いつも大変お世話になっております。
表題の件、義務の承継関係や消滅時効についてご教示頂ければ幸いです。
(事例)
先代税理士(親族ではありません)が死亡し、先代事務所の業務を承継しましたが、
先代税理士が行った申告内容に誤り(更正の請求ができない過大申告)を発見したため、
お客様にお詫びと説明をする必要が生じております。
(質問1)
私は税理士職業賠償責任を承継し、賠償義務を負うことになるのでしょうか。
それとも、先代税理士の相続人(税理士ではありません)が賠償義務を負うのでしょうか。
(質問2)
先代税理士は申告当時、税理士職業賠償責任保険に加入しておりましたが、
保険請求を行うことは出来るのでしょうか。
なお、私は税理士職業賠償責任保険に継続加入しております。
(質問3)
事業承継があった場合の税理士職業賠償責任の消滅時効(起算点の考え方など)は
どのように考えたら良いのでしょうか。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①〜損害賠償責任の承継について
>(質問1)
>私は税理士職業賠償責任を承継し、賠償義務を負うことになるのでしょ
>うか。
>それとも、先代税理士の相続人(税理士ではありません)が賠償義務を負
>うのでしょうか。
法的には事業譲渡に伴う債務の承継の話になると存じますが、
先代と後継者に承継の合意があり、かつ債権者の承諾なく自動的に移転することはありません。
ですので、原則的には引継いだ税理士の先生ではなく、相続人が負うこととなります。
ただ、例えば、事業の承継を受けた税理士の先生が、
権利関係の一切を引き継ぐ旨、お客様に通知し、
それに異議なくお客様との契約関係を継続した場合に、
その時点の一切の債務を承継し、事実経緯から承諾が
あったものと認定される可能性もなくはないので、
依頼者との承継の経緯を確認する必要はあるかとは思います。
(それでも、かなり厳しい構成となりますが)
また、それとは別に屋号を続用した場合等には
引き継いだ税理士の先生が別途責任を負う場合も
ありますが、個人の税理士の先生の場合、
税理士法との関係で、あまり考えられないかと思いますので、
詳細は割愛します。
2 ご質問②〜先代税理士の税賠保険の適用について〜
>先代税理士は申告当時、税理士職業賠償責任保険に加入しておりましたが、
>保険請求を行うことは出来るのでしょうか。
>なお、私は税理士職業賠償責任保険に継続加入しております。
原則として、税賠保険の「事故日」は、
依頼者から請求があった日とされますので、
請求された日が保険期間中でない場合には
対象となりません。
ただし、一定の要件を満たす場合には、例外的に請求可能です。
今回のケースでいうと、
先代が税理士登録を抹消したことによる終了で、かつ
その保険期間の末日まで税賠保険に加入して
いた場合には、契約終了後10年以内に損害賠償請求
されたものについては対象となります。
おそらく、例外の適用がある事例なのではないかと
思います。
なお、抹消日がいつなのか定かではないので、
上記は現在の税賠保険の仕組みを前提としております。
上記は税理士法人ではなかった前提での
話ですので、仮に先代が税理士法人の社員
であったケースなどの場合には、その旨
ご指摘ください。
3 ご質問③〜消滅時効
>事業承継があった場合の税理士職業賠償責任の消滅時効(起算点の考え方など)は
>どのように考えたら良いのでしょうか。
基本的には、先代税理士が誤った申告をした
日から10年と考えていただければと思います。
確かに、事業譲渡があった時点で、債務の承認が
あり、そこから新たに10年の進行を開始する
ということも考えられますが、
先生がその債務を認識していたわけではないので、
そのような認定にはならないものと考えます。
(仮に、引き継いだ税理士の先生が責任を負うというケースの場合ですが。)
経緯やミスの内容等についての詳細は
お伺いできておりませんので、
もし、必要があれば、事前に資料等を
個別にご共有いただいた上で、会員様の無料相談(zoom等可)
のご利用もご検討くださいませ。
よろしくお願い申し上げます。