いつも大変お世話になっております。
●●と申します。
誠にお恥ずかしい相談となり、また明確な
根拠などはないかと思っているのですが
ご相談をさせて下さい。
(前提条件)
○ 法人A(完全親法人)は法人Bを完全子会社とするため株式交換を行いました。
○ 株式交換を行った際に、法人Aにて増加する株主資本の額において、資本金、
資本準備金、その他資本剰余金に任意に配分するのですが、
その他資本剰余金に配分するためには、債権者保護手続きを行わない
限り、その他資本剰余金に配分することは認められていません
(計規39②但し書き)。
○ 組織再編・資本等取引の会計と税務(清文社:2017年8月発行 佐藤信佑)
この著書のP32においても、会計上、株式交換により増加する株主資本を
資本金及び資本準備金のままにすると会計上と税務上の仕訳金額の相違により、
住民税の均等割が高くなることがあるため注意を要することが書かれて
あります。
○ 株式交換当時において、税務上の処理(旧株主の帳簿価額)による仕訳を行い、
会計上の金額にて仕訳を計上していませんでした。
しかも、間違って、子会社株式/その他資本剰余金(正しくは資本準備金)とい
う
仕訳を計上したため、
現在、毎期の均等割の納付が過少(※)になっていることが判明しました。
※均等割は資本金+資本準備金により判定する要素があるため。
・ 税務上の資本準備金の計上額2000万円
・ 会計上の資本準備金の計上金額10億円
○ 現在、2つの間違った処理(一つは会計上ではなく、税務上の金額になっている
こと、二つは、資本準備金の科目ではなく、その他資本剰余金としている)が継続し
て
います。
○ 結果、株式交換時の手続きを調べられると、均等割がかなり高くなり、修正を
求められる状況です。
よって、この状況を是正するため
正しくは資本準備金ですが、現在、間違っているその他資本剰余金の科目を
「正式」に、その他資本剰余金とするため、債権者保護手続きを行い、準備金の
取崩の手続きを検討しています。
(質問)
質問1
準備金の取崩しについて、債権者保護手続きとして公告手続きを行う予定をしていま
す。
その際に、会計上の資本準備金の額(10億円)を掲載し、全額を取り崩すことを
掲載する選択と
税務上の資本準備金の額(2千万円)を掲載し、全額を取り崩す事を掲載する
公告のどちらにするかを検討しています。
会社法上、債権者保護手続き(会社法799条)として、公告という「手続き」が
重要であるとと考えれば、掲載金額が会計上でも税務上の金額でも問題ないのでは
とも考えましたが、
一方で、公告に掲載される取り崩される金額を確認して債権者が異議の
有無を考えるのであれば、取り崩される「金額」に意味があると考えています。
悩んでいるのは、会計上の金額を掲載したときには10億円という、かなり
インパクトのある数字になるため、なるべく目立たないよう2千万という
掲載により債権者保護手続きをしたいと考えていますが、この場合、
2千万円しか資本準備金からその他資本剰余金に振り替えていないと
評価されると、均等割が高いままとなってしまいます。
それとも、「全額を取り崩す」と記載しているのだから、税務上の金額での
表示であっても、資本準備金は全額がその他資本剰余金になっていると
評価されるのであれば、税務上の金額で公告をすることで問題ないのでは
とも考えています。
実際に裁判などになってみないと分からないとも思っており、
また公告を府県税事務所や市役所が確認する可能性などを考えた場合、
どちらでもいいのではないかとも思っている面もあるのですが、
永吉先生の感覚的なご見解でも結構ですので、ご回答を頂ければ幸いです。
質問2
クライアントから賠償を求められた場合、税理士賠償保険の対象になると
考えられますでしょうか。
一応、幹事である保険会社に確認したところ、正式回答ではないですが
事前税務相談の補償事例になると思われるとのことでした。
誠にお恥ずかしいご相談ですが、
ご見解を伺えれば幸いです。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①〜債権者保護手続きについて
>準備金の取崩しについて、債権者保護手続きとして公告手続きを行う予定をしてい
>ます。
>その際に、会計上の資本準備金の額(10億円)を掲載し、全額を取り崩すことを
>掲載する選択と
>税務上の資本準備金の額(2千万円)を掲載し、全額を取り崩す事を掲載する
>公告のどちらにするかを検討しています。
>悩んでいるのは、会計上の金額を掲載したときには10億円という、かなり
>インパクトのある数字になるため、なるべく目立たないよう2千万という
>掲載により債権者保護手続きをしたいと考えていますが、この場合、
>2千万円しか資本準備金からその他資本剰余金に振り替えていないと
>評価されると、均等割が高いままとなってしまいます。
まず、会社法上の適法な債権者保護手続きを考えると、
債権者が「いくら」の金額を資本準備金から取り崩すのかが
大きなポイント(この金額なら異議を述べる、述べないと
判断できる状態にある必要がある)になりますので、
2000万円を基準にするというのは、債権者保護手続きが
されていない状態と同じと考えていただいた方が良いでしょう。
(裁判になればほぼ確実にそのように認定されるでしょう。)
>実際に裁判などになってみないと分からないとも思っており、
>また公告を府県税事務所や市役所が確認する可能性などを考えた場合、
>どちらでもいいのではないかとも思っている面もあるのですが、
確かに誰も問題視しなければ、何も問題にならない
という意味ではおっしゃることはわかるのですが、
そうであれば、債権保護手続きをしない場合とあまり
変わりませんし、今後の会社の行為(自己株式の取得や配当等)の
分配可能金額等にも影響を及ぼしますので、
今後常に会社についてまわる問題になってしまうかとは思います
ので、個人的には法律を遵守し、10億円基準でした方が良いように思います。
2 ご質問②〜事前相談特約について
>クライアントから賠償を求められた場合、税理士賠償保険の対象になると
>考えられますでしょうか。
>一応、幹事である保険会社に確認したところ、正式回答ではないですが
>事前税務相談の補償事例になると思われるとのことでした。
そうですね。どの損害に関してという点はありますが、
例えば、株式交換の際に、準備金の取り崩しをアドバイス
していれば、均等割が低くなった(現在前提にしている金額)
にも関わらず、そのアドバイスを失念していたため、
均等割が高くなったという点に関して、その差額については、
事前相談特約の対象となります。
もちろん、そもそも税理士の先生の責任があると認定できる
場合に限られますが、保険会社としっかり交渉できれば、
認められるでしょうし、先生の責任ではないとされる
のであれば、むしろ先生がクライアントに賠償をする
必要はないといっているということになります。
保険会社が先生の責任ではないといって、交渉段階
では、保険金を払わないとしても、
クライアントが裁判を起こし、先生の責任である
と裁判所が判断すれば保険会社は保険金を支払う
義務が生じます。
気をつける点は、先生の判断のみで賠償金を支払って
しまうと、クライアントには支払ったけども、
保険は下りないというケースもありますので、
賠償をする場合には、保険会社とも交渉しつつ、
進めてください。
なお、「延滞金」という意味であれば、
その点は、免責事由になりますので保険の対象とは
なりません。
よろしくお願い申し上げます。