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民事信託について

永吉先生

いつも大変お世話になっております。
いつもお忙しい中ご教授いただきましてありがとうございます。

とてもざっくりとした質問で恐縮なのですが、全盲の方が委託者、
甥を受託者とした民事信託を組成する場合のリスクと注意点について
ご教授いただきたいです。

また先生であれば、このような方には信託より任意後見をお勧め
されますか?

【概要】

委託者A : 昭和9年お生まれ・全盲
推定相続人は、夫と兄弟(甥、姪) 14人
受託者B : Aの亡き兄の長男 59歳

委託者Aは、とてもしっかりされていますが、全盲のため、金融機関
の預金の移動などにも支障をきたしている。
意思能力、判断能力には全く問題なし。
早めに信託を組成し、甥から財産を管理してもらいたい。

また、子供がいないため、自宅不動産はどちらかが亡くなった時に売却
して施設に入ることを想定している。

お忙しいと存じますが、どうぞよろしくお願い致します。

●●先生

ご質問、あリガとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜民事信託組成の注意点

>とてもざっくりとした質問で恐縮なのですが、全盲の方が委託者、
>甥を受託者とした民事信託を組成する場合のリスクと注意点について
>ご教授いただきたいです。

>委託者A : 昭和9年お生まれ・全盲
>推定相続人は、夫と兄弟(甥、姪) 14人
>受託者B : Aの亡き兄の長男 59歳
>委託者Aは、とてもしっかりされていますが、全盲のため、金融機関
>の預金の移動などにも支障をきたしている。
>意思能力、判断能力には全く問題なし。
>早めに信託を組成し、甥から財産を管理してもらいたい。
>また、子供がいないため、自宅不動産はどちらかが亡くなった時に売却
>して施設に入ることを想定している。

事案を拝見したところ、おそらく自益信託をご想定かと
思いますが、注意点としては、

>また、子供がいないため、自宅不動産はどちらかが亡くなった時に売却
>して施設に入ることを想定している。

の部分かと思います。

こちらについては、実際に将来の状況から、
受託者の判断で売却してもらうのか、

それとも、売却させる義務を負わすのか
という点です。

前者であれば、例えば、実際どちらかが
亡くなった場合の状況が、今の状況と
変わっていた場合、状況に合わせて受託者が
受益者のために適切な判断をすることが可能に
なる一方で、受託者が適切な判断をせず、
売却しない場合に希望がかなわないことがあり得ます。

一方で、後者であれば、どんな状況であれ、
受託者は、売却の義務を負うこととなる一方で、
その状況に応じた柔軟対応はできなくなります。

結局のところ、受託者となる方との関係性や
信頼度などにもよってくるところですので、
しっかりとヒアリングして決定した方が良いでしょう。

また、一般論ですが、
信託の終了事由やにその場合に財産を誰に帰属
させるのか、または受益権を誰に承継させるのかは
明確に定めておいた方が良いでしょう。
(いわゆる出口の問題)

この辺りは、財産内容にもよりますし、
委託者様のご意向によるところなので、
こちらもヒアリングをして決定します。

2 ご質問②〜任意後見か信託か

>また先生であれば、このような方には信託より任意後見をお勧め
>されますか?

まず、任意後見契約の場合は、契約は事前に行いますが、
実際に後見人となれるのは、裁判所により判断能力が
不十分な状況にあると判断された時となります。

したがって、

>意思能力、判断能力には全く問題なし。
>早めに信託を組成し、甥から財産を管理してもらいたい。

という状況ですと、
すぐに甥に財産を管理してもらいたい
というケースでは利用できません。

ですので、ご希望に沿うのは信託かと思います。

なお、現在は判断能力に問題がない
というところなので良いかと思いますが、
将来判断能力が欠如した場合にも十分に備えたい
ということでしたら、合わせて任意後見契約も
締結しておくことになるでしょう。

信託はあくまでも信託財産に関するもの
になり、身上看護等が含まれず、
Aに帰属する契約の代理等が後見人でない
とできず、問題となるケースも想定されるからです。

永吉先生

民事信託についてアドバイスいただきまして、誠にありがとうございました。

こちら、民事信託のお手伝いをすることになり、先生からアドバイスいただいたと
おり任意後見契約も締結しておく方向で進めようと考えています。

ところで、前回も遺言書作成業務について税理士法人で受けることの可否を先生に
お伺いいたしましたが、民事信託契約組成に関して、下記定款目的の①で受けること
は可能でしょうか?

それとも書類作成に関しては行政書士業務で受け、税務アドバイスについてのみ
税理士法人に外注すべきでしょうか。

=========================================
①税理士業務(税務代理、税務書類の作成、税務相談)
②税理士業務に付随して行う財務書類の作成、会計帳簿の記帳代行
その他財務に関する業務(他の法律で制限されているものを除く)
③税理士業務に付随しないで行う財務書類の作成、会計帳簿の記帳代行
その他財務に関する業務(他の法律で制限されているものを除く)
④補佐人事務の受託業務
=========================================

以上、ご指導いただきますようお願い申し上げます。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>ところで、前回も遺言書作成業務について税理士法人で受けることの可否を先生に
>お伺いいたしましたが、民事信託契約組成に関して、下記定款目的の①で受けること
>は可能でしょうか?
>それとも書類作成に関しては行政書士業務で受け、税務アドバイスについてのみ
>税理士法人に外注すべきでしょうか。

2 回答

厳密には、書類作成について行政書士法人及び
税務アドバイスについて税理士法人でというのが法的には適切です。

税務アドバイスについては、
行政書士法人から税理士法人への外注ではなく、
その部分に関しては、お客様の税理士法人が契約するというのが適切です。

つまり、
==========================
書類作成・・・行政書士法人とお客様
税務アドバイス等・・・税理士法人とお客様
==========================

で契約するということです。
(行政書士法人が税務アドバイスを受注できる
わけではないので、外注というのは法的には
おかしいことになります。)

契約書は、対象業務とどの法人が
その業務を行うかを特定して、
三者が1つの契約書に捺印するという形で構いません。

ただ、実際の実務では、税務コンサルティング
という名目で契約をして、実質的には、
組成業務のサポートをしているという税理士法人
さんの複数存在しているかと思いますが、

任意後見なども含んでいますし、
税務アドバイスの一環というのは法的には、
厳しいでしょう。

よろしくお願い申し上げます。