お世話になります。
●●と申します。
以下ご教示ください。
前提
○ 従業員は雇用契約、役員は委任契約である
民法624条①項②項、同624条の2、同648条①項②項③項
○ そのため、役員報酬の日割未払計上は、法人税法上損金に算入できない。
質問
684条②項に、『ただし、期間によって報酬を定めたときは、第六百二十四条第二
項の規定を準用する。』
とありますが、株主総会等で役員についても「いつからいつまでの報酬をいつ支払
う」という旨、つまり、
締め日を設定すれば、その締め日時点で未払計上して損金算入できるのではないかと
考えました。
一方で、定期同額給与の要件、『その支給時期が1か月以下の一定の期間ごとである
給与
(以下「定期給与」といいます。)で、その事業年度の各支給時期における支給額又は
支給額から
源泉税等の額(注)を控除した金額が同額であるもの』とあります。
結果として、未払計上はできたとしても、支給されていないから、損金に算入できな
いということに
なるのでしょうか。
ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>○ 従業員は雇用契約、役員は委任契約である
>民法624条①項②項、同624条の2、同648条①項②項③項
>○ そのため、役員報酬の日割未払計上は、法人税法上損金に算入できない。
>684条②項に、
>『ただし、期間によって報酬を定めたときは、第六百二十四条第二
>項の規定を準用する。』
>とありますが、株主総会等で役員についても「いつからいつまでの報酬をいつ>支払う」という旨、つまり、
>締め日を設定すれば、その締め日時点で未払計上して損金算入できるのではな>いかと考えました。
>一方で、定期同額給与の要件、『その支給時期が1か月以下の一定の期間ごと>である
>給与(以下「定期給与」といいます。)で、その事業年度の各支給時期における>支給額又は
>支給額から源泉税等の額(注)を控除した金額が同額であるもの』とあります。
>結果として、未払計上はできたとしても、支給されていないから、損金に算入>できないということになるのでしょうか。
ご質問の趣旨としては、
例えば、就任時や退任時において、月の中途において、
役員報酬の日割計算を行うことができるのかということで
よろしかったでしょうか。その前提で回答します。
(違う可能性もあると思いましたので、違う場合には趣旨含めてご指摘ください。)
2 回答
まず、委任契約であったとしても、先生のご指摘のとおり、
その合意により、締め日を設定し、支払うということは可能です。
例えば、弁護士の顧問契約の開始月を日割りにしたり、タイムチャージ
などにすることも可能です。
ただ、役員報酬の日割の問題は、委任契約であるか雇用契約であるか
という広い区別の問題ではなく、
会社法上の「取締役との委任契約」の性質という問題であると
思います(委任契約も様々です)。
つまり、取締役というのは、時間的な問題ではなく、
その地位及び責任に対して、報酬が発生し、日割りという概念がない
という前提で定期同額等の税法上の規定が整備されていることから、
日割計算はできないと一般的に解されているものと存じます。
もちろん、会社と取締役の契約により、日割計算に基づく
支給というのは、民事上は可能である(株主総会決議事項は金額額等のみです)
とは考えられますが、それと税務上損金となるのかというのは、
別の議論かと存じます。
よろしくお願い申し上げます。
●●です。
本件、言葉が足らずご迷惑をおかけいたしまして、申し訳ありません。
以下よろしくお願い申し上げます。
趣旨としては、
「定期同額給与の役員報酬について、例えば毎月、月末締めの翌10日支払として役員報酬の未払い計上をした場合に、
決算月の未払い計上分は税務上損金算入が可能でしょうか?」
ということです。
これは、民法684条②項に、『ただし、期間によって報酬を定めたときは、第六百二十四条第二項の規定を準用する。』
とあるので、もしかしたら可能か?と考えたのですが、先のお答えをいただいたとおり、会社法上は締め日設定の上未払い
計上は可能であるが、そのことをもって税務上の損金算入が可能というわけではなく、税務上の定期同額給与の要件には
「支給」という文言が入っているので、『未払い計上=支給されていない』ため、未払い計上の時点では損金とならない、
ということになりましょうか。
追加でのご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。
1 ご質問
>趣旨としては、「定期同額給与の役員報酬について、例えば毎月、月末締めの
>翌10日支払として役員報酬の未払い計上をした場合に、決算月の未払い計上分
>は税務上損金算入が可能でしょうか?」ということです。
>これは、民法684条②項に、『ただし、期間によって報酬を定めたときは、
>第六百二十四条第二項の規定を準用する。』
>とあるので、もしかしたら可能か?と考えたのですが、先のお答えをいただい
>たとおり、会社法上は締め日設定の上未払い計上は可能であるが、そのことを
>もって税務上の損金算入が可能というわけではなく、税務上の定期同額給与の
>要件には「支給」という文言が入っているので、『未払い計上=支給されてい
>ない』ため、未払い計上の時点では損金とならない、ということになりましょ
>うか。
2 回答
ネット上での記事を見ていたら税理士の先生でも、
見解が分かれているようですね。
私は、決算月の未払計上は当然可能なものと考えておりました。
税法の解釈としても、例外的に損金算入可能な
定期同額給与にあたる給与とは何かという点について、
支給時期における支給額が同額であるものとしているのみで、
未払計上が許されないとするものではないように思います。
そうすると、一般的な「債務確定」の問題となりますので、
当月末締めである以上、未払計上は可能だと考えます。
なお、もちろん、
実質的な役員賞与とされるような支給の仕方
(例えば、毎月一部未払計上し、その未払を期末に支払う等)
をすれば、別途、定期同額給与にはあたらないという
問題はありますが、今回のような期末の未払計上
とは別の問題かと存じます。
よろしくお願い申し上げます。