初めて質問させていただきます。
税理士の●●と申します。
次の件、ご教示いただきますようお願い致します。
【概要】
被相続人 : A
相続人 : B(妹) C(弟) 代襲相続人: D、E(姉の子2人)
Aの自筆証書遺言がありました。
Aには子がなく、兄弟が相続人です。
Aの遺言書は、密封されておらず、Bに封筒に入れたものを預けておりました。
内容は、次のようになります。
Aのものは全て実妹 Bへ相続します。
実弟Cへの相続は、Aに一任します。
D、Eについては全く触れられていませんでした。
今、検認申立中ですが、Bの意向としては、Cに3割相続してもらいD、Eには判子
大程度の100万円を渡したいようです。
今後の処理について、確認させてください。
【疑問点】
➀ BからD、Eに渡す100万円については、遺言書に触れられていないため、
Bからの贈与として処理し、申告は不要でよいのか。
➁ Cへの配分は、Aからの相続と考えてよいのか。
また、この配分を決めるにあたり
遺産分割協議書が必要になってしまうのか。(つまりD、Eから署名をもらう必要
があるのか)
以上、お忙しいと存じますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①〜贈与と評価して良いのか?
○遺言の内容
>Aのものは全て実妹 Bへ相続します。
>実弟Cへの相続は、Aに一任します。
>D、Eについては全く触れられていませんでした。
上記のうち以下の部分は、
>実弟Cへの相続は、Aに一任します。
実際の遺言は、
「実弟Cへの相続は、Bに一任します。」という
形でよろしかったでしょうか。その前提で
回答します(本当に被相続人であるAと記載が
ある場合は再度ご質問いただければと思います)。
○ご希望
>今、検認申立中ですが、Bの意向としては、Cに3割相続してもらいD、Eには判子
>大程度の100万円を渡したいようです。
>➀ BからD、Eに渡す100万円については、遺言書に触れられていないため、
>Bからの贈与として処理し、申告は不要でよいのか。
そうですね。おっしゃるとおり、遺言ではD、Eには
一切財産が承継されない形になっておりますし、
兄弟姉妹ですので遺留分の問題もありませんので、
一旦Aが相続で財産を取得後、その財産の一部を
D、Eに渡す形として、
先生のご指摘の贈与との処理で問題ないです。
(基礎控除の範囲内であれば、贈与税は生じないという意味です。
なお、遺言と異なる遺産分割という方法も贈与税の問題が
生じるのであれば検討にあがるでしょう。)
2 ご質問②〜Cへの配分について
>Cへの配分は、Aからの相続と考えてよいのか。
>また、この配分を決めるにあたり
>遺産分割協議書が必要になってしまうのか。(つまりD、Eから署名をもらう必要
>があるのか)
確かに以下の遺言を形式的にみると、
Bへ全ての財産を相続させているにも関わらず、
Cへの相続はBへ一任とされていることから、
矛盾していますね、
>Aのものは全て実妹 Bへ相続します。
>実弟Cへの相続は、Bに一任します。
(質問事項のAをBと変換しています。)
ただ、遺言の解釈の問題となりますが、
遺言の解釈の問題は、裁判所も、
遺言書に表明されている遺言者の意思を
尊重して合理的にその趣旨を解釈すべきであるが、
可能な限り有効となるように解釈すべき(最高裁平成5年1月19日)
や遺言書の全記載との関連や作成当時の事情や置かれた
状況から遺言者の真意を探究し、趣旨を確定すべきである
(最高裁平成17年7月22日)とされています。
上記の遺言を見る限りでは、その趣旨を解釈すると、
>実弟Cへの相続は、Bに一任します。
というのは、疑義はありますが、
実務上は、民法908条の遺産分割方法の指定
及び民法902条1項の相続分の指定の委託と評価し、
相続の問題として扱って良いようには思います。
もちろん、このような遺言となってしまっている以上、
Cの財産の取得が贈与であるとされるリスクが
0ではないですが、税理士の先生としては、
疑義がある旨は伝えた上で、最終的に意思決定
してもらうという形になるかと存じます。
なお、このような曖昧な遺言のケースでは、登記などを
通す際に、法務局との交渉などが必要となるケースも
多いです。ご依頼される司法書士さんの力量にもよるところに
なりますが、登記周り等で、何か問題があればまたご相談ください。
以下も疑義がある部分ではあるものの、
遺言の内容からD,Eには相続分がないことは明らか
ですので、「相続分がない者を含めずに行われた遺産分割も
有効であると解すべきである」(潮見佳男・「詳解相続法」弘文堂261頁)
との有力な説もありますので、BとCのみで遺産分割をして、
登記を通す交渉をする方法もあるかと存じます。
よろしくお願い申し上げます。