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帝国データバンクへの報告の内容について

永吉先生

いつもお世話になりありがとうございます。
●●と申します。

帝国データバンクへの情報公開について
質問をさせて頂きます。

(前提)
○ 顧問先であるA社はコロナ禍においても業績が順調であり、
過去10年間ほど毎年利益を2億~3億円ほど計上しています。

○ 帝国データバンクの調査依頼がありますが、かなり以前(10年以上前)に
決算書を提出したところ、仕事の発注者から、売値の値下げ要求があったり
したことがあり、現在は、お願いベースであるため、社長が帝国データバンクの
担当者に適当な数字(3~5千万ほどの利益である)を伝え、決算書の開示は
していません。

○ 直前期の決算においては、設備投資を数億円実行し、即時償却の計上により赤字
となりました。

○ 今年も帝国データバンクの担当者よりヒアリングの連絡があり、毎年は利益を少
なく
伝えていましたが、今回に関しては特別損失の計上により、結果として赤字申告
となりましたが、
赤字になったという事も伝えたくないため、毎年と同じくらい、若しくはトント
ン程度の決算
でしたと回答をしようとしています。

(質問)
○ A社の社長より質問があったのですが、赤字になっているが、毎年と同じく3千
万円くらいの利益、
若しくはトントン位の利益となったと回答しても、特に法務的に問題になること
はありますでしょうか。

○ 銀行や株主に対して嘘の報告をした場合は、利害関係者として不利益を与えてし
まうため、問題かと
思いますが、もともと帝国データバンクへの回答は任意ですし、真実の回答によ
り利用者相互において
一応の信用力のあるリサーチ会社が調べている情報を活用して、より良い取引を
相互において行う、安心を
担保するために利用するものなので、A社が仮に毎期の決算数値と異なる(黒で
も赤でも)回答をしたと
しても、何ら法的な責任は負わないと思っていますが、如何でしょうか。

もちろん、A社において真実の数字を伝えることで、信用力のアップや知名度の
向上などのメリットも
ありますが、それ以上に価格交渉の材料に使われてしまうことにデメリットを感
じています。

○ 今回のA社のケースとは違いますが、
もし、仮に毎期赤字で、財務体質も脆弱なB社という会社が、黒字で財務体質も
問題ないという嘘の回答を
帝国データバンクに行い、そして、その情報を信用した取引先がいたとして、支
払い遅延や、結果として
不渡り手形を渡しまったときに、帝国データバンクから、若しくは取引先からB
社が訴えられることは
ありますでしょうか。

→ 取引先が帝国データバンクを使って、B社の信用調査をしていたという事は
B社ではうかがい知れる
事ではないので、取引先からは訴えられることはないと考えましたが、帝国
データバンクには嘘の
回答をしているので少し心配な面を感じています。

宜しくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①

>○A社の社長より質問があったのですが、赤字になっているが、毎年と同じく3千
>万円くらいの利益、
>若しくはトントン位の利益となったと回答しても、特に法務的に問題になること
>はありますでしょうか。

そうですね。

事実認定と評価の問題になりますが、
基本的には、そのことをもって法的な責任を
負うというケースはあまり想定できません。

例えば、取引の相手方が取引を開始する際に、
帝国データバンクの情報があるからこそ
取引をしたいと再三、明示的に伝えられ(その証拠がある)、
ていたにも関わらず、異なることをあえて隠して
取引を行うという行為が、詐欺にあたる等というのは
理論上はあり得るところですが、

実際にはそのようなことは稀でしょうし、
実際に取引が円滑に回っていれば問題が顕在化
する可能性はほとんどないからです。

ただ、本来は任意であるが故にですが、
虚偽の情報を伝えるくらいならば、
回答しないというのが無難な対応ということにはなりますし、
信用調査により取引が可能になっている
という側面はあるかと思います。

法的な責任がないとしても、
もちろん、虚偽であることが露見すれば、
信用性評価の低下やリビテーションリスクなども
あるので、A社の属性にもよるところかと思いますが、
その点は認識しておいた方が良いかとは思います。

専門家としては積極的におすすめできるわけではないでしょう。

2 ご質問②

>帝国データバンクに行い、そして、その情報を信用した取引先がいたとして、支
>払い遅延や、結果として不渡り手形を渡しまったときに、帝国データバンクから、若しくは
>取引先からB社が訴えられることはありますでしょうか。

そもそも、支払い遅延や結果として不渡りの手形を
渡してしまった場合、取引先からB社が訴えられるとすると、
債務の支払いを請求することになると思います。

取引先から虚偽情報が不法行為にあたるとして、
訴えてくるとしても、損害賠償は「損害」を
請求できるということです。

取引先の「損害」は金銭支払い等を受けられ
なかったことですので、むしろ、契約に基づき
支払いを請求する方が直裁だからです。
(あえて虚偽情報であったことを理由に訴える
必要がないです。)

また、帝国データバンクが損害賠償を
するにしても、「損害」の発生が必要です。
帝国データバンクは、利用情報については、
内容の正確性を保証しないとして利用者に
提供していますので、具体的な損害
については、基本的に想定できないです。

先生がご心配しているとおり、
帝国データバンク利用しつつ、虚偽の情報を伝えるというのは、
上記のような(リピテーション等)リスクがあることはありますし、
積極的にお勧めできるわけではないのは上記のとおりです。

よろしくお願い申し上げます。