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顧問契約解約にあたり、解約後の契約期間内の報酬を請求された場合について

永吉先生

いつも大変お世話になっております。

基本的な質問で申し訳ございませんが、何卒宜しくお願い致します。

顧問契約解約にあたり、解約後の契約期間内の報酬を請求された場合に

ついてご教授ください。

*【前提】
*

今回、甲社はA会計事務所と顧問契約を解除して、弊事務所と顧問契約を

結ぼうと考えております。解約にあたりA会計事務所は、解約から契約

期間満了までの期間内の顧問料、給与計算報酬を甲社に請求すると言って

おります。

・顧問契約について

甲社とA会計事務所は、十数年前から顧問契約を結んでいますが、当初、

顧問契約書は無く口頭での契約でした。その後、2021年4月に、それまでに

依頼していた業務に加え、新たに給与計算業務をA会計事務所に依頼した

際に、初めて書面で顧問契約書を作成しております。

(参考)(顧問契約書 一部抜粋)

第1条 委嘱の範囲

① 甲の事業にかかる法人税、都道府県民税(所得に課せられる税金に限る。)、

市町村民税(所得に課せられる税金に限る。)、および消費税に関する税理士法

第2条第1項に定める業務のうち税務代理(不服申立を除く。)及び税務相談

② 甲の事業にかかる税理士法第2条第2項に定める会計業務についての顧問

(会計業務の業務改善に関する指導、相談を含む。)

③ 甲の事業にかかる税理士法第2条第2項に定める財務書類の作成、会計

帳簿の記帳の代行、及び、これらに付随する給与並びに社会保険に係わる業務。

第2条 契約の期間

契約の期間は、契約締結日より2年(2021年4月1日から2023年3月31日まで)とする。

第3条 顧問報酬及び決算報酬の額、支払時期及び支払方法

① 顧問報酬の額は、月額XXXX円とし、決算報酬の額は、XXXX円と

する(消費税は別途)。

② 甲の事業規模の拡大、業務内容の変化、その他経済状況の変化等があった

場合、顧問報酬、決算報酬の額は、乙の報酬規定に準拠して状況に応じ協議の

上改定するものとする。

③ 第1③の業務に係る業務委託報酬の額は、本契約書別紙に掲げる方式で

計算するものとする。

第6条 契約の更新

契約期間満了の日の3ヵ月前までに、甲または乙の一方から理由を告げて契約を

更新しない旨を相手方に通知しなかった場合には、この契約は1年更新される

ものとし、以後もまた同様とする。

第7条 契約の解除

① 甲または乙は、止むを得ない事情が生じた場合に限り、その事情を告げて

契約を解除することができる。ただし、その事情が一方の責に帰すべき事由に

よって生じたものであるときは、他方に対して損害の賠償をしなければならない。

② 前項に定める場合を除いては、甲または乙の一方的な意思表示により契約を

解除することはできない。

*【質問】*

1. 今回の解約は甲社の社長の一方的な意向によるものですが、解約に際して

何らかの違約金や、今回請求されているような契約満了までの報酬等を支払わなけ

ればならないものでしょうか?

(A会計事務所の業務対応などに特段の問題があったわけではありません)

2.顧問契約書の第7条に記載のある『損害』とは、どのようなものが想定され

ますか?

例えば、A会計事務所は2021年4月に給与計算業務を請け負った際に、それまで

甲社の使用していた給与計算ソフトからA会計事務所利用の給与ソフトへの

データの移行作業を行っておりますが、この移行作業にかかった費用も『損害』

とされるものでしょうか。

3.その他、注意すべき点がございましたら、ご教授ください。

以上、何卒宜しくお願い申し上げます。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜A会計事務所の主張の意味

>1. 今回の解約は甲社の社長の一方的な意向によるものですが、解約に際して
>何らかの違約金や、今回請求されているような契約満了までの報酬等を支払わなけ
>ればならないものでしょうか?
>(A会計事務所の業務対応などに特段の問題があったわけではありません)

直接的な違約金の定めなどはありませんが、
契約書上は、「止むを得ない事情が生じた場合」でなければ
一方的な解約ができないという規定となっています(第7条1項2項)。

>(A会計事務所の業務対応などに特段の問題があったわけではありません)

ということだとこのような事情があったわけではない
のだと思います。

もちろん、いつまでも解約できないというのは不当なので、
今回のケースだと、契約期間が2年間なので、短期である
ととらえ、それまでは契約を継続しないといけない
ということになるのか、それとも1年程度が妥当なのかという裁判を
しなければわからない状況になります。

いずれにしても、
A会計事務所が解除を認めない場合には、A会計事務所は、
業務を行う義務を負うものの、お客さんが
すぐに法的な解除できるというような状況ではないように思います。

A会計事務所としては、解除を認める代わりに、
契約期間内の報酬を払うように言っているという
ことではないでしょうか(いわゆる交渉です。)。

A会計事務所としては、解除をすれば業務を
行うことを免れるわけですので、数ヶ月分の
支払いで調整する等の交渉が必要かと思います。

なお、本件とは関係ないですが、
このような契約は税理士さんが解約することも
縛るものですので、全くおすすめはできないです。

2 ご質問②〜契約書上の損害について

>2.顧問契約書の第7条に記載のある『損害』とは、どのようなものが想定され
>ますか?
>例えば、A会計事務所は2021年4月に給与計算業務を請け負った際に、それまで
>甲社の使用していた給与計算ソフトからA会計事務所利用の給与ソフトへの
>データの移行作業を行っておりますが、この移行作業にかかった費用も『損害』
>とされるものでしょうか。

今回のA会計事務所の主張は、ご質問①のとおりですので、
そもそも第7条1項の「止むを得ない事情が生じた場合」の
解除ではないため、この条項の適用場面ではないのではないでしょうか。

こちらの費用も払わない限り、A会計事務所が
解除に応じないという主張であれば、この辺りも含めて、
交渉で調整することになるでしょう。

よろしくお願い申し上げます。