いつも大変お世話になっております。
税理士の●●です
相続人がいない方Xが甥に全財産を相続させたいと考えています。
相続財産の大半は金融資産(約5億)のため甥も相続したいと考えて
いますが、一部相続したくない土地があります。
当該土地はXが住んでおり、生前に売却はできず、仮に相続して売却
したことを周りに知られたくない(良い財産のみ相続したと親戚に
思われたくない)と甥は考えています。
当該土地以外の財産のみを相続する方法として、甥が養子になり、
相続時精算課税贈与で当該土地以外の財産の贈与を受け、相続発生時
に相続放棄をすることは可能でしょうか。
また、上記以外で良い方法がありましたらご教授願います。
お手数をお掛けしますが、よろしくお願いします。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>相続人がいない方Xが甥に全財産を相続させたいと考えています。
>相続財産の大半は金融資産(約5億)のため甥も相続したいと考えて
>いますが、一部相続したくない土地があります。
>当該土地はXが住んでおり、生前に売却はできず、仮に相続して売却
>したことを周りに知られたくない(良い財産のみ相続したと親戚に
>思われたくない)と甥は考えています。
>当該土地以外の財産のみを相続する方法として、甥が養子になり、
>相続時精算課税贈与で当該土地以外の財産の贈与を受け、相続発生時
>に相続放棄をすることは可能でしょうか。
>また、上記以外で良い方法がありましたらご教授願います。
2 回答
(1)ご指摘の方法について
>当該土地以外の財産のみを相続する方法として、甥が養子になり、
>相続時精算課税贈与で当該土地以外の財産の贈与を受け、相続発生時
>に相続放棄をすることは可能でしょうか。
そうですね。この方法自体は可能です。
ただ、
>当該土地はXが住んでおり、生前に売却はできず、仮に相続して売却
>したことを周りに知られたくない(良い財産のみ相続したと親戚に
>思われたくない)と甥は考えています。
この目的がどういう状態になることをよしとしているのかによりますが、
あくまでも、感情的情緒的な部分ですので、
例えば、養子として生前贈与をしても、いらない財産について、甥が
(相続)放棄したという事実はかわらないので、どこまで意味がある
提案なのかという点はご確認いただいた方が良いかなと思います。
また、養子として相続人となっている以上、相続放棄をしても、
土地の管理義務を負うことになります(民法940条)し、
この義務を免れたいということになると最終的には、
家庭裁判所に相続財産管理人の選任の申立てをする等の手続きが必要になります。
(2)その他の方法
>また、上記以外で良い方法がありましたらご教授願います。
良い方法かどうかという点は、上記の目的に依存するので分かりませんが、
養子等にならずとも、特定遺贈を活用することで、土地以外の財産を
甥に「特定遺贈」する方法もあります。
この場合、「甥」は相続人ではないので、
残った土地について、管理義務等を負うことはありません。
また、(1)よりも、明確に「甥」が土地を相続することを拒否した(相続放棄した)
という事実は生じませんので、もしかすると(1)の方法より、
他の親族にいろいろ思われたくないという点には適している可能性もあります。
(3)全体として
法的な構成は別として、
>当該土地はXが住んでおり、生前に売却はできず、仮に相続して売却
>したことを周りに知られたくない(良い財産のみ相続したと親戚に
>思われたくない)と甥は考えています。
という部分は、どの構成をとったとしても、
結果として、不要な土地以外の財産を取得している以上、そのように
思われる可能性がなくなるわけでもありません。
実際に、土地を除いた財産を取得しているのは事実ですし、
それを他人がどう評価するのかはその他人次第でコントロール
できることでもありません。
上記のいずれの方法でも、
どちらがそう思われる可能性が低いかも実際にはわかりません。
最終的には、税額等を客観的な部分でいずれにするか
決めた方が良いのではないかなと個人的には思います。
よろしくお願い申し上げます。