お世話になります。
●●です。
組合形式の持株会についてご教示ください。
大変申し訳ありませんが、急いでおります。
現在、民法667条の規定に基づく組合で持株会を検討している株式会社(A社)があ
ります。
A社発行済株数24万株(資本金2400万円)のうち、28000株を持株会に移転する計画
です。
放出する現在の株主は、A社の社長(4000株)とA社自身が保有する自己株(2万
株)で、
持株会に移転する価格は1株100円としています。
(原則的評価額は1株600円程です。)
予定する構成員としては7名いるのですが、うち1名は取締役に就任したため、
従業員持株会に24000株、役員1名に4000株を割り振る予定とのことです。
会社としては上記の28000株について種類株にすることは考えておらず、
普通株のまま実行することを考えているのですが、
このような場合の問題点や実行する際の注意点がありましたらご教示ください。
なお、現在のところ、次の書類が準備されています。
・持株会規約(民法第667条第1項の規定に基づく組合とする内容)
・持株会設立契約書(会員の拠出金でA社普通株式への共同投資事業を行うことに関
する契約)
・発起人会兼設立総会議事録(持株会に関する規約の制定と、理事・理事長・監事の
選任)
・持株会設立に関するA社の取締役会議事録
・A社の株式譲渡承認に関する取締役会議事録
・A社に対する株式名義書換請求書
以上、どうぞ宜しくお願い致します。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>現在、民法667条の規定に基づく組合で持株会を検討している株式会社(A
>社)があります。
>A社発行済株数24万株(資本金2400万円)のうち、28000株を持株会に移転
>する計画です。
>放出する現在の株主は、A社の社長(4000株)とA社自身が保有する自己株>(2万株)で、
>持株会に移転する価格は1株100円としています。
>(原則的評価額は1株600円程です。)
>予定する構成員としては7名いるのですが、うち1名は取締役に就任したた
>め、従業員持株会に24000株、役員1名に4000株を割り振る予定とのことで
>す。
>会社としては上記の28000株について種類株にすることは考えておらず、
>普通株のまま実行することを考えているのですが、
>このような場合の問題点や実行する際の注意点がありましたらご教示くだ
>さい。
2 回答
(1)株式の価額について
社長から持株会への移転については、
個人→個人となりますので、みなし譲渡(所得税)の問題
は生じませんし、譲受側で特例評価で可能ということであれば、
みなし贈与に関しても問題ないでしょう。
一方で、自己株式を移転させるというのは、
持株会に自己株式の処分を行うということかと存じます。
自己株式の処分は、募集株式の発行と同様となります。
以下の有利発行の課税についても考慮が必要となる
こともあります。
(既存の支配株主に法人がいる場合以外には、特段問題とは
ならないものも思いますが)。
おそらくご質問の趣旨とはずれるかと思いますので、
以下、関連するU R Lのご紹介に留めます。
https://www.sozeishiryokan.or.jp/award/027/z_pdf/ronbun_h30_09.pdf
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/92/04/04.pdf
(2)組合型の持株会設立の注意点
持株会の設立の目的等やどのようにしたいのかによって、
規約の作り込み等は必要かと思いますので、
個別コンサルなしでは難しいですが、
私の経験上、一般的な持株会が作った
場合に問題となっているポイントを回答します。
(基本的に書籍などには掲載されていないので、私の
経験に基づくものを含みます。)
① 少数株主権について
組合型の従業員持株会の場合、
従業員持株会の組合財産となっている株式は、
各組合員の共有となっています。
以下は、一般的な少数株主のリスクと同様ですが、
いただいた持株数からすると10%以上、
持株会が保有していることになるわけなので、
少数株主権自体は、当然保有することになります。
そうすると、会社の帳簿等の
閲覧・謄写請求をされた場合、
従業員らにも帳簿内容等を開示しなければ
ならなくなるおそれはあります。
②一部退社した者の処理について
また、種類株式を活用しない組合型持株会の場合、
一部の従業員さんが退社した場合、持株会が
一定額で買い取るというような規約となっている
ケースが多いかと思います。
その持分を買取る資金をどのように
するのかは決めておいた方が良いでしょう。
新たに財産を拠出する者がいれば、
その者の持分が増えるというのは良いのですが、
例えば、新たに拠出者がいなかった場合、
どのように対応するかです。
実務的にそのようなケースでは、会社が持株会に
資金を貸付けを行い、その金銭で持株会が一旦買い取る
というようなものが散見されます。
この場合、退社した授業員の株式について、
宙に浮いた状態として、残会員の持分は変動しないというような
前提で配当等を処理しているケースもありますが、
法的には従業員持株会が取得した時点で組合財産となり、
残会員の共有持分が発生します。
ですので、新たな拠出者が現れない場合に、
どうするのかという点は規約等で
定めておいた方が良いでしょう。
また、その場合には、退職者の持分に相当する
株式数について会社が持株会から買取る等の契約を会社
持株会間でしておくというもの1つでしょう。
③ 組合型授業員持株会の出口について
最後に、種類株式を活用しないケースの場合、
上記の通り、持株会が退職した従業員から
株式を一定額で買い取る旨の規定が設けられている
ことが多いのですが、
例えば、総組合員の同意や組合員が1名となった場合
には、組合の解散事由となりますが、
この場合、組合財産である株式をどうするのかという点を
取り決めておくことも重要かと思います。
最終的に持株会がなくなる場合については
いくらで誰がいくらで買取るのかが交渉次第等となります。
退職の際に持株会が一定金額で買い取る点について、組合内部の
取り決めがあっても、持株会がなくなる際に、その株式を
組合の外部(多くは会社または大株主)の者がいくらで
買い取るのかについては規定の対象外となっていることも
多いです。
可能であれば、持株会の解散等を取得事由として、
持株会の取得価額で会社が強制的に買取りができる
種類株式(取得条項付き株式)にしておくことが
ベターですが、
それが難しいということであれば、
せめて会社(または大株主)と持株会間で
契約くらいはしておいた方が良いでしょう。
4 必要資料について
>なお、現在のところ、次の書類が準備されています。
>・持株会規約(民法第667条第1項の規定に基づく組合とする内容)
>・持株会設立契約書(会員の拠出金でA社普通株式への共同投資事業を行うことに関
>する契約)
>・発起人会兼設立総会議事録(持株会に関する規約の制定と、理事・理事長・監事の
>選任)
>・持株会設立に関するA社の取締役会議事録
>・A社の株式譲渡承認に関する取締役会議事録
>・A社に対する株式名義書換請求書
上述のとおり、自己株式の処分は、
会社法上、募集株式の発行等と整理され、
新株発行と同様の手続きが必要となりますので、
そちらも準備する形となるでしょう。
よろしくお願い申し上げます。