相続 贈与

相続放棄と死因贈与の関係

永吉様

相続放棄と死因贈与について

父が死亡する前に1,000万円をもらうことを約束していた妹
今回父親が亡くなり、相続の手続きをすることになりましたが、
山林などの登記が面倒なので、兄から相続放棄を依頼され放棄しました。
その後兄から以前からの父と約束していた1,000万円のこと知っていて
振り込んできました。
相続財産は、基礎控除の範囲だったので税務所への申告の必要はありませんでした。

兄から振り込まれた1,000万円は、父からの相続ということで問題ないでしょうか?
ご回答をよろしくお願い致します。

●●先生

ご質問、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>父が死亡する前に1,000万円をもらうことを約束していた妹
>今回父親が亡くなり、相続の手続きをすることになりましたが、
>山林などの登記が面倒なので、兄から相続放棄を依頼され放棄しました。
>その後兄から以前からの父と約束していた1,000万円のこと知っていて
>振り込んできました。
>相続財産は、基礎控除の範囲だったので税務所への申告の必要はありませんでした。
>兄から振り込まれた1,000万円は、父からの相続ということで問題ないでしょうか?
>ご回答をよろしくお願い致します。

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○人物関係
・被相続人:父
・相続人:子(兄)、子(妹)

○相続放棄の手続き
・兄のみ家庭裁判所で、相続放棄手続きをしている
(妹は相続放棄手続きをしていない)
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ということでよろしいでしょうか。以下、その前提で回答します。

2 回答

(1)誰の1000万円の支払いなのか

まず、この1000万円について、相続放棄をした兄が
自分の財産から支払ったということですと、
相続財産ではなく、「兄→妹」贈与となる可能性があります。
(本来、兄は相続放棄をしており、父の財産に
手を出せる立場ではありません。)

(2)父の財産からの支払いの場合

なぜ、兄が父の1000万円を持って
いたのかは不明ですが、

仮に相続放棄手続前に、兄が相続財産の
処分をしていた等の事情があると、

相続放棄手続きがされていたとしても法務的には、
法定単純承認となり、相続放棄が無効となることがあります。

ただ、相続放棄の無効については、相続債権者(父の債権者)
などがいなければ、特段問題にならず、そのまま放棄がある
前提で、進んでいく可能性が高いです。

税務署から、相続放棄手続きが無効である等の主張は
あまり想定できませんので、

この1000万円が、父の財産からでたもの
ということであれば、実務上、相続税申告では相続として
扱えば、問題はないかとは思います。

まずは、この1000万円のでどころを
ヒアリング・調査することが重要かと存じます。

また、遺言があり、兄が遺言執行者であった
場合には、兄が相続人ではなく、遺言執行者の
立場で、相続財産を管理し、妹に振り込んだという
場合も想定できますが、この場合も相続として
扱って問題はありません。

よろしくお願い申し上げます。

永吉様

放棄したのはお兄さん以外なので、
相続人はお兄さんだけとして、
不動産の登記をしました。
相続放棄をした妹が、死因贈与してた
1,000万円を支払っていいのか?
という質問です。

●●先生

ご確認、ありがとうございます。
弁護士法人ピクト法律事務所の永吉です。

1 ご質問

>放棄したのはお兄さん以外なので、
>相続人はお兄さんだけとして、不動産の登記をしました。
>相続放棄をした妹が、死因贈与してた1,000万円を支払っていいのか?
>という質問です。

こちらは、前回のご質問から、
妹が1000万円を支払ったのではなく、
兄が妹に1000万円を支払ったということかと
思いますので、その前提で回答します。

2 回答

妹が相続放棄をしたとしても、死因贈与は、
相続放棄の対象ではありませんので、
父と妹に死因贈与契約があった(と認定できる)前提であれば、

死因贈与契約に基づく
1000万円の支払いとなります。

つまり、税務上も単なる相続人以外の者への死因贈与
として扱えば良いです。

なお、この場合、債権者がいる(本件では債務超過による
相続放棄ではないようには思いますが)場合には、
詐害行為取消権の対象になることや信義則上債権者への
返済義務が認められることがあります。

よろしくお願い申し上げます。