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源泉徴収票等を郵送により交付する義務

永吉先生

いつも大変お世話になっております。
表題の件について、ご教示頂ければ幸いです。

【前提】
相談者である法人の従業員が、当該法人とのトラブルの末、
無断欠勤を経てそのまま退職しました。

相談者としては、離職票や源泉徴収票は法令上発行義務があるものなので、
いつでも交付できるように準備を整えてあります。

しかし、下記の事情から離職票や源泉徴収票を「本人が会社に取りに来れば交付する」
と連絡をしていますが、元従業員は取りに来ず郵送での発行を希望しています。
現在、所轄税務署を通じた源泉徴収票の発行依頼もされている状況です。

<事情>
・元従業員の私物などが当該法人に残置されたままであること
・当該法人の代表者が元従業員に対し個人的に貸付があること

【質問1】
相談者としては、離職票や源泉徴収票をいつでも交付できる状況ですが、
「本人が取りに来ない」ことを理由に交付していない状況です。
このような状況において「郵送による交付」に応じないことは相談者にとって
法令違反などのリスクが存在するものなのでしょうか?

【質問2】
相談者としては、貸付金等の件があるため「本人」と対話したい意向ですが、
元従業員が、弁護士などの代理人又は親族などの使者を立てた場合において
「本人ではないこと」を理由に交付を拒絶することは可能なのでしょうか?

以上です。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜郵送による交付義務について

>相談者としては、離職票や源泉徴収票をいつでも交付できる状況ですが、
>「本人が取りに来ない」ことを理由に交付していない状況です。
>このような状況において「郵送による交付」に応じないことは相談者にとって
>法令違反などのリスクが存在するものなのでしょうか?

そうですね。刑罰の実務上の適用の有無は別として、
法令上は、相談者様としては、郵送により交付する義務が
生じているものと考えられます。

なお、離職票の不交付は、一応、雇用保険法83条により、
6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という刑事罰があります。

>・元従業員の私物などが当該法人に残置されたままであること
>・当該法人の代表者が元従業員に対し個人的に貸付があること

これらの事情が、交付義務と同時履行等の関係があれば
良いのですが、これらの交付義務は、
刑罰で強制される公的な義務となりますので、
純粋な民事の請求等と同時履行の関係には立たないでしょう。

この辺りは、法令違反となることと相談者様との意向との
調整を図る必要はあるでしょうが、違法な対応であることは認識した上で
意思決定をした方が良いでしょう。
(税理士の先生としては、不交付を推奨することはできないでしょう。)

2 ご質問②〜対応について

>相談者としては、貸付金等の件があるため「本人」と対話したい意向ですが、
>元従業員が、弁護士などの代理人又は親族などの使者を立てた場合において
>「本人ではないこと」を理由に交付を拒絶することは可能なのでしょうか?

受領権限が確認できる書類(委任状等)があるのであれば、
法的に「本人ではないこと」を理由に拒絶することは難しいです。

よろしくお願い申し上げます。