いつも大変お世話になっております。
表題の件、法的に取りうる対策をご教示頂ければ幸いです。
<前提>
・本年中に勤務先を退職予定の労働者の方からの相談です
・在籍中ですが、有休消化のため出勤していない状況です
・退職前ですが、既に令和3年分給与所得の源泉徴収票が発行されており、
支払金額欄に約100万円の記載がされています
・現実に支払われた給与は50万円程度であるため、約50万円が遅配しています
・勤務先は、支払うつもりと言っていますが、たびたび労働基準監督署が入るような
法令遵守意識の低い会社なので、このまま踏み倒される可能性が高いと感じています
<相談>
1.
労働者の立場として、勤務先に対してしておくべきこと(保全措置など)はありますか。
また、勤務先が経営破綻する前の状況で公的救済(相談などを含む)制度を利用することは可能でしょうか。
2.
今回は労働者側からの相談でしたが、本件が勤務先側からの相談であった場合に、支払う意思がある一方で経営状態や
資金繰りの都合でどうしても支払が出来ないような状況であったとしたならば、どのような助言をすべきでしょうか。
以上です。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
永吉先生
説明が不十分でしたので追記します。
遅配約50万円と記載しましたが、この中に既に支払期が到来しているものと、
これから支払期が到来するものが混在しており、退職時に全てが遅配しそうな状況という意味合いです。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①
>労働者の立場として、勤務先に対してしておくべきこと(保全措置など)はあり
>ますか。
>また、勤務先が経営破綻する前の状況で公的救済(相談などを含む)制度を利用するこ
>とは可能でしょうか。
法的な保全措置としては、
①訴訟提起等を通じて債務名義(確定判決)を得て、会社の財産を差押さえる方法
②一般先取特権に基づいて、会社財産を差押さえる方法
が考えられます。
①は、訴訟手続きをしなければならないので②方法が簡便ではあります。
ただ、②でも裁判所で差押え手続き等が必要なので、一般的に簡便かという
とそうとは言えないところです。
不動産などの大きな財産ですと、金額的に認められない可能性
がありますので、例えば、売掛債権なども考えられますね。
ただし、上記の方法は会社が倒産などが想定される場合
でなければ、退職が近いということですと、退職後に
金額を確定させて行うケースの方が多いかとは思います。
なお、
>これから支払期が到来するものが混在しており
とのことで、給与ファクタリング等を利用するという
こともなくはないですが、給与ファクタリング業者は
問題のある業者が多い(法的な意味でも)上、
上記のような状況でも審査をとおす業者はかなり危ない上、
回収できなかった場合に高額の利息付きで請求を受けることが
ありますので、控えられた方が良いでしょう。
未払賃金立替払制度(公的救済)ですが、
法律上の倒産であれば良いのですが、
事実上の倒産(中小企業について、事業活動が停止し、
再開する見込みがなく、賃金支払能力がない場合)
の場合は、労基暑の認定申請が必要となりますので、
このような状況になりそうなのであれば、相談に
いった方が良いですし、その過程で労基署から注意を
してくれることもありますので、ご相談にいくこと
自体は有用かと思います。
2 ご質問②
>今回は労働者側からの相談でしたが、本件が勤務先側からの相談であった場合に、
>支払う意思がある一方で経営状態や
>資金繰りの都合でどうしても支払が出来ないような状況であったとしたならば、
>どのような助言をすべきでしょうか。
そうですね。
支払わないこと自体が違法行為になりますので、
極論、支払える経営状態を維持することという
ことになってしまいます。
そうならない状況を作ることが重要です。
労基署などに駆け込まれたりすると
会社側からすると厄介ですので、
本当に支払えない場合でも、しっかり、
労働者に説明して、理解してもらい事実上待ってもらうという
対応になるかと思います。
一方で、
退職勧奨や整理解雇(要件を満たす状況下も含む)
なども事前に見据えて対応していくことになるでしょう。
よろしくお願い申し上げます。