いつも大変お世話になっております。
令和2年より顧問契約を締結している個人事業主の顧問先についてのご質問です。
令和2年分の会計資料について、顧問先からの資料提供が遅いことによる顧問契約解除や極端な話、今年の申告自体もお断りする。というようなことは可能なのでしょうか。
その顧問先には、毎月、前月分の資料提供をお願いしているのですが、顧問先の都合で先延ばしにされていまして、令和3年2月の初めにやっと現金の領収書が送られてきました。
その際、2月28日までにすべての資料を頂くよう、お願いし、その時は了承していただいたのですが、その後も延び延びとなっています。
送付された現金の領収書については、幣所の方で仕訳入力は完了しているのですが、残りの通帳やクレジットカード等の資料についてが、まだ未了です。
現金の領収書以外は、顧問先の希望により、全てデータでの受け渡しとなっており、幣所の指定するクラウドサービスを利用して、データを入れていただいています。
データについては、令和2年分のフォルダの中に、「1月分」「2月分」・・・と月毎のフォルダが分かれており、さらに月ごとのフォルダの中に、「通帳」「クレジット明細」などと、分類ごとに細かくフォルダが分かれているため、幣所で会計処理を開始している月(又は終了している月)のデータを、その後に顧問先がいつの間にか追加でアップロードしてしまうと、気付かず、計上漏れとなってしまう恐れがあるため、顧問先には、データのアップロードが完了してからでないと、幣所で作業が開始出来ない旨を以前から何度も伝えてあります。
その後も資料の提供について、何度も催促をしていますが、今日現在、まだデータアップロード中とのことでしたので、顧問先には「これ以上遅くなりますと、期限内に申告が間に合わうか分からない状態です」とお伝えしました。
そうすると、「これ以上とは、何月何日か。そんな話は初めて聞いた」といったような連絡が来ました。
顧問契約書には、「資料の提供及び責任」として、
「甲は、乙から資料等の請求があった場合には、乙に対して、資料等を速やかに提出しなければならない。甲からの資料等の提出がないとき又は提出時期が乙の正確な業務遂行に要する期間を経過した後であるときは、それに基づく不利益は甲において負担する。」と記載していますが、具体的な日付までは契約書には記載していません。
私の中では、2月28日が期限内に申告を行う上での一つの期限だったのですが、本人もその日までに資料を用意する。と言っていたましたので、その際に、その期限を過ぎた場合に申告期限に間に合わない可能性があることは伝えていませんでした。
このような状況下で、正直、その方の申告自体もお断りしたい気持ちになってしまったのですが、それが可能なのかや、仮に今年の申告を引き受ける場合に、もし期限内に申告が間に合わなかった場合に、どこまでが幣所の責任となってしまうのか。目安のようなものがあれば教えていただけないでしょうか。
その顧問先については、その他にも、色々と思うところがありまして・・・
もう一つ、ご質問があります。
幣所の顧問料については、毎月、口座振替で支払って頂いており、領収書の発行は今まで行っていませんでした。
顧問契約書に「銀行振り込み明細書をもって領収書の発行に代える」といった取り決めを行っていなかったため、過去の領収書については、依頼があれば発行しなければならないのかと思うのですが、未来について、領収書を発行しないで済む方法はないでしょうか。
請求書については、毎月、発行しています。
ある顧問先で、過去にさかのぼって毎月の領収書を依頼されています。
恐らく、今後も毎月欲しいと思っていると思いますが、事務手続きを考えますと、毎月発行はなるべくは行いたくない。と思っています。
今後、幣所で新たに顧問契約を締結する場合には、必ず契約書に「銀行振り込み明細書をもって領収書の発行に代える」と記載しようとは思っています。
現金で受領する場合には、今後も領収書を発行するつもりですが、振込や口座振替の場合に、スムーズに領収書発行をしない方向へ移行できるためのお知恵をお借りでききないでしょうか。
お忙しいところ恐れ入ります。
よろしくお願いいたします。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①〜顧問契約の解約について
>正直、その方の申告自体もお断りしたい気持ちになってしまったのですが、
>それが可能なのかや、
>仮に今年の申告を引き受ける場合に、
>もし期限内に申告が間に合わなかった場合に、どこまでが幣所の責任と
>なってしまうのか。目安のようなものがあれば教えていただけないでしょう
>か。
(1)申告自体を断ることについて
ア 法的なお話
そうですね。申告自体の解約についての
根拠となり得るのは、①委任についての将来解約と
資料不提出に伴う債務不履行に基づく解除という
方法があります。
委任の一方的な解約の場合、「不利な時期」
との判定を受けると損害が生じた場合に損害を賠償
する義務を負いますので、申告期限まで1ヶ月を切って
いる状況ですと、少々リスクが高いです。
ただ、この場合でも、「正当な事由」があれば、
損害賠償責任を負わないものとされます。
一方で、債務不履行解除の場合には、資料提出
について、催告(●●までに資料を提出するように)が必要と
なります。
>2月28日までにすべての資料を頂くよう、お願いし、
>その時は了承していただいたのですが、その後も延び延びとなっています。
ということなので、事実としては催告が認められるのでしょうが、
どのような文脈であったのかやメールなどで証拠が残っているのか
という点が問題になります。
イ 実務対応
実務対応として、どうしても解約したいという場合には、
上記の「正当な事由」や催告の証拠資料となることなどから、
質問に記載された作業が開始できない理由を再三伝えたこと
や2月28日までに提出をお願いしてご了承いただいた
にも関わらず、提出がされていないことを記載した上で、
例えば、1週間以内にアップロードが確認できない場合には、
申告業務はできませんので、契約を解除させていただく旨
通知する方法が無難な対応ということとなります。
(仮に私自身の問題であれば、一定のリスク込みで
期限を設けずに解約通知を送ることもあると思いますが、
無難な対応は上記かと思います。)
(2)期限後申告の責任について
>私の中では、2月28日が期限内に申告を行う上での一つの期限だったのですが、本人もその日>までに資料を用意する。と言っていたましたので、その際に、その期限を過ぎた場合に申告期>限に間に合わない可能性があることは伝えていませんでした。
ここは微妙なところですが、
最終的に裁判まで行って、2月28日までに
提出を要求していた証拠関係などにも依存しますが、
3月19日時点で、これまで再三の伝えているにも関わらず、
でていないという状態が立証できれば、契約書の定めもありますし、
責任まで負わされる可能性は小さいでしょう。
(ただし、専門家責任であるため、可能であるにも
関わらず、しなかったとされると一部責任を問われることも
あるかもしれませんし、トラブル対応コストなども考えるとそれでも
良いというわけではないようには思いますが。)
また、確かに申告期限に間に合わない旨伝えた
2月28日の段階で伝えていなかったということですので、
先生が対応が可能であると思われる範囲になりますが、
これまでの2月28日までと再三伝えいておりますので、
3月22日(月)までにアップロードしてもらえれば、
申告内に対応する旨メール等で伝えた上で、それまでに
でてこないということだとより安全で無難な対応かと思います。
(もちろん、その場合、22日までに提出がれば、間に合わせる
ことができるという算段が必要となります。)
そして、申告後に契約を解除するという流れかと思います。
2 ご質問②〜領収書について
>幣所の顧問料については、毎月、口座振替で支払って頂いており、
>領収書の発行は今まで行っていませんでした。
>顧問契約書に「銀行振り込み明細書をもって領収書の発行に代える」といっ>た取り決めを行っていなかったため、過去の領収書については、
>依頼があれば発行しなければならないのかと思うのですが、
>未来について、領収書を発行しないで済む方法はないでしょうか。
未来について、まず新規のお客様に関しては、領収書を発行しない(またはその他の方法で
代える)旨を定めておけば良いということになります。
(なお、請求を受ければ発行しなければならないという意味での義務なので、
請求がなければ発行しないことが違反になるわけではありません。)
既に契約しているお客様ですが、請求書のみの発行で問題なく
進んでいるお客様にも、いざ要求された場合の備えとして
という意味であれば、メール等で今後もこれまでとおり、
請求書の発行で、領収書は発行せず振込明細書で確認して
くださいという趣旨で伝え、了承のメールをもらうという
対応が考えられます。
ただ、現状問題ないにも関わらず、ここまでする必要性が
あるのかはどうなのかなとは思います。
>ある顧問先で、過去にさかのぼって毎月の領収書を依頼されています。
>恐らく、今後も毎月欲しいと思っていると思いますが、
>事務手続きを考えますと、毎月発行
>はなるべくは行いたくない。と思っています。
>今後、幣所で新たに顧問契約を締結する場合には、
>必ず契約書に「銀行振り込み明細書をもって領収書の発行に代える」と
>記載しようとは思っています。
>現金で受領する場合には、今後も領収書を発行するつもりですが、
>振込や口座振替の場合に、
>スムーズに領収書発行をしない方向へ移行できるためのお知恵をお借りでき
>きないでしょうか。
そうですね。
このお客様については、
今後は口座振替の場合に領収書を発行しない運用または
領収書は年1回の発行として、お願いして同意をもらう
ということになると思います。
どうしても応じてくれないということですと、
御社のオペレーションにもよりますが、では請求書は
発行しませんという形で交渉するのも、一応はありかと思います。
ただ、弊社も経験があるのですが、
現金払い以外の場合、請求書と履歴があれば、支払の事実
は証明できるにも関わらず、領収書の発行をあえて希望する
お客様に関しては、仮に契約書で領収書発行をしないことなどを
締結していたとしても、結局、要求してくるので、
そのようなお客様には契約自体をお引き取りいただくという
くらいの対応でないとオペレーションの統一は難しいところが残る
というのが現実的なところです。
(最終的には領収書を発行してくれないならお互い契約を終了させるか
否かという問題しか生じませんので。)
また、法的な話をすると、受取証書の交付請求を認めている
民法486条は、弁済の証明のために交付請求を認めており、
本来的には証明が可能な銀行振込などとはなじまないものではあります。
(クレジット払いと異なり、認められるのですが。)
ただ、従前、請求書と履歴のみの運用であったにも
関わらず、突然請求してくるというお客様に関しては、
従前の運用から、領収書を発行しない黙示の合意などが
あったとも評価できる場合もあるとは思います。