未分類

アルバイトによる過失の負担について

永吉先生

いつもお世話になっております。
●●と申します。

顧問先から相談(個人Aが相談者)があった内容ついて
以下、質問をさせて頂きます。

(前提)
○ 個人Aの長女B(中学3年生)は飲食店でアルバイトをしています。

○ 長女Bは中学生ですが、飲食店(法人経営)の代表者甲と個人Aは
兄弟のため、甲のお願い(人手不足)と、長女Bの希望からアルバイトを
していました。
※ 長女Bは甲の姪となります。

○ 先日、長女Bが配膳の際に手を滑らせて、高温のスープをこぼしてしまいまし
た。
その際に、お客さんの鞄にスープがかかってしまい、現在、弁償を求められてい
ます。

○ Bは手にやけどを負い、現在も腫れが引かない状態です。

○ 甲はB(姪)に対しても厳しく、お客さんから弁償を求められる負担金につい
て、
親である個人Aに支払いを求めると言っています。

ちなみに、甲とお客さんとの間の弁償額は話し合いとなり、現在、未確定です。

(質問)

① 高額な弁償義務の有無について
例えば、お客さんが、「この鞄は有名ブランドの100万円もしたものである」と
いわれ、
実際に購入価額が100万円相当のバックだった場合、使用後の状態を考慮し、現
在価値での
弁償となるのか、それとも再調達として100万円の弁償となるのでしょうか。

また、念のためのご質問ですが、そもそも弁償する義務はあるものなのでしょう
か。

② 代表者甲の責任と親権者としての義務について
今回、長女Bは未成年であるため、Bに責任がある場合は、個人Aが親として負
担する必要が
あるかと考えますが、そもそも、中学生(3年生)を働かせている(昼のバイ
ト)という点について
甲の責任があると考えますし、長女Bの過失も使用者の責任として、甲に責任が
あると
考えます。
一方で、長女Bも働きたいという希望はありました。

仮に質問①において、甲が店側として負担しなければいけない賠償金について、
個人Aにて負担しなければいけない根拠があるのであれば、
個人Aは負担すると言っていますが、お客さんから請求され、支払った負担額の
全額を個人Aは負担しなければいけないものでしょうか。

それとも、甲と個人Aの負担割合考えて、例えば7対3とかになるものでしょう
か。

宜しくお願い致します。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①
>① 高額な弁償義務の有無について
>例えば、お客さんが、「この鞄は有名ブランドの100万円もしたものである」と
>いわれ、実際に購入価額が100万円相当のバックだった場合、使用後の状態を
>考慮し、現
>在価値での弁償となるのか、それとも再調達として100万円の弁償となるのでしょ
>うか。
>また、念のためのご質問ですが、そもそも弁償する義務はあるものなのでしょう
>か。

この辺りは、お客さん側の情報がないとわかりません。
(弁護士の入る交渉や裁判はそれをお互いで主張しあっていくものです。)

基本的にその現在価値となります(再調達価値となる場合は例外的です)。
ただ、ブランド品の場合、むしろ既に手に入らず高騰している
というケースもありますし、実際には乾かせば再利用できるという程度のもの等
であれば、バック全体の価値が損害になるとも限りません(損害0もあり得ます)。

また、あまりに高額な場合、その行為から導かれる結果(損害)が通常予想
できる範囲ではない(因果関係の問題)として、損害があったとしても、
その全額が認められるかというとそうではありません。

2 ご質問②

>② 代表者甲の責任と親権者としての義務について
>今回、長女Bは未成年であるため、Bに責任がある場合は、個人Aが親として負
>担する必要があるかと考えますが、そもそも、
>中学生(3年生)を働かせている(昼のバイト)という点について甲の責任がある
>と考えますし、長女Bの過失も使用者の責任として、甲に責任があると考えます。
>一方で、長女Bも働きたいという希望はありました。
>仮に質問①において、甲が店側として負担しなければいけない賠償金について、
>個人Aにて負担しなければいけない根拠があるのであれば、
>個人Aは負担すると言っていますが、お客さんから請求され、支払った負担額の
>全額を個人Aは負担しなければいけないものでしょうか。
>それとも、甲と個人Aの負担割合考えて、例えば7対3とかになるものでしょう
>か。

未成年であるという点はもちろん法的に問題でありますが、
今回は15歳か16歳かという問題をなしにしても、
会社からの損害賠償は難しいでしょうね。

もちろん、民法の原則からすれば、労働者も債務不履行をすれば
会社への賠償責任を負うことにはなるのですが、

一方で、会社は従業員を雇用して利益を出す側面も
あるわけですから、様々な点が考慮されて限定的になります。
(なお、使用者責任は今回でいうと、お客さんと法人との関係の問題であり、
法人と従業員の負担割合等とは別の議論です。)

本件では、
・飲食店では、配膳等を行うため、一定程度配膳の過程で
ミスが生じることは想定されるリスクの範囲内のものであること
・飲食店経営において、高温のスープの取扱店舗であれば、
そのような状況はそもそも経営に内在し、想定すべきものであること
・Bはそもそもアルバイトに過ぎず、さらに15歳という
若年であり、店側もある程度のミス等は予測の範囲内の上で
雇用したと認定される可能性が高いこと

から、長女Bにそもそも賠償義務がないとされる可能性が
極めて高いでしょう。それを前提にすると当然親のAが責任を
負うこともありません。

よろしくお願い申し上げます。