いつも大変お世話になっております。
法人の代表取締役に未成年者が就任する場合の問題等についてご教授ください。
【前提】
・医療法人の理事長Aが、いわゆるMS法人を設立
・MS法人の株主は医療法人の理事長Aと、理事長の妻である医療法人の理事Bの二人
・MS法人は設立と同時に銀行から1億円を借り入れ(Aが個人保証)し、1億の土地建物を取得
・MS法人所有の土地を医療法人の従業員用駐車場として医療法人に賃貸予定(適正額)
・MS法人の代表にBが就任しようとしたが県の医療整備課から、理事を辞任する
必要があると言われ、AとBの長男CをMS法人の代表にできないかと相談された
・Cは現在高校三年生(18歳)であり、来年、医科大に進学予定
【質問】
医療整備課には、適正額である旨を伝えましたが、答えは案の定のものでした。
Bが医療法人の理事を辞任することが出来ず、他にMS法人の代表になるような人もいないので、
Cを代表に、ということになりました。
Cが実際にMS法人の運営をするのであれば問題もないのかもしれませんが、実際の契約等は
全てAが単独で行うことになるかと思います。
こういった場合に、現在高校生のCを代表にすることに問題はないのでしょうか。
いきなり1億の借り入れがある法人ということもあり、ちょっと気にかかっています。
基本的、かつ、抽象的な質問で申し訳ございませんが、問題や注意すべき点がございましたら
ご教授ください。
どうぞ宜しくお願い致します。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>医療整備課には、適正額である旨を伝えましたが、答えは案の定のもので
>した。
>Bが医療法人の理事を辞任することが出来ず、
>他にMS法人の代表になるような人もいないので、Cを代表に、ということにな>りました。
>Cが実際にMS法人の運営をするのであれば問題もないのかもしれませんが
>、実際の契約等は
>全てAが単独で行うことになるかと思います。
>こういった場合に、現在高校生のCを代表にすることに問題はないのでしょ
>うか。
2 回答
(1)未成年者が代表取締役になること自体について
そうですね。
未成年者でも親権者の同意の下、
代表取締役に就任すること自体は可能です。
MS法人が医療法人としか基本的に契約しない
ということですと、契約関係等については問題は生じることは
あまりないでしょう。
一方で、
>いきなり1億の借り入れがある法人ということもあり、ちょっと気にかかっています。
とのことですが、代表者の個人保証もついている
ということであると、稀ではありますが、代表者
変更に伴い期限の利益喪失する(つまり、そのような場合には、
すぐに全額を返還させることができるようにする)というような
条項が入っている場合や代表取締役の変更に伴いへの保証人の追加・変更が
必要であり、それをしないと期限の利益を喪失するというような
条項が入っていることがありますので、注意が必要かと思います。
また、未成年者が代表取締役等になった場合にも期限の利益を
喪失するような条項が入っているケースもありますので、
借入の契約書は注意してみた方が良いとは思います。
(なお、現在18歳ということですので、民法改正で
来年4月1日には成人となることとなります。)
もし入っていても、
土地・建物を取得ということなので、
抵当などが入っている関係もあるので、
銀行に事前に事情を説明すれば同意を得られることも
十分考えられます。
(2)医療法関連の指導との関係
医療法人の理事の兼任については、
特段法律上の定めがあるわけでなく、
非営利性の潜脱防止という監督的な観点が強いものです。
(つまりは実質審査)
http://www.yamaguchi.med.or.jp/images/medical/medical/scan-225.pdf
上記の事務連絡Q2にも同趣旨の記載がありますが、
形式的に理事の兼任ではなくとも、
未成年の子が就任し、
>実際の契約等は
>全てAが単独で行うことになるかと思います。
ということだと、実質的には、
AやBが営利企業の取締役へ就任してはならない
趣旨自体は、Cが就任しても同様の問題はあるのですよね。
もちろん、形式的に違う人とすることで、
文句を言われにくくするという効果自体はあるのかも
しれませんが、本質的にはあまり意味のある行為では
ありません。
私自身は、明確な法令などがないにも関わらず、
このような一律の指導があること自体について、
疑問を日頃から感じています。
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/dl/midashi_shinkyu120330b.pdf
こちらの医療機関の開設者の確認及び非営利性の確認について
でも、非営利性に影響を及ぼさないような
ケースの場合には、例外的に認める前提で作られてはいます。
個人的には、対価の金額が適正であることの根拠
資料があるのであれば、せめてCが成人するまでは
非営利性を害するような賃貸ではないとして、
医療整備課の言っていることを突っぱねても良いのでは
ないかとは思っています。
ただ、実際のお医者様からすれば、
この辺りで、国の意見に反することを
したくないというお気持ちが強い方も多いと
思いますし、
形式的にでもCを代表にするという方法を
借入等の関係で問題でないのであれば、
実行すること自体を否定することもできない
かなというところです。
よろしくお願い申し上げます。