが、
>出向元の賃金額と社会保険料相当額よりも高額であろう対価(実際の賃金等は不明で
>あるが)を支払う形態であっても出向と考えてよいのかどうか、
>ご教示くださいますようお願いいたします。

2 回答

(1)業法上の問題について

まず、ご質問の趣旨として、税務ではなく法務についての
ご質問ということであれば、
出向契約といえるかというのは本来的には意味があるものではなく、

違法な労働者派遣や供給と評価されるか否かという意味で問題となるでしょう。

○「労働者派遣」の一般論は、弊社の弁護士の以下の記載参照
https://ec-houmu.com/other/gyomuitakukeiyaku-houmutaisaku

○「労働者供給」の一般論は、弊社の弁護士の以下の記載参照
https://ec-houmu.com/other/gisousyukkou

>出向か外注かという問題もあると思うのですが、
>当事者同士が出向で合意していますので、出向として検討することとします。

ということを前提とすると、
労働者供給に該当しないかという問題となります。
https://ec-houmu.com/other/gisousyukkou

総合考慮となりますので、
一概に対価の設定のみで評価
できないこともありますが、

>出向負担金は出向者の給料等の全部または一部を負担するものであり、出向者の給与等を上>回り出向元法人に利益がでることは想定されてないかのように思われますが、
>出向元の賃金額と社会保険料相当額よりも高額であろう対価(実際の賃金等は不明である
>が)を支払う形態であっても出向と考えてよいのかどうか、ご教示くださいますようお願いい>たします。

という事情は、先生のご指摘のとおり、
違法な労働者供給を基礎付ける事情にはなり得るところです。

もちろん、業法が規制するの出向元となりますので、
受け入れる側に登録等が必要となるわけではありません。

(2)税務上の問題について

>出向か外注かという問題もあると思うのですが、
>当事者同士が出向で合意していますので、出向として検討することとします。

こちらを前提とすると、

給与負担額超過部分について、
法人税法上は、
経営指導料や出向者の特殊能力等に応ずる技術指導料などを支払うことに
合理的な理由がある場合は、超過部分も出向先法人において損金算入が
認められますが、合理的な理由が無い場合には、
寄附金として扱われるものと考えられます。

消費税に関しては、給与負担額超過部分について、
合理的な理由があれば、課税仕入れとなると存じます。

そもそも、全体として、
出向といえるのか業務委託なのか
という問題について関していうと、
実際に出向先法人と出向者に雇用契約
があるか等の事実認定と評価の問題となります。
(ただし、使用者が出向契約と認識しているのであれば、
これを覆すのは難しいと思います。
業務委託との評価は労働法の潜脱になりかねないためです。)

よろしくお願い申し上げます。