いつも、お世話になります。
税理士の●●と申します。
下記件につきアドバイスお願いします。
(質問事項)
①反社チェック自体は義務ではないという認識でいるのですが、反社チェックをしていないという事実だけで、経営者が利害関係者から善管注意義務違反の責任を問われることがあるのでしょうか。 取締役の善管注意義務の中に反社チェックが含まれる場合、結果的に反社チェックは義務ということになるのでしょうか。 会社に損害が生じた場合に、反社チェックをしていないことに関して、経営者が責任を追及される可能性があるということでしょうか。
②反社チェックをした上で、反社会的勢力ではないと判断した取引先等が、結果的に反社会的勢力だった場合、 暴力団排除条例違反として罰則を科されることはあるのでしょうか。
③その他、営業活動や採用活動における反社チェックに関しまして、中小企業や税理士事務所に推奨される方法がございましたら教えて頂きたいです。
以上3点です。宜しくお願い致します。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①〜反社チェックと善管注意義務違反
>①反社チェック自体は義務ではないという認識でいるのですが、
>反社チェックをしていないという事実だけで、経営者が利害関係者から
>善管注意義務違反の責任を問われることがあるのでしょうか。
>取締役の善管注意義務の中に反社チェックが含まれる場合、
>結果的に反社チェックは義務ということになるのでしょうか。
>会社に損害が生じた場合に、反社チェックをしていないことに関して、経営者が責任
>を追及される可能性があるということでしょうか。
会社規模等の相対的な話になり恐縮ですが、
ある程度以上の規模の株式会社の取締役は、善管注意義務
として、事業規模、特性等に応じた内部統制システムを構築し、
運用する義務があると解されていますので、
その一内容として、全く反社チェックをする体制を
整えていないことが善管注意義務違反となりえます。
実際に個別の損害について、損害賠償が認められるかという点
については、
その会社の規模等から勘案して、求められるべき
体制を構築をしていれば、実際に防止できていたのか否か
という点がポイントとなります。
ですので、結果として反社であったとしても、
巧妙に隠されており、上記の体制を整えていた
としても、発見できないようなケースでは個別の
賠償責任は負わない一方で、
調査をしていればすぐに発覚したであろう
ケースの場合は、責任を負う可能性が高くなります。
>経営者が責任を追及される可能性があるということでしょうか
ということであれば、可能性はあるということになります。
2 ご質問②〜暴排条例と刑罰
>②反社チェックをした上で、反社会的勢力ではないと判断した取引先等が、結果的に反
>社会的勢力だった場合、暴力団排除条例違反として罰則を科されることはあるのでしょうか。
ご想定の罰則は、利益供与関係に関する刑事罰かと
思いますが、条例の規制対象となる利益供与は、
暴力団の威力を利用することの対償として行われる場合、
暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなることを知って行われる場合(第24条第3項)に限定されます。
なので、「結果的に反社会的勢力だった」という場合には、
罰則を科されることはないでしょう。
以下の警視庁のサイトも参考になりますので、
必要があればご参照ください。
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kurashi/anzen/tsuiho/haijo_seitei/haijo_q_a.html
3 ご質問③〜反社チェックの方法
>その他、営業活動や採用活動における反社チェックに関しまして、
>中小企業や税理士事務所に推奨される方法がございましたら教えて頂きたいです。
一旦の標準的な反社チェックの方法としては、
①契約上の反社条項についての相手の対応
契約書や誓約書などに反社条項を入れた契約書案を渡した場合の相手の回避や変更依頼があるか。
②データベース等でのスクリーニング
取引先等に関するインターネット上の情報や日経テレコン等の新聞社の記事データベースの検索で、怪しい情報はないかスクリーニング
例:名前と「暴力団, 反社, ヤクザ, 総会屋, 検挙, 釈放, 送検, 捜査, 捜索, 指名手配, 逮捕, 摘発, 訴訟, 違反, 容疑,
不正, 処分, 疑い, 詐欺, インサイダー, 相場操縦, 株価操縦, 暗躍, 闇, ヤミ, グレー, 漏えい, 申告漏れ, 脱税,
課徴金, 追徴金, 行政処分, 行政指導」などのキーワードで検索することなど
(最近では、この辺りの情報を反社チェック向けにデータベース化しているところもありますので、コストによっては、検討しても良いでしょう。
https://alarmbox.jp/blog/?p=8274)
③登記情報の確認
真実存在する企業なのか、役員とされるものが本当に役員なのか、
役員がころころと変わっている会社でないか等を確認するために登記情報を取得する。
https://www1.touki.or.jp/
などが一般的かと思います。
ここまでであれば、文字にすると大変そうですが、
そもそも、取引相手の選別はすると思うので、それと
合わせて行えば良いというレベル感で落とし込めるかと
思います。
上記から怪しさが残る場合で、それでも取引の
実行を検討したいという場合には、
さらに強度を挙げていき、業界団体などへの問い合わせや
オフイスの現地確認などを経て、専門調査機関への調査委託、
暴対法に基づく警察への属性照会などに移っていきます。
なお、反社チェックも重要ですが、全体の対策
としては、結果として反社であった場合に、
・無催告で契約を解除できる条項を契約書に入れておく(暴排条項)
・有事の場合の相談先を設けておく(弁護士。何かありましたら弊社にすぐにご連絡ください。)
なども重要です。
法務省が出している
「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」及び解説
も参考になりますので、必要に応じてご参照ください。
http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji_keiji42.html
よろしくお願い申し上げます。