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数次相続について

永吉先生

いつもお世話になります。

●●です。

数次相続について教えてください。

1.前提
(1)1次相続
R2 母 他界
相続人
姉(県外に居住)
妹(母と同居)
(2)2次相続
R3 妹 他界
相続人
姉(県外に居住)
(3)依頼者の姉より
妹が同居していたので、妹が母の相続の手続きを全て行っていると思っていた。
母の土地建物も当然妹が相続していると思っていた。
ただ、実際は何の手続きもされていなかった。
(4)母の遺産分割協議書
なし

2.質問①
母の相続についてです。

(1)A司法書士
1次相続では、姉と妹の遺産分割協議書がないため、法定相続分で相続登記をするし
かない。預金とかも法定相続分で相続。
①母→1/2妹→1/2姉
②母→1/2姉
口頭で遺産分割協議が完了していたものとして、
遺産分割協議書証明書で姉に相続させることもできるが、
それは事実とは異なりますので、しない方が良いです。

(2)B司法書士
1次相続の遺産分割は未完了。
ただ、遺産分割が未完了なまま、姉は妹の法定相続分を相続している。
結果として、姉が母の相続人という立場と妹の法定相続分の相続人として立場で、母
の遺産分割を単独で完了できる。
そのため、法定相続分で相続せずに、母→姉という相続登記ができる。預金とかも同
じ。

2人の司法書士の見解が異なるのですが、どちらが正しいのでしょうか。

または、相続人の姉はA司法書士B司法書士のどちらの遺産分割の方法でも選択できる
のでしょうか。
最終的なゴールは全て姉という考えは同じですが、
選択肢があれば、小規模宅地の特例や相続登記のコスト、二次相続などいろいろな要
素は勘案して、
相続人の最も有利な方法を選択してもらおうと思っています。

もしくは、違う見解がございますでしょうか。

3.質問②
母の相続税申告書に記載する遺産分割完了の日、
遺産分割が確定した日を明確にしたいのですが、
それは妹が他界した日でよろしいでしょうか。

よろしくお願いいたします。

●●先生

お世話になっております。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜1人分割の可否について

(1)登記について

>(1)A司法書士
>1次相続では、姉と妹の遺産分割協議書がないため、法定相続分で相続登記をするし
>かない。預金とかも法定相続分で相続。
>㈰母→1/2妹→1/2姉
>㈪母→1/2姉
>口頭で遺産分割協議が完了していたものとして、
>遺産分割協議書証明書で姉に相続させることもできるが、
>それは事実とは異なりますので、しない方が良いです。

>(2)B司法書士
>1次相続の遺産分割は未完了。
>ただ、遺産分割が未完了なまま、姉は妹の法定相続分を相続している。
>結果として、姉が母の相続人という立場と妹の法定相続分の相続人として立場で、母
>の遺産分割を単独で完了できる。そのため、法定相続分で相続せずに、母→姉という相続登>記ができる。預金とかも同じ。

>2人の司法書士の見解が異なるのですが、どちらが正しいのでしょうか。

以前は、B司法書士さんの見解で登記が通っていたのですが、
遺産分割はあくまでも遺産共有の解消が目的であり、
数次相続により、母の相続について、
最終的に1人の相続人となった場合には
遺産分割が想定できないということで、
東京高裁平成26年9月30日判決によりこのような登記できない
ものとされました。

以後、登記実務上の運用も含めて、A司法書士がおっしゃっている
ことが正しいです。

(2)税務処理について

>最終的なゴールは全て姉という考えは同じですが、
>選択肢があれば、小規模宅地の特例や相続登記のコスト、二次相続などいろいろな要
>素は勘案して、
>相続人の最も有利な方法を選択してもらおうと思っています。

民事の考え方からすと、1人分割は認められないですが、
小規模宅地の特例等については、末尾に記載させて
いただいたご質問と回答が同様の趣旨でご参考になるかと存じます。

ご質問者の先生からは、
最終的に私の回答通りの対応で、
更正の請求が認められたというご報告をいただいております。

実際にご報告があった事案ですので、
実際のご相談事例と回答を見ていただいた
方が良いと思いますので、転載いたします。

2 ご質問②〜遺産分割の完了の日

>母の相続税申告書に記載する遺産分割完了の日、
>遺産分割が確定した日を明確にしたいのですが、
>それは妹が他界した日でよろしいでしょうか。

そうですね。1人に法定相続分が帰属したことにより、
分割が確定することになりますので、
先生のご理解のとおりです。

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★ご質問([law-sodankai 1203]

いつも大変お世話になっております。
表題の件について、ご教示頂ければ幸いです。

父Aの相続開始1年後に母Bが死亡しました。
第一次相続の相続人は、母Bと相談者の2名でしたが、遺産分割協議が調わなかったため、
未分割で相続税の申告納税を行っており、母Bについては配偶者の税額軽減の適用を行っておりません。

第一次相続における配偶者の税額軽減を適用(更正の請求)するためには、
相基通19の2―5のとおり「当該配偶者の取得した財産として確定」させることが必要です。

第二次相続の相続人は相談者のみの単独相続ですので、遺産分割協議書の作成を行いません。
この場合、どのような手続により「当該配偶者の取得した財産として確定」させればよろしいのでしょうか。

以上です。
どうかよろしくお願いします。

★回答[law-sodankai 1205]

ご質問ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>相基通19の2―5のとおり「当該配偶者の取得した財産として確定」させる
>ことが必要
>第二次相続の相続人は相談者のみの単独相続ですので、
>遺産分割協議書の作成を行いません。
>この場合、どのような手続により
>「当該配偶者の取得した財産として確定」
>させればよろしいのでしょうか。

2 回答

これは非常に難しい問題ですね。
誤解が生じるおそれがあるため、

理由から回答いたしますが、
ご容赦ください。

(1)通達の趣旨

そもそもこの通達は、
「当該配偶者の取得した財産として確定」できる前提の記載
となっていますが、

法律上は、母Bが死亡している以上、
その者が「取得した財産として確定」させる
ことはできません。

この通達の趣旨としては、

配偶者が遺産分割の確定により財産を取得した後に
死亡したケースに比べて、相続税の計算上著しく
不公平な結果となることを防ぐため、

政策的に国税側が納税者に有利解釈し、
遺産分割協議書の記載があれば、
このように扱うこととしているものと
ご理解いただくことになると思います。

(2)1人遺産分割の可否

そして、先生もご指摘の通り、
相続人が1名の場合には、

そもそも
遺産分割をすることができない(東京高判平成26年9月30日)
とされていますので、
法的に何か手続きがあるわけではありません。

しかし、そもそもこの通達が上記の一種の有利解釈
に基づいており、相続税の計算上著しく不公平な結果を
もたらすことを防止するという趣旨は、
今回の事例でもあてはまります。

したがって、私見としては、
財産承継確認書等(名目は何でも良いです)で、

「相談者は、父Aの相続により以下の財産を母Bが取得したことを
確認する」
・財産A
・財産B
・財産C
・財産D
・財産E
・・・

等の文書を作成して、更正の請求をする
という流れになるかと思います。

なお、1人分割を認めないという上記裁判例を受けて、
登記実務は、以下のようになっております。参考までに。
(ただ、生前に遺産分割が口頭でもされてないにも
かかわらず、されていたという記載をすることが
許されるわけではありません。)

(3)登記実務の参考例

数次相続が発生した場合の通達
(平成28年3月2日民二第154号)
http://www.toki-joho.com/2016/03/h280302min2-154.html

(現在、ネット上では公になっていないため、
他人のリンクとなります。)

概要を申し上げると、

「遺産分割は書面性が要求されていないので、
二次相続発生前に、口頭で遺産分割協議がされている場合、
遺産分割協議書がなくても、分割は有効であり、
二次相続における相続人は、その内容を証明できる
唯一の相続人であるから、当該協議の内容を明記して
二次相続人が作成した証明書は、登記原因証明情報足りうる」

ということです。

(4)まとめ

国税側としては、通達が遺産分割前提で記載
されていることを理由として、

更正の請求を認めないということもあり得る
ところかと思いますが、

そもそも法律と乖離している上記通達の運用を
このケースに限って除外するということには、
かなり強い違和感が残るところです。

もし、可能でしたら、更正の請求をした結果や
仮に拒絶された場合の拒絶理由などについて、
ご教示いただけますと大変助かります。

よろしくお願い申し上げます。

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