労働法

辞めてもらい従業員の退職届日付と人員確保までの期間までの退職留保

永吉先生

お世話になります。●●です

以下の案件ご教示ください。

前提

辞めてもらいたい従業員Yに退職届を書かせたい

本人は書くことを了承している

但しYの次の人員確保ができていない(現在募集中)

次の人員が確保でき次第Yには辞めてほしい

質問

①Yに退職日の記載がない退職届を書かせ、人員確保後に辞めてもらうことは可能か?

②上記①が可能な場合どのような記載方法が望ましいか?

③上記①が無理な場合の代替案はあるか?

④上記①が可能な場合に退職届提出後にYが約束を破り人員確保前に出勤しなくなった場合に罰則はあるか?

⑤その他気を付けることはあるか?

以上です。

宜しくお願いいたします。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜退職日の記載がない退職届について

>①Yに退職日の記載がない退職届を書かせ、
>人員確保後に辞めてもらうことは可能か?
>②上記①が可能な場合どのような記載方法が望ましいか?

退職届というは、基本的に提出を受けた日に
その効果生じますが、単純に退職日の記載がないものを
うけとり、その後にもYが通常通り、働いていた(給与も
払っていた)とすると、
いつの時点で退職するのかが明確でない以上、
Yが翻意した場合に、やめさせるということが難しい状況になります。

ですので、あまりおすすめしません。

2 ご質問②〜代替案について

>上記①が無理な場合の代替案はあるか?

他の方法としては、一方的な退職届ではなく、
会社とYの退職合意書を作成して、

○Yの申出に基づき、会社とYが退職を合意したこと
○Yは、会社が後任の従業員を新たに雇用するまでは、
継続して、会社の業務に従事すること

を定める方法などがあるかとは思います。

ただし、ご存知のとおり、労働法は、労働者保護の
ために、労働者に有利に解釈されるもので、
このような会社にタイミングを委ねるような
合意書が、Yが翻意した場合に、有効な
ものとして扱われるかというと、
かなり微妙なところかと思います。

労働法の建前からすると、
会社の人員確保は、基本的に会社の責任(リスク)で
行うべきものだからです。

>辞めてもらいたい従業員Yに退職届を書かせたい
という点と

>次の人員が確保でき次第Yには辞めてほしい
という点のバランスでどちらを重視するかになりますが、

確定的な退職日自体にバッファーを持たせて
今、退職届を出してもらうことが一番良い方法だと
思いますね。

例えば、Yに1ヶ月後を退職日とする退職届出を提出
してもらうことや退職合意書を締結することです。

「1ヶ月」の部分をある程度、採用が
できるという見込みの期間を設定して、

仮に採用ができない場合のリスクや
その期間中に採用ができたにも関わらず、
Yを雇用していなければならないこと自体は、
経営者である以上、引き受ける必要があるかと
思います。

3 ご質問③〜その他

>上記①が可能な場合に退職届提出後にYが約束を破り人員確保前に
>出勤しなくなった場合に罰則はあるか?

上記の無効となるリスクのある方法をとっても、
具体的な業務内容にも多少影響を受けますが、
基本的に、損害賠償などはできません。

違約金の合意などをすることも考えられますが、
労働者に一方的な不利な条項として無効とされる
可能性が高い上、労基署にいかれかねません。

>その他気を付けることはあるか?

従業員Yが辞めさせたい理由にも
よりますが、基本的に
会社から一方的に辞めさせることは困難です。

現在、Yに辞める意思があるのであれば、
上記のとおり、一定期間後に辞めてもらう
ことを前提とし、その期間内に会社の責任
として、人員確保に務めるという方法が良いと思います。

退職日を空欄にする等の曖昧な?対応は、
Yが翻意等すれば、結局会社を苦しめることに
なってしまいますので。

よろしくお願い申し上げます。