未分類

物品販売代金の支払いサイトについて

永吉先生

いつもお世話になっております。

物品を販売した代金の回収期間について、法律の規制等がないかを教えて
いただきたく存じます。

私の顧問先T社が販売者です。
販売先のA社は、全くの新規取引先で、資本関係や過去の取引実績等は
一切ありませんが、T社より遥かに規模の大きい会社です。

A社との取引にあたり、提示された商品代金の支払い期日が、
「毎月20日締め、翌月末から60日後払い」という今時ありえないような
長いサイトになっているのですが、このような条件でも何らかの法律に触れる
ことはないのでしょうか?

T社とA社は、下請法の適用を受けるような関係ではありませんし、
物品販売取引というのは、そもそも下請法の範疇外なのでしょうか。

T社は小規模事業者につき、下請法に準ずるような法律があれば、堂々と
条件交渉に臨めるのですが。

以上、よろしくご教示お願い申し上げます。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>A社との取引にあたり、提示された商品代金の支払い期日が、
>「毎月20日締め、翌月末から60日後払い」という今時ありえないような
>長いサイトになっているのですが、このような条件でも何らかの法律に触れる
>ことはないのでしょうか?

>T社とA社は、下請法の適用を受けるような関係ではありませんし、
>物品販売取引というのは、そもそも下請法の範疇外なのでしょうか。

>T社は小規模事業者につき、下請法に準ずるような法律があれば、堂々と
>条件交渉に臨めるのですが。

2 回答

(1)下請法について

下請法の適用がある取引であれば、
ご想定のとおり、納品から60日以内に
支払わなければなりません。

先生のご指摘の通り、一般的には、
物品販売取引というのは、下請法の対象とは
ならないケースが多いですが、

物品販売といっても、「製造委託」という
類型に当てはまるケースもあります。

ここにいう「製造委託」とは、
「事業者が他の事業者に物品(その半製品、部品、附属品、原材料およびこれらの製造に用いられる金型を含みます)の規格等を指定して製造(加工を含みます)を委託すること」
をいいます。

例えば、物品の販売という体であったとしても、
A社がユーザーに販売する商品の部品などの
T社から今回の物品を購入しており、
実質的に製造を委託している等の場合です。

つまりは、Tが誰に対しても販売している既製品
ではなく、Aのために製造して販売しているような
類型のものであれば、下請法の適用があります。

弊社の弁護士が、下請法についての
詳細を解説している記事がありますので、
以下もご参照ください。
https://ec-houmu.com/roumu/sitaukehou

(2)交渉について
>T社は小規模事業者につき、下請法に準ずるような法律があれば、堂々と
>条件交渉に臨めるのですが。

上記の下請法の適用がある類型の取引でない
限りは、残念ながら直接的に上記支払いサイトを
禁止する法律はありません。

しかし、先生のご認識の通り、

>「毎月20日締め、翌月末から60日後払い」

という条件は相当な特殊な事情が
ない限り、T社にとっては、
あまりにもひどい条件かと思います。

パワーバランスなどが気になるところは
あるでしょうが、支払サイトを変更してくれるように
正面から交渉した方が良いと存じます。

会社によっては、契約書の最初のドラフト
では、かなり自分たちに有利に作成し、
指摘を受けなければラッキーという程度の
提案を一旦はするという会社もあります。

ですので、指摘をすれば、応じてくれるケースも
よくあります。

一方で、交渉したこと自体だけで、
契約をしないという強権的な態度
の会社であれば正直、その会社と取引を
すること自体を考え直しても良いと思います。

支払サイトについて、A社がどうしても
譲らないということであれば、
A社が譲らない理由が合理的なのかや
取引額などT社の事業にとって、
そのリスクを負ってでも契約したいのか
という点をしっかり判断して、
契約の有無を決めていくこととなると思います。

よろしくお願い申し上げます。