●●です。
交換特例と売買予約契約書について教えてください。
兄弟間で弟のA土地と兄のB土地(持分)を等価交換して申告済とします。
B土地の方が大きいので持分で等価としたとします。
交換に係る登記費用や不動産取得税などを弟が兄の分を立て替えています。
そこで、弟は立て替えている金額のとりっぱぐれを防ぐために、兄のB土地の
残りの持分を弟が購入する土地売買予約契約書を交わしたいと相談がありました。
話を聞いてみたところ、
弟が立て替えた金額より土地の持分の方が多いため、追加支払いをしてもいいと
弟は考えていて、兄も売却していいと考えているものとします。
質問1
上記の一連の流れで土地売買予約契約を交わし、
交換特例の適用に対して、ほとぼりがすんだ2-3年後に土地の売買契約書を交わし、
実際に売買することは、すでに実現した交換特例に支障をきたすものでしょうか?
2-3年、期間をあけても否認されるものでしょうか?
交換をしたため売買予約を交わすのみで、実際に売買契約をしないことは
交換特例の適用に対して有効な行動なのでしょうか?
それが難しければ交換当事者でない弟の妻が兄から買い取るということであれば
交換と一連の話にはならないものでしょうか?
そうであるなら、そのようにしたいと思います。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3514.htm
所基通58-12では「一の資産につき、その一部分については交換とし、
他の部分については売買としているときは、法第58条の規定の適用に
ついては、当該他の部分を含めて交換があったものとし、売買代金は
交換差金等とする。」とされています。
ここで「一の資産」の判断については、「社会通念上」という考え方になると
考えますので、等価交換になる部分のみ交換するとなれば、問題が残ると
思います。
この点につき、DHCコンメンタール所得税法によると、建物の敷地の価値が
異なっているため、分筆して一部を交換、一部を売買とした場合には、所法58
の趣旨からして交換の特例は適用できない、と解説しています(4277頁)。
結果として、交換と譲渡や贈与が一体として見られるかという事実認定も
関係しますが、交換特例のため一部のみ交換するというのは極めてリスクが
大きいと考えます。と過去に相互相談会で回答をもらったことがあります。
質問2
土地売買予約契約書について教えてください。
ネットによるひな型は
予約契約時には予約保証金のみで売買代金の記載がなく、売買契約時に売買代金の記載のあるものと
予約契約書の売買代金の記載のあるひな形がありました。
これは、通常、予約契約にいつまでにという期日を設け、
売買契約がすぐにできて、金額が確定しているときは、記載し、
売買契約が時間がかかるときで、将来の時価=金額が不確定の時は、記載ができないため予約保証金
にとどめるということなのでしょうか?
質問3
下記のブログにて売買契約は
期日を設け、当事者の一方が、ある財産権を相手方に移転する意思を表示し、
相手方がその代金を支払う意思を表示し、双方の意思が合致することで成立する契約のこと(民法第555条)。
売買契約は諾成契約とされている。つまり、当事者の双方が意思を表示し、
意思が合致するだけで成立する(財産が引き渡されたときに成立するのではない)
とあるので、
いつでも一方が意思表示をして、お互いが合意すれば売買契約を交わすことができ、金額を確定し、
支払をすれば、所有権移転ができるということで合っていますでしょうか?
https://www.kouwan.metro.tokyo.lg.jp/rinkai/youkou/pdf8/joujikoubo/keiyakusho_2507.pdf
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①〜行為の一体性について
>上記の一連の流れで土地売買予約契約を交わし、
>交換特例の適用に対して、ほとぼりがすんだ2-3年後に土地の売買契約書を交わし、
>実際に売買することは、すでに実現した交換特例に支障をきたすものでしょうか?
>2-3年、期間をあけても否認されるものでしょうか?
>交換をしたため売買予約を交わすのみで、実際に売買契約をしないことは
>交換特例の適用に対して有効な行動なのでしょうか?
行為の一体性に関するものは、個別な事情や経緯から
相互の行為を社会通念上一体のものと捉えられるものなのか、
そうではないのかという事実認定及び評価の問題となります。
つまりは、行為の合理性やストーリーなどを踏まえた総合考慮となりますので、
いかに論理武装するのかという点になるかと思います。
>兄弟間で弟のA土地と兄のB土地(持分)を等価交換して申告済とします。
>B土地の方が大きいので持分で等価としたとします。
>そこで、弟は立て替えている金額のとりっぱぐれを防ぐために、兄のB土地の
>残りの持分を弟が購入する土地売買予約契約書を交わしたいと相談がありました。
>話を聞いてみたところ、
>弟が立て替えた金額より土地の持分の方が多いため、追加支払いをしてもいいと
>弟は考えていて、兄も売却していいと考えているものとします。
例えば、
>弟は立て替えている金額のとりっぱぐれを防ぐため
ということであれば、
立替金債権を確保するための売買予約(実質的担保)として、
一定期間内に立替金の支払いがなければ、兄の持分の売却を
受けその売却対価に立替金債権を充当するというものであれば、
過去の交換とは、別途の動機、経緯に基づく売買であると
認定され、行為の一体性はなく、交換特例の適用に影響は
ないとされやすくなるかと思います。
(予約完結権を弟が持つ形)
あとは、その立替金債権と担保価値(対象持分価格)が
あまりに乖離している等があると不自然である等とは
言われやすくなるので、その辺りの踏まえた上での
判断になるかと思います。
>交換特例の適用に対して、ほとぼりがすんだ2-3年後に土地の売買契約書を交わし、
>実際に売買することは、すでに実現した交換特例に支障をきたすものでしょうか?
ただ、同時(または近接)の契約ではないというケースでは、
法律行為は各別に評価するのが原則的な考え方に
なりますので、3年経過後ということであれば、
一体性の立証は国側でということとなりますので、
国側からするとハードルはかなり高いと思いますね。
例えば、交換「当時」に、一緒に売買をする意思があり、
交換特例の適用のために、売買予約等含めてスキーム設計が
されていたというような証拠を国側が持っていないという
ことであれば、その立証はかなり厳しいのではないかと思います。
売買予約は仮装であり、実態として本来交換当時に残持分の
支配権等が移転してた等の認定までできなければ難しいでしょう。
2 ご質問②〜売買予約契約書について
>土地売買予約契約書について教えてください。
>ネットによるひな型は
>予約契約時には予約保証金のみで売買代金の記載がなく、売買契約時に売買代金の記載のあ>るものと
>予約契約書の売買代金の記載のあるひな形がありました。
>これは、通常、予約契約にいつまでにという期日を設け、
>売買契約がすぐにできて、金額が確定しているときは、記載し、
>売買契約が時間がかかるときで、将来の時価=金額が不確定の時は、記載ができないため予>約保証金にとどめるということなのでしょうか?
正直、売買予約等について、雛形に汎用的な意味はありません。
その目的や当事者の意向などによって作成すべき内容が大きく異なりますので。
適切に売買の予約となる内容になっており、
上記のような担保目的のものなのか、そうではないのか等によって、
内容は様々ですね。
予約保証金を定めると、ご質問①との関係では、
予約保証金の支払時期が交換と近くなるでしょうから、
相対的には、実質的に一体性のある行為なんだと
認定されやすくはなるかなとは思います(決定的な事情とは
言えませんので、一要素にすぎません。)
3 ご質問③〜売買について
>売買契約は諾成契約とされている。つまり、当事者の双方が意思を表示し、
>意思が合致するだけで成立する(財産が引き渡されたときに成立するのではない)
>とあるので、いつでも一方が意思表示をして、お互いが合意すれば売買契約を交わすことが
>でき、金額を確定し、支払をすれば、所有権移転ができるということで合っていますで
>しょうか?
そうですね。民事上の売買契約は、
当事者が合意をすればよく、その理解であっております。
よろしくお願い申し上げます。