いつも大変お世話になっております。
表題の件についてご教示頂ければ幸いです。
<前提>
相談者は不動産賃貸業を営んでいます。
令和1年夏
税務署より、入居者の滞納国税について敷金を差し押さえる旨の通知がありました
令和2年12月
入居者が退去しました
令和3年1月
敷金が差し押さえられていることを失念し、原状回復費用を差し引いた上で
入居者に対し敷金の返金を行ってしまいました
令和3年3月
税務署より、差し押さえた敷金について納付を求められています
<ご相談>
この場合、原状回復費用を差し引いた入居者への返金額を国に納める義務は
免れないと思いますが、納付した金額は入居者に誤って返金してしまったものなので、
入居者へ請求することが可能という理解で正しいでしょうか。
入居者から回収できない金額が多額に及ぶ場合、納付義務を履行できないことが
考えられますが、相談者はどのような不利益を生ずることになるのでしょうか。
また、なんらかの救済措置があればご教示頂ければ幸いです。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①〜誤って返金した敷金について
>この場合、原状回復費用を差し引いた入居者への返金額を国に納める義務は
>免れないと思いますが、納付した金額は入居者に誤って返金してしまった
>ものなので、入居者へ請求することが可能という理解で正しいでしょうか。
ご指摘のとおり、
返還請求をすることが法的には可能です。
ただし、未回収リスクは返金してしまった相談者様が
負担することになります。
2 ご質問②〜救済措置等について
>入居者から回収できない金額が多額に及ぶ場合、納付義務を履行できない
>ことが考えられますが、相談者はどのような不利益を生ずることになるのでしょうか。
>また、なんらかの救済措置があればご教示頂ければ幸いです。
回収ができるか否かに関わらず、
相談者さまは、国税に支払義務を負います。
わかりやすい不利益は、遅延損害金(明渡時から)の発生
でしょうか。入居者と特別の合意がなければ、年3分です。
(一般的には、差押通知書にその旨の記載がある場合となりますが)。
あとは、任意に支払いをえず、取立訴訟などがなされれば、
それに応訴するコストや訴訟が確定すると相談者様の
財産まで差押えられるリスクはあります。
適法に差押がなされている以上、
法的な救済措置などがあるわけではありません。
(2重払いを防ぐために、あくまでも第三債務者である相談者に対して、
差押通知が届く制度設計になっていまして、それを
失念したというのはあくまでも第三債務者の責任
であるという建付です。)
国税に伝えて、納税義務者(入居者)から徴収するように
頼んだ上で、徴収の上、差押を解除してもらう
ように伝える等もあるのかもしれませんが、
法的に主張できることではありません。
よろしくお願い申し上げます。