相続 遺産分割 相続税

相続分の譲渡について(一部分割済みの残りの分割に際して)

永吉先生

お世話になります。
●●と申します。

標記の件につきまして、ご教示ください。

(前提)
被相続人には直系血族がいないため、被相続人の配偶者と兄弟姉妹が相続人です。
被相続人A
相続人B(Aの妻)
相続人CとD(Aの姉妹)
相続人E、F、G(Aの兄の代襲相続人)

令和2年6月11日相続開始
令和2年12月13日 一部の財産についてはBが相続する旨の、
B~Gの署名押印のある遺産分割協議書作成

令和3年3月において、残りの財産について遺産分割協議書を作成していたところ、
FとGから、自己の相続分を全部かつ無償にてEに譲渡したいとの申し出あり。

(質問)
【1】相続分の譲渡
一部は分割済みですが、残りは未分割のためその残りの相続分の譲渡は可能と考えま
すが、いかがでしょうか。
(ネット上に『分割してからは譲渡できない』との記載が散見されますが、
これは既に分割済みの財産についての相続分の譲渡はできないという趣旨で、
今回は、残りの未分割に対するため、相続分の譲渡は問題ないと考えてよろしいで
しょうか、という趣旨です)

【2】相続税の無申告加算税が課せられるか
上記【1】が可能の場合の相続税の申告について、相続分を譲渡したので(=相続す
る財産がないので)、
相続税の申告は必要ない(=申告書に記載しない)と考えておりますが、
万一現在把握されていない財産が発見された場合でも、
その発見された財産を含めた相続分の譲渡をしたと考えて良いのでしょうか。
つまり、相続分の譲渡とは、新しく発見された財産についての相続分も当然に含まれ
るので、
新しい財産の修正申告をする際にも相続する財産がない状態に変わりないので、
当初申告に対する無申告加算税は課せられないとの理解でよろしいでしょうか。
(税金の話しなのに、不勉強で申し訳ありません)

よろしくお願い申し上げます。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問①〜一部分割後、残存相続分の譲渡について〜

>一部は分割済みですが、残りは未分割のためその残りの相続分の譲渡は可能>と考えますが、いかがでしょうか。
>(ネット上に『分割してからは譲渡できない』との記載が散見されますが、
>これは既に分割済みの財産についての相続分の譲渡はできないという趣旨、
>今回は、残りの未分割に対するため、相続分の譲渡は問題ないと考えてよろ>しいでしょうか、という趣旨です)

ネット上の記載については、先生のご想定のとおり、
既に分割済みの財産について相続分の譲渡はできないという
趣旨で記載されているものかと思います。

ただ、理論上は確かに難しい問題を含みますね。
(これについての文献等に記載はありませんでした。)

相続分の譲渡は、包括的な相続分の譲渡であるからこそ、
譲渡人の遺産分割への参加は不要となる(一方、譲受人が参加する)
という性質のものから、一部の財産の分割をした者が、残財産に
対する相続分を譲渡したからといって、遺産分割に参加が不要
となるのかという論点です。

私としては、合一確定の要請への対応は、このような
ケースでも可能な上、一部の相続分の譲渡や一部分割が認められる以上、
残存財産に対する包括的な相続分も観念できるものと解されますので、
先生と同様に残存財産に対する相続分の譲渡は認められると考えます。

2 ご質問②〜相続税の無申告加算税が課せられるか〜

>万一現在把握されていない財産が発見された場合でも、
>その発見された財産を含めた相続分の譲渡をしたと考えて良いので
>しょうか。
>つまり、相続分の譲渡とは、新しく発見された財産についての相続分も当
>に含まれるので、新しい財産の修正申告をする際にも相続する財産がない
>状態に変わりないので、
>当初申告に対する無申告加算税は課せられないとの理解でよろしいで
>しょうか。(税金の話しなのに、不勉強で申し訳ありません)

そうですね。残存財産に対する包括的な相続分のすべの譲渡が
されたということですと、F、Gには本税がそもそも発生しない
ということになりますので、加算税は課されません。

よろしくお願い申し上げます。