いつもお世話になりありがとうございます。
●●と申します。
初めて経験をする事例でもあり、初歩的な質問になっているかも
しれませんが、宜しくお願いいたします。
(前提)
○ 法人Aは以前から建設業を営んでいます。
○ 今回、コロナ禍で下火になった観光産業が将来復活することを視野に入れて
和歌山県においてリゾートホテル(建築費2億円)を建築し事業を行う事を計画しました。
○ 当初は法人Aにて建設し、Aだけの事業として宿泊業を営んでいく予定でした
が、この事業計画に興味を持った法人Aの取引先や関係者、法人Aの社長の友人など
が1口1000万円で出資をしたいという事になりました。
○ 建築する不動産を共有とするのか、当該宿泊事業を行う新会社を設立し、その新
会社の株主となって貰うかなどの検討をした結果、法人Aが主となり、事業を運営する
こともあって匿名組合契約という契約を締結し、営業者を法人A、出資者を取引先や知人な
ど、法人及び個人が出資者となる形態を考えています。
○ 法人Aは匿名組合契約の営業者という立場もありますが、建築資金の一部を匿名
組合契約の出資者として拠出します。
○ 全体の出資総額2億円のうち、法人Aが4割ほど、他の者(法人及び個人)が6割
ほど出資します。
(質問)
○ 今回のケースにおいて、全体の出資額(2億円)のうち、一部を法人Aが拠出す
るため、匿名組合契約の営業者と出資者が同一者(法人A)となる予定です。
この様な匿名組合契約は可能なのでしょうか?
質問の内容をお伝えする文言が下手くそですが、
法人Aは営業者として宿泊事業の管理や業務を行い、
当該役務提供の支払う対価を匿名組合事業の経費(以下、(a)とする)として
計上しますが、この(a)は、法人Aの匿名組合事業に係る営業者の役務提供収入(a)とし
て、普通に法人Aの通常の事業である建設業の損益と合算され、
そして、上記の営業者の役務提供費用(a)も差し引いた後の宿泊事業の利益を
各組合員に分配し、法人Aは、(a)という収入と、匿名組合事業から受ける分配の利益の合計が法
人Aの課税所得となり、法人税が課税されると理解しています。
法人Aが営業者としての立場のみであれば、(a)の収入だけが売上(収益)に
なると思われますが、今回は営業者でもあり、出資者との両者の立場を有しているの
で、そのような匿名組合契約が締結できるのかを疑問に思っています。
○ 上記の質問と重なりますが、例えば、匿名組合契約を締結した時点で、
法人Aは営業者として別個の人格として扱われ、リゾートホテル事業だけの収支を計算し、法人税の申
告を本業の建設業としての毎期の申告書とは「別に」作成をしなければいけないという事ではなく、
つまりは、匿名組合契約の営業者としての対価(業務フィー(a))は本業の建設業の利益と合算して、
毎期の申告と同じく申告する(だけ)と理解していますが、間違っていませんでしょうか。
宜しくお願いいたします。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>今回のケースにおいて、全体の出資額(2億円)のうち、一部を法人Aが拠出す
>るため、匿名組合契約の営業者と出資者が同一者(法人A)となる予定です。
>この様な匿名組合契約は可能なのでしょうか?
2 回答
匿名組合契約は、営業者と匿名組合員(投資家)の契約(当事者双方の
権利義務等を発生させるもの)になるため、同人格で契約するということはできません。
(例えば、A法人がA法人と業務委託契約をしても
何も意味がない(別人格を前提とする「契約」ではない)
のと同様です。)
ですので、A法人を営業者として、
ご質問の事例を実現したいとすると
現物不動産をA法人が保有しつつ、
収益のうち一部を分配するという契約を匿名組合員とする
ということになるかと思います(この方法の場合、
財産の混同等のリスクが高いので、
作り込みは相当入念に行うこととなります。)。
また、この方法の場合、A法人は、
「不動産特定共同事業者」
となりますので、不動産特定共同事業法上の許可を得る
必要があります。
その場合、課税関係は、法基通14-1-3の通りとなります。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/14/14_01_01.htm
ですので、先生のご指摘の通り、
>本業の建設業としての毎期の申告書とは「別に」作成をしなければいけないとい
>う事ではなく、
>毎期の申告と同じく申告する(だけ)と理解しています
ということになります。
なお、営業者のフィーについては、匿名組合契約の
内容でどう調整するかということになるかと思います。
不動産について、様々なスキームがありますが、個人的には、
今回のケースでは、倒産隔離等が明確になりますし、
別法人を立ち上げた上でそこを営業者として行った方
が許認可のハードル等も低いのではないかなとも思います。
(そして、A社が営業者から不動産管理等の委託を受ける。)
各スキームの概要や各手法の許認可等については、少々情報が
古いところがありますが、国土交通省のページ内にある
以下のものが全体概要を掴む上では参考になります。
https://www.mlit.go.jp/common/001204998.pdf
このような不動産投資スキームは、
業法などが非常複雑かつリスクが高いところですので、
税務申告のみに携わる場合は別として、組成に関しては必ず、
その道のプロに依頼されることをお勧めします。
(信託受益権等を利用したスキームも考えられますが、
金商法等の規制があります。)
よろしくお願い申し上げます。