いつもお世話になっております。
合同会社における役員報酬と外注費の税務判断ついて、ご質問させてください。
今回、下記のような相談がありました。
弊社で合同会社の税務対応が少なく、色々と調べてみましたが、
是非お力添え頂きたいと思い、ご連絡させて頂きました。
お忙しいところ、大変恐縮ではございますが、ご回答を宜しくお願い致します。
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【前提】
12月決算、2月申告法人です。
合同会社Aを平成31年4月に設立しました。
出資者は100%海外法人Bで設立しております。
業務執行社員並びに代表社員は海外法人Bが就任し、
職務執行者として個人C(日本人)が就任しております。
海外法人Bから見ると合同会社Aを日本法人として扱っております。
合同会社Aは国内企業から受注を受けておりますが、
海外法人B及び個人Cへ業務委託しております。
帳簿書類も揃っており、請求書発行や支払も毎月行っております。
海外法人Bには業務対価に対して支払いをし、
個人Cに対しては固定給60万円+ロイヤリティ(国内企業からの入金額3%)を支払いしております。
【質問】
①:上記のような取引をしている場合、
合同会社Aの海外法人B及び個人Cに対する支払いは「役員報酬」に該当しますでしょうか。
②:個人Cに対しての支払いが役員報酬となった時に、
固定給60万円は定期同額給与とし、超える部分を別表否認すれば
問題ありませんでしょうか。
宜しくお願いいたします。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①〜「役員報酬」該当性
(1)海外法人Bについて
まず、税務上、海外法人Bは、合同会社Aの
「役員」に該当します(法基通9-2-2)。
問題は、業務委託の対価の実質が、役員への「給与」
なのか否かになると思われます。
例えば、海外法人Bから合同会社Aが
定価が明確な物を仕入れている等の明確な
ものがあれば、「給与」ではないとすることも
可能かと思います。
ただ、合同会社Aの役務の提供行為を役員である海外法人Bに
業務委託しているというのは、単に合同会社Aの役員として、
合同会社Aの業務を行なっていることと異ならないと
される可能性もあるものと思います。
もちろん、事実認定と評価の問題となりますが、
例えば、通常の株式会社で、かつ役員個人がいる
場合をイメージすると分かりやすいですが、
この株式会社が依頼を受けた事項を役員個人に業務委託をして、
その委託料が役員報酬の規制を受けない
というのは、なかなかハードルが高いのではないかと存じます。
また、それを認めるとすると、場合によっては、
定期同額の趣旨である役員による損益調整が可能になるという
側面もありますから、そのような側面からの事実認定と評価にも
注意が必要かと存じます。
もちろん、(請求書の有無などの形式論ではなく)
業務委託の量、受託業務と発注業務の関係性や経緯などから、
役員としての行為ではないとできる場合もあると思いますし、
海外法人BのAにおける役員としての職務執行は、
職務執行者Cが行うこととなりますので、実際の発注業務の内容
によっては、その範囲を超えている業務であり、
役員への給与ではないという立論もあり得るところかと思います。
ただ、結局のところ、個別事案における事実認定と評価
となりますので、それ相応の証拠が必要かと存じますし、
この点が明確に判断できるものがなければ、
税理士の先生としてはリスクを説明しないということは
できないかと存じます。
もちろん、最終的には税務訴訟などで明らかにする他ないことになりますが、
形式的に請求書があること等だけの事情で、役員報酬にはならないという
ことにはなりません。
あくまでも、報酬の実態が役員の地位に対するものなのか否か
という判断となります。
(2)職務執行者Cへの業務委託費について
職務執行者Cへの業務委託費ですが、
これについては、「職務執行者C」自体は
形式上は「役員」とされるわけではなく、法人税法上、
みなし役員に該当しない限りは、「役員」とは言えません。
個人Cは、Aから固定給及びロイヤリティを受け取っている
ということですが、本来、合同会社Aの役員である海外法人Bの職務執行者
としての報酬の場合、海外法人Bが支払うべきものと
思いますが、何の対価として、職務執行者CがAから報酬を受け取っている
のかが不明ではあります。
法形式上は、AからBへ役員報酬等の支払があり、BからCに
報酬が支払われるということになるのが通常かと存じます。
場合によっては、海外法人Bが受け取るべき役員報酬を
Cに付け替えているだけとされる可能性もあると存じます。
2 ご質問②〜個人Cへの支払いについて
>②:個人Cに対しての支払いが役員報酬となった時に、
> 固定給60万円は定期同額給与とし、超える部分を別表否認すれば
> 問題ありませんでしょうか。
上記のとおりですので、別表否認すれば問題ない
ということではないものと存じます。
よろしくお願い申し上げます。