お世話になります。
●●と申します。
標記の件につきまして、ご教示ください。
顧問先である司法書士さんからの質問のため、このMLの趣旨にそぐわなければ、
その旨ご指摘ください。
(前提)
○ 結婚年月不明
○ 平成11年7月 居住用マンションを3000万円で購入、名義は夫妻で各2分
の1
○ 住宅ローン抵当権設定額が夫単独債務者で1800万円のため、残りの1200
万円を頭金と想像。
夫の話しでは夫妻で各2分の1負担したとのことと。
(持分とお金の比率が合いませんが、贈与税の課税時効完成と考えております)
○ 平成21年協議離婚、ただし、離婚協議書は作成していない模様
○ 令和元年8月住宅ローン完済
(質問)
【1】この物件をこのたび、12年前の離婚に伴う財産分与として元妻の持分を夫に
移転しようと考えておりますが、
民法上では離婚から相当な年数が経過しても財産分与として取り扱われるのでしょう
か。
また、そのような相当な年数経過後の財産分与というものは、永吉先生の周りでは良
くある、あるいはよく耳にされることなのでしょうか。
【2】税法上では、離婚との因果関係が薄ければ贈与税課税の可能性も無きにしも非
ずと思いますが、
離婚協議書がない場合、疎明する申述書のようなものは用意しておくべきでしょう
か。
(税金の話しで恐縮ですが)
よろしくお願い申し上げます。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①〜財産分与の期間
>【1】この物件をこのたび、12年前の離婚に伴う財産分与として
>元妻の持分を夫に移転しようと考えておりますが、
>民法上では離婚から相当な年数が経過しても財産分与として取り扱われる
>のでしょうか。
>また、そのような相当な年数経過後の財産分与というものは、
>永吉先生の周りでは良くある、あるいはよく耳にされることなので
>しょうか。
財産分与請求の除斥期間は離婚時から2年と説明されます。
ただし、民事上は、この2年の除斥期間は、協議がまとまらなかった
場合及び協議ができない場合に離婚当事者が裁判所に財産分与を請求
できる期間なので、民事上は、合意がまとまるのであれば、財産分与という名目であっても
特に問題はありません(極論、民事上の問題だけでしたら、所有権を移転する
合意があれば良いですしね)。
12年後の財産分与が
よくある話かというと、よくある話では
ないと思います。
2 ご質問②〜税務との関係
>【2】税法上では、離婚との因果関係が薄ければ贈与税課税の可能性も
>無きにしも非ずと思いますが、離婚協議書がない場合、
>疎明する申述書のようなものは用意しておくべきでしょうか。
>(税金の話しで恐縮ですが)
離婚の事実自体は、戸籍(除籍含む)で証明することが
可能ですので、そちらを利用すれば良いのではないかと思います。
そもそも、税法の話を厳密にすれば、
本件で、単純に不動産の持分を移転するだけという
ことであれば、みなし贈与の話も含めれば、
そもそも財産分与であろうがなかろうが、
上記のとおり、妻は分与に応じる義務がないにも関わらず、
行っているので、条文上は、贈与税の対象とすることは
可能であるのではないかと思います。
(なお、いただいた情報からは明らかでありませんが、
夫がローンの主債務者であって、妻の持分部分までの
支払いをしていたことに関する合意などによっては、
それが対価とされることもあるとは思います。)
ただ、実務上の運用としては、
離婚に基づく財産分与ということであれば、
そこまでするかというとされていないように思いますが、
今回は、12年と期間がかなり長期なので、一応注意が必要
かとは思います。
なお、期間の問題とは異なりますが、
そもそも財産分与は、基本的には
両当事者の婚姻関係の破綻時の財産(消極財産を含む)
で、どれだけの分与義務があるのかが異なってきます。
これを無視した財産分与をする場合、理論上は、
贈与税の問題が生じることになります。
こちらも、よっぽどのことでなければ、実務上は
あまり考慮されていないところはあると思いますが、
12年前となるとそもそもの分与義務を考慮をせずに、
贈与を財産分与形式としただけでは?という
疑いはもたれやすいのかと思いましたので、一応、補足させて
いただきました。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4414.htm
ただ、おそらく破綻当時、ローンが夫のマイナス財産となるので、
その点も考慮されているのかとも思いますので、分与義務自体は
特に問題がないのかもしれませんね。
(全体の財産がわからないとなんとも言えないところですが。)
よろしくお願い申し上げます。