いつも大変お世話になっております。
表題の件について、コンプライアンス上の
問題が生じないかどうかについて、ご教示頂ければ幸いです。
コンプライアンス上の問題とは、何らかの法律で禁止や規制
されているかどうかという点であり、お客様から質問を受けております。
(質問1)
法人が馬券を購入することは問題ありませんか。
(質問2)
馬券(実際に発行される紙の馬券です。以下同じです。)は、
個人が窓口で購入する方法が一般的ですが、法人の資金を用いて従業員等が
窓口購入することは問題ありませんか。
(質問3)
質問2の方法により法人が購入した馬券を、プレゼント企画の懸賞品として
レース結果確定前に、当選者に配布することは問題ありませんか。
上記の他、法人で馬券を購入する場合や、懸賞企画に馬券を配布する場合における
注意点などがあればご教示頂ければ幸いです。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問①〜法人で馬券を購入すること
>法人が馬券を購入することは問題ありませんか。
まず、競馬法を見る限り、購入者が個人でなければ
ならないとする定め自体はありません。
一方で、法人を設立する際には、定款で目的事項を
定める必要があります。
厳密にいうと、この目的事項外の会社の行為は、
権利能力の範囲外として、無効となります。
定款の目的事項は、
法律違反または公序良俗に反するものは許されないと解されています。
一部の書籍等には、その例として馬券の購入などもあげられている
ものが存在するようです。私の方でも、定款の目的事項で馬券の購入等
について、そのような目的の会社がないか検索してみましたが、
見つかりませんでした。
つまり、法人の行為として、馬券の購入を事業として行う場合、
購入が無効となり、払い戻しが受けられない可能性などがあります。
また、税務上は、購入者は実際に購入した個人であり、法人は金銭を
貸付(または給与等)したと認定される可能性があります。
また、契約関係の問題があります。詳細は、以下質問②をご覧ください。
2 ご質問②〜馬券購入者について〜
>馬券(実際に発行される紙の馬券です。以下同じです。)は、
>個人が窓口で購入する方法が一般的ですが、法人の資金を用いて従業員等が
>窓口購入することは問題ありませんか。
仮に会社法上の問題がないとしても、
馬券購入の契約関係の問題も懸念されます。
つまり、販売所等で販売した場合、その従業員等個人に対して、
販売所は販売したにも関わらず、実際の権利の帰属先が
法人であったとすると、錯誤等の取消しの対象となることになります。
例えば、ネット上の取引の場合、基本的に法人カードの登録や口座の
利用はできない仕様とされていることから、各販売所規則等で、個人に対する
販売を前提とするとされている可能性も比較的高いかと存じます。
また、その場合、販売者の認識として、個人への販売である以上、
馬券が個人に帰属するものとして評価される可能性も高いと思われます。
(法人としての購入を明示した場合で、購入できた場合は別として)
つまり、法人は金銭を購入者個人へ
貸付または給与等として支給したのみで、
購入者個人が馬券を保持していると認定される可能性です。
3 ご質問③〜馬券を懸賞品とすることについて
>質問2の方法により法人が購入した馬券を、プレゼント企画の懸賞品として
>レース結果確定前に、当選者に配布することは問題ありませんか。
具体的な懸賞設定の方法などにもよるとは思いますが、
競馬法30条3号などの刑事罰に該当するおそれがあります。
4 ご質問④〜その他〜
>上記の他、法人で馬券を購入する場合や、懸賞企画に馬券を
>配布する場合における
>注意点などがあればご教示頂ければ幸いです。
>どうぞよろしくお願い申し上げます。
特に懸賞企画などについてですが、このような規制業種に
関連する場合、簡易的な相談ではなく、
ビジネスモデルチェックなどを行える弁護士に依頼された
方が良いと存じます。
弊社でも多くの新規事業のビジネルモデルチェック及び
コンサルティングを行なっておりますが、
口頭での相談レベルと、事業モデルの実態(本当に依頼者様が
やりたいところ)など資料を下に調査などすると、
依頼者様がおっしゃっていることと実態がかなり乖離している
ことは多くあります。
特に懸賞等は、上記のみではなく、
モデル設計により気をつける点は様々です。
また、具体的なビジネスモデルチェックの場合、すぐに答えが
でるものばかりではなく、リスク説明、その具現化の可能性、
代替案のコンサルティング、得られる利益とリスクとのバランス
などを考慮の上、最終的にご意思決定いただくことなどが
必要になるものも多いです。
規制業種周辺、特に本来競馬は賭博罪に該当するものの
違法性阻却とされている例外的な規制業種ですので、
下手をすると、実際に逮捕等されますので、それなりのコスト
払ってでも、法務の洗い出しやコンサルを受けた
方が良いと存じます。
よろしくお願い申し上げます。