税理士賠償責任 その他

顧問契約解除と申告義務

永吉先生

いつもお世話になっております。
税理士の●●です。

顧問契約の解除についてご教示をお願いできればと思います。

永吉先生作成の契約書で顧問契約を結んでいる顧問先があります。

この会社は5月決算7月申告期限の会社ですが、
2021.4.30に顧問先より2021.5.31で顧問契約を終了したい旨のメールがありました。

私は毎期税理士が変更するくらい癖のある会社なので顧問契約終了に異論はないので、
数日後に了解した旨と永吉先生作成の顧問契約終了の覚書をメールで送りました。

ところが数日後この顧問先の紹介者に顧問先から、
1.税理士の方から一方的に契約解除を言われた
2.契約終了は2021.5.31だが2021.7.31期限の申告書の作成はしてほしい
と言われたそうです。

その後、再度メールで覚書を送付ましたが返答がありません。

1.今回のケースの場合、顧問契約が終了しても申告書を作成する義務があるのでしょ
うか。
2.覚書を返信しないことについて、内容証明など何かしらの対応をした方が良いでし
ょうか。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜申告書作成義務について

>今回のケースの場合、顧問契約が終了しても申告書を作成する義務が
>あるのでしょうか。

顧問契約書の中に、月次の業務及び
申告書の作成業務についても記載されている
という前提かと思います。

>2021.4.30に顧問先より2021.5.31で顧問契約を
>終了したい旨のメールがありました。

この解約が、月次業務のみの解約であり、
申告業務の解約は含まないのだというのが
先方の主張なのかもしれません。

しかし、顧問契約書記載の契約を
2021年5月31日付けで解除する旨の
先方からの通知があり、それに対して、
先生が了承した旨送っているのであれば、
申告業務についても行う必要はないものと
解釈して問題ないでしょう。

>数日後に了解した旨と永吉先生作成の顧問契約終了の覚書をメールで送りました。
>その後、再度メールで覚書を送付ましたが返答がありません。

注意点としては、覚書の
返信をしていないため、
まだ正式に合意解約はされていないとの
主張をしてくるおそれがありますので、

申告業務を行わないことを優先事項として
あげるのであれば、
以下のような記載のメールを送っておくとより安全でしょう。

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覚書の締結の件、ご返信いただいておりませんが、
締結の有無に関わらず、
御社からの2021年4月30日の契約解除の通知に対して、
当方から、2021年●月●日に承諾した旨返信しておりますので、
2021年5月31日で御社と当方の契約は終了しております。

つきましては、令和3年5月期における申告業務
に関する契約も解消されておりますので、
御社の方で、新しい税理士を探す等の対応をお願い申し上げます。
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2 ご質問②〜覚書の締結について
>2.覚書を返信しないことについて、内容証明など何かしらの対応をした方が
>良いでょうか。

覚書に関しては、通常の解約の際にできればもらって
おいた方が良いものにはなりますが、先方が締結する
義務を負っているわけではありません(あくまでも合意です)。
(将来の紛争予防のためにもらえるとベターというものです。)

今回のケースでは、この覚書の締結の過程(修正過程)で、
まだ解約の条件が詰まっておらず、解約の効果は発生しない
旨の主張などをされるのは面倒な点がありますし、申告業務を
行っていないということであれば、リスク等も高くはありませんので、

料金をもらっても、申告業務を行いたくないという前提であれば、
上記のメールを送っておくという対応までに
止めておいた方が良いのではないかと存じます。

よろしくお願い申し上げます。